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2006年11月08日09:50

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【音楽】Steinway Legends: Brendel 1

スタインウェイ・レジェンズの四人目からは存命のピアニストだ。今日・明日はアルフレート・ブレンデル。

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J.S.バッハ: 半音階的幻想曲とフーガ BWV903
ハイドン: ピアノ・ソナタ 第50番 HV XVI:50
モーツァルト: 幻想曲ハ短調 K396
シューベルト: 3つのピアノ小品(即興曲)第2番 D946
リスト: 暗い雲、夜想曲「夢のなかに」
    (ヴェネツィアのリヒャルト=ワーグナー、ダンテを読んで)


手許にとある著書があり、その中にフランツ・リストを中心としたピアニストの師事系譜に関する記述を見つけた。ツラツラと読んでみたが、なんとブレンデルも登場するので彼から遡ってみると、大体以下のような系統図となるようである。

ブレンデルの師匠はエドウィン・フィッシャーで、他の門下生にはイェルク・デムス、そして現在は指揮者として大成したダニエル・バレンボイムなどがいる。フィッシャーはバッハ研究家としても名高い名ピアニスト。

フィッシャーが師事したのはマーチン・クラウゼという人物で、その門下生としては先に上げたフィッシャー、そしてSteinway Legens第一弾にも収録されているクラウディオ・アラウがいる。興味深いことに、クラウゼ系譜で叔父・甥の関係になるのがアラウとブレンデルということになるらしい。二人ともリストもバッハも割と好んでいるのはそういう訳か?

クラウゼが師事したのは当のフランツ・リスト本人で、つまり、ブレンデルはリスト系譜の直系のひ孫ということ、アラウはリスト直系の孫になる。尚、リストの門下生で一番有名なのはハンス・フォン・ビューローとアントン・ルービンシュタイン。

リストの師匠はアントニン・レイハとカール・ツェルニーといえるが、二人共あのベートーヴェンの愛弟子である。ベートーヴェンの師匠はご存知ハイドン、その師匠はC.P.E.バッハ(カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ)、C.P.E.バッハはJ.S.バッハの第四番目の子供、更にはパッヘルベル、ブクステフーデと遡ることが出来る。

うーん、リストに至るまでの血と、リスト以後の血が上手く混ざった結果なのか、はたまた重厚なドイツ系列とリストが融合した結果なのか(勿論、血族関係ではなく師事関係なので、そういった淡い関係の中でどこまで芸風が継承されるのかは不明)、ブレンデルは実にユニバーサルでニュートラル、そして端正なピアニズムを備えているのだ。

こういったことを念頭に置いて聴くと、プラシーボ効果も手伝ってか成る程と頷かされる演奏なのであった。

バッハの幻想曲とフーガは元々は楽器指定無しの4声のフーガが基調だが、ピアノ独奏なので2声の対位法ということになる。ブレンデルは筋金入りのバッハ弾きであることがこの2声のフーガから良く分かる。右手と左手がバラバラに別の動機をちょっとずらしながらバランス良く弾く完璧な対位法なのだ。芸風は違うがアラウのバッハも左右2声のコントロールは完璧だった。

ハイドンは対位法を古典的交響楽まで拡張した張本人であるが、このシンプルなソナタにはバッハ時代の対位法の痕跡が深く刻まれているのがブレンデルの演奏によってつまびらかになる。実に明るく軽いタッチの好演である。

リストの演奏といえば先のミケランジェリやホロヴィッツ、若い日のアルゲリッチなどの熱くエキセントリックな解釈が印象的なのだが、ブレンデルのこのリストは極めてモデレートであり寒色系の冷静な弾き込みは大変に知性的だ。アラウのリストも色彩感は抑え気味で寒色系であり、そういった点においては共通項が見いだされる。まぁ、リストの解釈に関してはお熱いのがお好き、という人が多いのは事実であろうし、その点では意見が分かれるだろう。
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