EMIの年末の新譜から、アンスネスの展覧会の絵と子供の情景のカップリング。これもまた、子供のために贈るアルバムという意味合いが込められているようだ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3675740
・ムソルグスキー:組曲『展覧会の絵』
録音時期:2008年12月15-16日
録音場所:ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール
録音方式:デジタル(セッション)
・ムソルグスキー:子供の頃の思い出(4曲)
・シューマン:子供の情景Op.15
録音時期:2009年6月7-9日
録音場所:ロンドン、アビー・ロード・スタジオ
録音方式:デジタル(セッション)
レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
この展覧会の絵は原曲版ではなくてホロヴィッツ版と原曲版のミックス、およびアンスネスの独自解釈が混ざったもののようある。しかし、これに気付くのは最初のプロムナードが終わって暫く経ってからだ。左手の分散和音が一音か二音か多くて厚みがあるのだ。英語のライナーを読めばその辺の経緯がアンスネスのコメントとしてちゃんと書いてあるので、それを理解したうえで聴きに入れば問題ないのであるが、知らずに聴くとちょっと面食らう。
結論から言うと、これも有りだと思わされる確信犯的な展覧会の絵であり、ソリッドで詩的、そして何よりも豪放磊落で力強い。アンスネスの表現幅の広さを今更ながら思い知る。
ムソルグスキーの子供の頃の思い出(4曲)はとても珍しい曲であるが、遠い過去を見詰めるような目線になっている自分に思わず笑ってしまうほど素直であって情景描写が目に浮かぶ優れた作品群となっている。
子供の情景は展覧会からは一転して実直で静謐、そして丁寧な解釈である。贅肉と煩悩を削ぎ落として子供の様に多くは考えない、大人ではない思考回路に立ち戻るとこういった解釈が可能ではないか、と考えさせられる演奏だ。個人的な話だが、トロイメライを聴きながら遙か数十年前、鍵盤の前でぼつねんと佇んでいたことを思い出していた。冒頭はヘ長調の他愛もない出だしなのだが、途中のやるせない展開部にて白鍵と黒鍵が立体的に交錯する辺りで1人悶々と悩んでいたのだ。
さすがにアンスネス、思わされる秀逸な曲集であった。
(録音評)
EMI、6983602、通常CD。音質はEMIクォリティで優秀だ。展覧会の絵の方はヘンリー・ウッド・ホールとあるが、多少荒れ気味のピアノ左手の響きが克明で、躍動するアンスネスの全身が写り込むような臨場感だ。子供の情景の方は静かでS/Nの高い録音で、品の良いアンビエンス成分が付加されていて心地良い。使用ピアノであるが前半と後半ではまるっきり異なった音色と傾向である。担当した調律師(日本人)と所属会社のクレジットがあるが、その人のレパートリーから言うと、展覧会の絵の方はヤマハのCFIIIではなかろうかと思われる。低音弦の混変調と高域の湿潤なブリリアンスはどう聴いてもスタインウェイではなくヤマハに聞こえるのだ。
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