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2026年08月04日06:12

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映画「見えない目撃者」

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映画『ハケンアニメ!』日記のコメント欄でマイミクのmackさんからご紹介いただいた映画『見えない目撃者』(2019年)をAmazonプライムで視聴した。劇場公開時、気になっていたのだが見逃してしまった作品である。吉岡里穂が、事故で失明した元警察官の主人公を演じていること、目の不自由な彼女が「とある事件の目撃者」になったことなど、とても面白そうな題材だ。全く知らなかったが、mackさん情報では韓国映画『ブラインド』(2011年)のリメイク作品で、中国でも2015年に同名のリメイクが制作されているそうだ。韓国映画オリジナルという点には少々引っかかるものの、主演の吉岡里穂に惹かれて視聴した次第。

 オープニングのタイトルバックが、浜中なつめ(吉岡里穂)の警察学校訓練時代のハイライト映像になっているのは素晴らしい。緊張感ある静かなサントラを使っていることにも演出のセンスを感じる。浜中なつめがどんな人物なのか、いかなる技能をもっているのか、短い映像の中で見事に伝えている。屋内射撃場での拳銃射撃訓練シーン。実際、日本の警察学校で訓練時に制服制帽着用であるとは考えられないが、浜中なつめの凛々しい警察官姿は素敵だ。特に注目すべきは、発砲時、彼女が全く目をつぶらないこと(残念ながら、反動の演技はない)。実弾射撃時はもちろん、映画やドラマでは有名俳優ですら「発砲時、思わず目をつぶってしまう」ことがよくある。発砲時に目をつぶるのは素人臭く、敏腕刑事や特殊部隊員を演じていてもとうていプロには見えない。本来は絶対にリテイクが必要なNGだ。吉岡里帆が発砲時、目をつぶらず、厳しい目でターゲットを見つめる、それだけでオープニングは成功したと言えるだろう。もし、なつめの目のアップがインサートされ、発砲時の反動の演出が実現していたら完璧だった。

 真っ白い稽古着に身を包み、柔道場の畳の上での逮捕術訓練シーンも良い。ナイフで突いてきた犯人の攻撃をかわし、訓練用のウレタン警棒でナイフを叩き落とすと同時に捲き込んで投げ飛ばす。やや棒立ちで腰が入っていないのはご愛敬だが、畳の上に倒れた犯人をただちに後ろ手で拘束する一連の動きはなかなか見事である。そして、警察学校卒業式に総代として答辞を読み上げるシーンで彼女が警察学校で抜群に優秀だったことがわかる。ここまでの映像があるからこそ、本編の物語に豊かな説得力が生まれたのは間違いない。

 
【物語】 浜中なつめは警察学校を首席で卒業。明日から勤務地近くの寮に移動するという前夜、繁華街で遅くまで不良仲間達と遊び歩く弟の大樹を車で伊勢佐木町まで迎えに行く。「高校生が外を出歩いて良い時間じゃない。私が弟のあんたを補導するとかありえないからね」と憤慨しながら、大樹を引っ張って車に戻る。仲間達はひとみの恐い顔と剣幕に呆気にとられ、ただ黙って見送るしかなかった。

 「あんた、私がいない間にずいぶん羽目を外してたんだってね。母さんから聞いたよ」 
なつめの小言は終わらない。大樹は軽く舌打ちしながら、説教を聞いている。「明日からまた家に住むの?」大樹はうんざりしながら、姉に尋ねる。「明日からまた寮生活。今夜だけだよ、家にいられるのは」なつめも溜め息をつきながら答えた。弟の今後が心配だ。大樹は姉の言葉に生返事しながら、ポケットから出したアクセサリーをいじっている。「ちょっと、あんた、聞いてるの? 何それ」「聞いてるよ、ちゃんと。これはティアベル。涙が落ちる音をイメージしているんだぜ」大樹は得意気に姉に見せようとして、アクセサリーを上に揚げた。「あっ!」大樹はうっかり、ティアベルを落としてしまった。運転席側で彼が手を伸ばしても届かない。「足元にある、取ってよ」「運転中! 自分で取りなさいよ」「ちょっと手を伸ばせば取れんじゃん!」 押し問答の末、なつめは仕方なく、運転しながら足元のティアベルに手を伸ばすが、なかなか取れない。「もっと、奥だよ」弟の声でなつめはさらに手を伸ばし、一瞬、前方の道路から視線を外した。ティアベルをつかみ、すぐに前を向くと、交差点を大型トラックが横切っている。なつめは右に急ハンドルを切ってトラックをからくもかわすが、分岐点に置かれたクッションドラムに激しく衝突。車は裏返しにひっくり返ったまま火花を上げ、道路を滑って行き、やがて停止した。

 「大丈夫ですか!!」 なつめの車と接触しかけたトラックの運転手が叫びながら、救援に駆けつける。頭から出血し、意識が朦朧としているひとみを助け出すと、「待ってろ、今、救急車を呼んでやるからな」 なつめは男を制し、「大樹・・・、大樹は??」と弟の安否を尋ねるが運転手は「まだ、中にいる。もう危なくて近づけない」と答える。ひっくり返った車からガソリンが漏れ出していた。次の瞬間、スパークした火花でガソリンに火がつき、車は激しく燃えはじめた。「危ない! 爆発するぞ!!」 運転手は身の危険を感じ、逃げ出した。なつめは頭部の負傷のせいで視界がぼやけていることに気づく。「大樹! どこなの! 早く逃げて!!」「姉ちゃん、ここだよ! 脚がはさまっていて出られない。助けて!!」 なつめは弟の声がする方に顔を向けるが、目の前には闇が広がり、炎がかすかに明るく見えるだけだった。「なんで! なんで!!」 なつめは自分の目をぬぐうが、やはり、見えない。「助けて!!」 弟が助けを呼ぶが、「大樹、見えないの! 早く逃げて」と大樹の声のする方に這いながら叫ぶことしかできない。そして、ついに車は大爆発を起こす。

