佐高信・前川喜平『だまされない力』(平凡社新書)を読みました。
著者、というか、対談者2人は、評論家と元職ながら文部科学事務次官だった人物です。
本書冒頭では、「開運! なんでも鑑定団」に出演している古美術鑑定家のお話として、ニセモノに引っかかる時というのは、欲が目をくらませる、使えるカネがある、不勉強、という3要素を上げています。そういった観点から、教育と学び、宗教と道徳、SNSなどを対談で論じています。
高校までの初等中等教育ではなく、大学という高等教育機関まで進学した大学生に対して、批判的な学習を勧める教員は私だけではなく、決して少なくないことと思っています。すなわち、教科書に書いてあることや教師が言ったことを鵜呑みにせずに、自らリサーチして学習する必要です。ただ、最近では、その「学習」がネット検索やAIならまだしもいい方で、YouTubeの動画の方を見るのがリサーチとなってしまって、YouTuberを大学教授よりも信頼されてはたまったものではありません。
そういった「学習」っぽいメディアが溢れていて、それらの多くが無料で提供されている点を私はむしろ危惧しています。お金を出して買う本よりも、ネットに無料でアップロードされているpdfファイルに書いてあることの方に信頼を置くという学生も少なくないのではないか、と心配しています。
だまされないために勉強、学習するというのはそれなりに重要なポイントであり、英国のエコノミストであったジョーン・ロビンソン女史は、"The purpose of studying economics is not to acquire a set of ready-made answers to economic questions, but to learn how to avoid being deceived by economists." すなわち、「経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する一連のありきたりな解答を得ることではなく、いかにして経済学者にだまされないようにするかを知ることである。」というよく引用される名言があります。
私も授業中に難解とも思えない経済の真理、例えば、国債価格と金利は逆方向に動く、とか、為替の変動とはオーバーオールの国際収支尻をゼロにする方向に動く、とか、経済というよりもやや金融に近い分野の動向を説明すると、どう見ても理解しておらず、闇雲に暗記しようとする学生がいることに気づいていますが、たぶん、教員である私に騙されたような気分になっている可能性があると受け止めています。
学問的な考えだけでなく、日本人はその昔はガバナイリティが高い、すなわち、お上に従順、といわれ続けてきましたが、政府見解などについても批判的な受け止めができるような成熟した態度が必要になのだろうと思います。
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