加藤鉄児『実家暮らしのホームズ』(宝島社文庫)を読みました。
著者は、ミステリ作家なのですが、第13回「このミステリーがすごい!」大賞・隠し玉として、『殺し屋たちの町長選』により2015年にデビューしています。
本書の主人公は判治リヒトという千葉県柏市郊外の実家暮らしで引きこもりの24歳男性ながら、天才的な謎解きの能力を持っています。この主人公が、ストーリー冒頭で、巨大IT企業ビットクルーの創始者が設立したオリバー・オコンネル財団が主催する「眠れる探偵プロジェクト」の予選で最高得点を記録し、3万ドルの予選通過褒賞金を手にしながら、ニューヨークの本選には出向かずに行方をくらます、というか、引きこもりなのですから、どこかに逃亡ないし逃走するわけではなく、要するに、連絡を絶ったのですが、オリバー・オコンネル財団に居どころを発見され、日本支部のホルツマン・ユキがリヒトの実家を訪ねます。
ホルツマンは3万ドルの予選通過褒賞金の返還を求めますが、リヒトはすでにネットカジノのルーレットで3万ドル全額を溶かしてしまっており、未解決事件などの謎解きをすることによって弁済させられる、ということになります。そういった謎解きを集めた連作短編集といえます。
当初は、リヒトが引きこもりなのですから、外出しないでいいという条件だったような気がしますが、パトカー乗りたさにアチコチ外出することになります。なお、謎解きをする主人公の判治リヒトがホームズ役であることは間違いないのですが、ワトソン役はオリバー・オコンネル財団日本支部のホルツマン・ユキとともに、柏みなみ署捜査1課の矢野も同様な役回りをします。でないと、リヒトはパトカーには乗れないというわけなのだろうと思います。
各短編のあらすじは、まず、「Case 1 8ビットの遺言」では、オリバー・オコンネルの友人である極東ソフトコマース社長の城ノ戸淳が殺された事件の謎を解きます。続いて、「Case 2 自殺予告配信」では、インターネットで自殺を予告したナチュラルボーン・コレクターの居場所を特定します。続いて、「Case 3 撲殺モラトリアム」では、資産家老人の猟奇的な撲殺事件の真相を解明します。続いて、「Case 4 零下二十五度の石棺」では、正月明けの漁協の冷凍倉庫で発見された漁師の事件の謎を解きます。続いて、「Case 5 ダイムの遺言」では、Case 1で殺害された極東ソフトコマース社長の城ノ戸淳からオリバー・オコンネルに送られてきた暗号解読に挑みます。
やや、コミカルなミステリであり、オリバー・オコンネル財団日本支部のホルツマン・ユキが判治リヒトの実家を訪ねてくるたびに用意する手土産がなかなか凝っていたり、また、ホルツマン・ユキの来訪を主人公の母親の和美が露骨に喜んでいたりと、謎解き以外の設定も楽しく仕上がっています。
ログインしてコメントを確認・投稿する