ジェフリー・ディーヴァー & イザベラ・マルドナード『スパイダー・ゲーム』(文春文庫)を読みました。
著者は、ともに米国の小説家です。おそらく、ディーヴァーは世界中を見渡しても、もっとも売れているミステリ作家の1人だと思います。マルドナードは警察において20年超のキャリアを積んだ小説家だそうです。ただ、私はマルドナードの小説は読んだことがないと思います。本書の英語の原題は表紙画像にも見えるように Fatal Instruction であり、2024年の出版です。
小説の舞台は米国の南カリフォルニアであり、主人公はFBIから国土安全保障捜査局の連邦捜査官に移籍したカルメン・サンチェスと大学教授でセキュリティコンサルタントでカルメンの捜査に協力するジェイコブ・ヘロンです。ヘロンは特にサイバー犯罪の専門家です。侵入専門家ということになっていて、この場合、どうも、侵入=intrusionなのですが、物理的に部屋に押し入るとかではなく、サイバー空間上でサーバーやほかのコンピュータに侵入する、という意味での「侵入」です。
ジェフリー・ディーヴァーは今まで私が愛読していた中では、物的証拠を重視する四肢麻痺の捜査官リンカーン・ライム、供述の場で嘘を見抜く専門家キャサリン・ダンス、賞金稼ぎのコルター・ショウなど、いろんなシリーズで主人公を生み出してきました。本書では、たぶん、ヘロン教授が新たな主人公になってシリーズが始まるんだろうと受け止めています。サンチェス捜査官はリンカーン・ライムに対するアメリア・サックス刑事のような役回りではないかという気がします。
本書では南カリフォルニアのアチコチで、一見無関係に見える事件が発生します。しかし、いわば倒叙ミステリの技法によりストーリーが進んで、犯人には手首にクモのタトゥーがあり、冒頭の登場人物一覧では氏名が明らかにされています。本書では、最初から知能の高い秩序型の連続殺人犯、ということになっています。もちろん、ディーヴァーが共著者として名を連ねているわけですから、スンナリと終わるはずもなく、最後に大きなどんでん返しを期待する読者も多いことと思います。事件解決後のラストで、国土安全保障省に新部門が創設されることになり、捜査官はカルメン、アシスタントというか、コンサルタントにヘロンの2人でチームを組む活動がこれからも続くようです。
最後の最後に、私はこのレビューで意識的に本書にある「カーメン」ではなく、「カルメン」と表記しています。本書の中身からも明らかなように、カルメン・サンチェスは一家そろってのラテン人、たぶん、メキシコのルーツであり、スペイン語が母語に近くて、ヘロンに対してスペイン語の罵詈雑言を浴びせたりします。ですので、英語表記の「カーメン」よりは、「カルメン」の方がしっくりくるんではないでしょうか。でもたぶん、邦訳者さんと出版社ではこのまま押し通すんでしょうね。
最後の最後に、600ページ超のボリュームながら、上下に分冊せずに1冊で出版したのは出版社の英断だと思います。
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