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2009年11月24日13:44

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【音楽】Mendelssohn: P-Con#1 Etc@Yu Kosuge, Seiji Ozawa/MCO

ソニー(珍しくジャパン制作)の新譜SACDハイブリッドで、小澤/MCO(水戸室内管弦楽団)に小菅優が客演したメンデルスゾーンのPコンと小菅のソロ(=無言歌集など)のカップリング。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3645431

メンデルスゾーン:
・ピアノ協奏曲第1番ト短調 作品25
 小菅優(ピアノ)
 水戸室内管弦楽団
 小澤征爾(指揮)

・『無言歌集』第5巻 第1番ト長調『5月のそよ風』
・『無言歌集』第6巻 第4番ハ長調『紡ぎ歌』
・『無言歌集』第5巻 第5番イ短調『ヴェネツィアの舟歌 第3』
・『無言歌集』第4巻 第6番イ長調『春の歌』
・『無言歌集』第4巻 第3番ト短調『胸騒ぎ』
・『無言歌集』第3巻 第6番変イ長調『デュエット』
・前奏曲とフーガ 作品35-1
・ロンド・カプリチオーソ 作品14
・厳格な変奏曲 作品54
 小菅優(ピアノ)

小菅は昨日のメジューエワとは違ってどちらかというとソリッドで剛健なピアノを弾く人物だ。勿論、弾き方が荒いとか弱音が苦手と言うことではなく芯を突くピュアで透る音が特徴と言うことなのだ。そのためかリスト/超絶技巧など硬派な曲目が得意だと思うし出す音にも合っていると思う。しかし、何故かここへ来てバルソルディだという。それもMCO+小澤という流離いプロ音楽家集団とやるとはなかなかコアな企画が一際目を引いて即買いした。

Pコンは予測通り小菅のシャープでハイスピードな技が炸裂して痛快そのもの。小澤のリードは例によって軽妙で洒脱なアーティキュレーションがノリノリで全面に出ていて思わず聴かされる。こういうところがライブ収録ならではの魅力かも知れない。最終楽章もコーダに近付くにつれオケもソリストも息がぴったりでテンションも最高潮に達する。この曲は一見すると優美さと流麗さが勝っているためか全体を通じて平坦そうに聞こえるし、カデンツァもないことから平易だと思われがちなのだが、パッセージが速くて分散和音やトリル、トレモロ、アルペジオがてんこ盛りなので意外と難易度の高い作品である。しかし、小菅の超絶技巧にかかるとまさに質量感が皆無に「サクサク」と進行していくのである。好感度の高いバルソルディだ。

独奏の方は同じ場所で日時を変えてのセッション録りとなる。無言歌集ではドライでソリッドな音、持続する情感のテンションなど根底に流れる風情はリストの時と似てはいるが、きりきりとした緊張感に苛まれっぱなしということもなく割と肩の力を抜いてゆったり聴くことの出来る柔和な表情のピアノである。こういう一面もあったのか? ソフト路線に開眼したのか? と思わされる出来映えは小菅の新機軸と言って良いだろう。一方、プレリュードとフーガはバッハにインスパイアされた対位法を軸とした作品だ。対旋律を精密で規則的な分散和音で紡いでいくところは求道的、無言歌集で見せた柔和な表情は消え、作品と厳しく対峙する小菅一流のピアニズムが現れる。なかなか楽しめる一枚だ。

(註)
ピアノはスタインウェイだと思うのだが、どういうわけかウェットな音が支配的で太く柔らかな印象、これはベヒシュタインっぽい音だ。調律でそういったソフト路線に振っているのかも知れない。

(録音評)
ソニー、SICC10084、SACDハイブリッド、録音は水戸芸術館コンサートホールATMで、Pコンの方は2009年4月26〜38日の定期演奏会から優良テイクを集めたもの、独奏の方は2009年7月14〜15日のセッション録りだ。

このところソニーはSONY BMGレーベルも含んで録音のアウトソース化を図っているようで、この盤も実はN&F(有限会社エヌ・アンド・エフ)の制作だ。N&Fは世界初のガラスCDを企画販売したことでいっとき有名になったプライベート・レーベルで、プロデューサーの西脇義訓氏とエンジニアの福井末憲氏が設立した会社だ。

音質だが、Pコンの方は臨場感に富んだ優れた録音。会場に座って聴いているような特有の空気感まで写し取っているのは国内盤としては異例。ヘンスラーなどに匹敵するこの実在感は素晴らしい。また、この水戸のホールは残響も含めてとても感じの良い超モダンな響きで感心してしまう。セッション録りの方のピアノもクリアで誇張感のないオーソドックスな音だ。

このCDはSACDレイヤーで聴くのが正解である。CDレイヤーも悪くはないが、SACDレイヤーを聴いた後ではステージが後退してホールが狭くなり、弦のブリリアンスも褪せて聴こえてしまうのだ。

若林といいN&Fといい、国内のプライベート・レーベルもしくはレコーディング・ファームは徐々に力をつけていると実感できるのがまた嬉しい昨今だ。


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