ECMの新譜からジョン・ダウランドが作った曲と、彼の息子ロバートがその他のルネサンス期の歌曲を集めて編纂した曲集。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2740703
音楽の饗宴〜Musical Banquet
ロバート・ダウランド編纂によるルネサンス歌曲名曲集(1610年出版)
・作者不詳:アモールは弓を持たずに
・ダウランド:私をそんなに嫌うなら
・カッチーニ:それでは死ななければならないのか?
・カッチー:わが麗しのアマリッリ
・ゲドロン:もし言葉と沈黙が
・ヘイルズ:おお、目よ泣くのをやめなさい
・作者不詳:君の目には愛の何かがある
・テシエ(ダウランド編曲):木陰の多い森の中で
・ダウランド:リッチ夫人のガリヤード(*)
・作者不詳:行きなさい、私の羊の群よ
・作者不詳:おお、ダイアナの星たちよりも美しく
・ホルボーン:沈む私の心は
・バチェラー:ガリヤード(*)
・バチェラー:私の信念を申し述べても
・ゲドロン:いつまでも私の命を苦しめるこの思い
・作者不詳:おお愛しい生命よ、いつのことだろう?
・ダウランド:ロバート・シドニー卿のガリヤード(*)
・マーティン:考えを変えなさい
・ダウランド:トーマス・モンソン卿のパヴァンとガリヤード(*)
・ゲドロン:幸せによって奴隷のみに落とされた者は
・ダウランド:暗闇に私は住みたい
・作者不詳:昨夜私は夢に見た
・ダウランド:華やかな宮廷を遠く離れて
(*)はリュート・ソロ
モニカ・マウフ(ソプラノ)
ナイジェル・ノース(ルネサンス・リュート)
ジョン・ダウランド(John Dowland, 1563-1626)は後期ルネッサンス時代のイギリスの作曲家、リュート奏者であり、同時代の作曲家としてはイタリアのモンテヴェルディが特に有名だ。
ダウランドの作品は以前にも同じくECMから出ているジャズ風アレンジのCD
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=740005243&owner_id=3696997 を取り上げたが、これはリュート伴奏と声楽のみという純粋なものだ。モニカ・マウフというソプラノが紡ぎ出す透き通った歌声が可憐で美しく、究極の癒し空間がどこまでも拡がっていく。
ダウランドの曲はどれもが世俗曲とされるが、それは歌詞がそういった日常を描写したものだからであって、旋律は今で言うところの世俗的で猥雑な曲想とはかけ離れた静かで浸透性の強い作風だ。
声楽曲を繊維の肌触りに喩えるなら、バロック期〜古典派の力強い表現はバリッとした麻の風合い、ロマン派の宗教曲等は滑らかな絹の風合いと出来そうだが、このダウランドその他の声楽は癖のない暖かで柔らかな木綿の風合いと言えるだろう。
全体に湿潤で落ち着いた流れの曲が多く、感情表現としては喜怒哀楽がバランス良く穏当に含まれている。とにかく癒されるソプラノであり、これらは実際に聴いて触れてみないとこの特異な気持ちよさは分からないであろう。
(録音評)
ECM NEW SERIES 1938(4766397)、通常CD、録音は少々古くて2005年5月とある。ECM特有の透明感溢れる優秀録音であり、天然アンビエント成分がたっぷりと含まれる、これまた曲風に似合った癒しを誘う出来映えだ。ソプラノは歌い出す位置は明確にピンポイント定位し、リュートはそれよりも少し奥まった場所で仄かに静謐に伴奏を奏でる。しかし豊かで冷涼な残響を湛えた漆黒の背景、それと透明で張りのある歌声の対比が鮮やかに眼前に蘇るのであった。
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