 それから、3年後。なつめは盲導犬パルと共に買い物帰りの道を歩いている。大樹はあの事故で死に、ひとみは警察を依願退職。今は、録音テープからの文字起こしの仕事をしていた。PCは文字通りのブラインドタッチで、変換時は音声で確認できるソフトを使い、文字起こしにはさほど不便を感じていない。もともと、彼女には人より鋭い感性があったが、視力を喪失したことで感覚はより鋭敏になっていたのだ。

 同居する母・満代(松田美由紀)の休みに車でひとみが通院している精神科で薬をもらったあと、ふたりで大樹のお墓参りに向かった。お寺の駐車場から一度はお墓に足を向けたが、やはり、ひとみは大樹のお墓の前に立つには躊躇いがあった。「ごめん、やっぱり行きたくない。お 母さん、ひとりで行って」ひとみはそう言うと、母に背を向けた。「なつめ・・・。お母さんだってつらいのよ。でも、もう、三年も経ったんだし、一緒に乗り越えよう。なつめにもなつめの人生があるんだから」 「私の人生なんて終わってる。・・・先に帰る」 過失運転で弟を事故死させ、自分は失明して警察官としての未来を絶たれた今、希望など何もない。事実、心のバランスを失って、精神科に通院しているではないか。「ひとりで帰れるわけないでしょ。ここから家までどのくらいあると思っているの? 遅くなったらどうするの?」 満代は心配して、なつめの前に出た。「私には昼も夜も同じなんだから、関係ない!」 なつめは母をふり切って、盲導犬パルと歩き出した。まさか、この先で彼女とパルの運命を大きく変える「ある事件」に遭遇し、目撃者になろうなどとは思ってもいなかった・・・。




 この先、少しネタバレします。未見の方はご注意ください。









 さすが、韓国映画のリメイク。緊張の持続度とストレートな暴力描写が容赦ない。日本オリジナルの脚本だとここまで思い切った設定も展開も不可能だろう。善くも悪くも日本で受け容れられるものは妙に常識的で抑制が効いている。たまに冒険する作品があっても、今度はファンタジー寄りで現実味を失ってしまう。その点、韓国は絶妙なバランスで勝負しているといえるだろう。本作は韓国版(未見)をベースに、日本独自の脚色を加えたものに違いない。予想をはるかに超える面白い作品だった。

 主人公・浜中なつめ(吉岡里穂)は言うに及ばず、事件現場に遭遇して、彼女とバディを組んで捜査に当たるスケートボーダーの高校生・国崎春馬(高杉真宙)がとても良い。両親に見放され、自暴自棄な青春を送っている彼がなつめと事件を追う過程で人間的な成長を遂げていく。なつめが春馬を気にかけるのは「死んだ弟の大樹」と同じ年頃だからだ。最初はぶつかり合っていた二人がやがて、疑似的な姉弟の絆で結ばれるのは胸が熱くなる。
 
 特筆すべきは、神奈川県警長者町署捜査一課の強行犯係の刑事ふたり、中堅刑事の吉野直樹(大倉孝二)と定年目前のベテラン刑事の木村友一(田口トモロヲ)だ。何が良いといって、事件を通報した浜中なつめ(吉岡里穂)の証言をあたまから疑い、全く真剣に聴いていない様にとてもリアリティを感じた。通報者の彼女は目が見えず、全て「音」からの判断によるものだからだ。それは決して怠慢ではなく、「実際、凶悪事件など滅多に起きない」という経験則に由来しており、通報の多くが目撃者の勘違いであるからだろう。なつめが熱心に事件の可能性を語れば語るほど、彼らは冷静になり、彼女が過去に自殺未遂を起こし、現在、精神科で加療中という事実を突き止めるに至って、彼女の証言の信ぴょう性はほぼ失われてしまう。リアルである。
 
 一旦は「事件性無し」と判断され、捜査打ち切りとなるが、なつめは絶対に諦めない。彼女が気づいた数々の新情報が、定年目前で情熱を失っていた老刑事・木村(田口トモロヲ)の刑事魂に火をつける。この木村刑事が往年の捜査勘を頼りに、まるで獲物の臭いを追跡する猟犬のように動き出すところは見応えがあった。少女救出に執念を燃やすなつめとの間で生まれた「警察官同士の絆」と共に、木村刑事の活躍は本作の大きな魅力である。

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 視覚障碍者を演じる時、最も重要なのは「本物」に見えるかどうかだろう。この場合、目を開けたまま「見えない演技」をするか、目をつぶって演技をするかの二択だが、前者の方が圧倒的に難しい。実際は見えているのだから、どうしても「時々、目の焦点が合ってしまう」瞬間がある。ここに違和感を持つかどうかで評価が分かれてしまう。また、全盲であっても、目を開けている以上、瞳は動き、しかも、その動きは独特だ。吉岡里穂も頑張っていたが、やはり、何度か「目の焦点が合って」しまっていた。サングラスのような色のついた眼鏡をかけさせるべきだったと思う。
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