mixiユーザー(id:68108846)

2026年01月11日08:45

31 view

レオ・マレ『探偵はパリへ還る』(新潮文庫)読みました。

レオ・マレ『探偵はパリへ還る』(新潮文庫)読みました。
著者は、フランスの小説家なのですが、第2次世界大戦中に国家反逆罪で収監されドイツの収容所に送られ、フランスに帰還した後、ハードボイルド小説を書き始めています。本書のフランス語の原題は 120, rue de la Gare であり、1943年の出版です。本書は本邦初訳だそうです。
主人公はフィアット・リュクス探偵事務所の所長であるネストール・ビュルマであり、私立探偵と考えるべきです。ハードボイルドなミステリなのですが、ホームズに対するワトソン役は見当たりません。ストーリーは場所により2部構成となっていて、リヨン編とパリ編に分かれます。
ストーリの冒頭は第2次世界大戦下のドイツで、主人公のビュルマは捕虜として収容所の病院で働いています。その病院で、記憶を喪失し瀕死の状態の男から謎の言葉を告げられます。「エレーヌに伝えてくれ、駅前通り120番地」です。その「駅前通り120番地」がフランス語の原題となっているわけです。
ビュルマは収容所から釈放されて、リヨンに着いたところで、探偵事務所の助手のロベール・コロメルが射殺されます。その際に、何と、同じように「所長、駅前通り120番地」という言葉を残して死んで行きます。なお、どうでもいいことながら、文庫本の後ろカバーや出版社の紹介文で、なぜか、この助手が射殺されるのがパリであるかのような言及がなされていますが、ドイツで釈放されてスイスを横断してリヨンに到着した矢先の出来事ですので、パリではあり得ないと思います。
さらに、コトを複雑にしているのが、ビュルマの秘書がエレーヌ・シャトランという名で、メッセージを伝えるべき相手と同じファーストネームなものですから、警察は彼女を尾行したりします。そして、ビュルマはパリに帰還し、いろいろと、いかにもハードボイルドな調査を実行して謎を解明し、助手の射殺犯を突き止めます。
なにぶん、1943年というドイツに占領されていた当時のパリですので、科学捜査などの時代的な制約とともに、交通の不便さもありますし、まったくドイツや占領軍批判は現れません。底意地の悪いドイツ軍将校に調査の邪魔をされる、といった場面もありません。繰返しになりますが、捜査の進め方はハードボイルドですし、謎解きはとても明快です。今まで邦訳されていなかったのが不思議なくらいです。

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する