久し振りのDG輸入新譜より、エマールと言う現代音楽の分野で活躍するピアニストが弾くフーガの技法。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2652782
・J.S.バッハ:
フーガの技法 BWV 1080
ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)
バッハの作品の多くはシェーンベルクなど現代音楽における12音技法に見られる様な奇怪なエニグマを内包していて、こういったコンテンポラリー分野を得意とする人物は案外上手に表現したりするものだ。
この曲もバッハの他の鍵盤音楽の多くの作品と同様、楽器の指定はされていない。従ってこれをピアノで弾いても全く構わないわけである。つい先日もピアノで弾くゴルドベルグを聴いたが、それでこのCDはどうかというと、残念ながら相当な外れと言わざるを得ない。やはりピアノで弾くバッハは一筋縄では行かないものである。
まず耳に障るのが激しいデュナーミクというか、鍵盤の押さえ方のムラである。一音一音が整然と並ばないので旋律がデコボコなのだ。次に気になるのが不規則なアゴーギクで、これはグールドなどに見られる感情の起伏表現の一部としてのテンポ・ルバートと呼べるものではなく容認できる俗っぽさの範疇を逸脱している。そして進行上の力点が左右の手でかなり異なるのも気になる点で、各々のタッチの不安定さをペダルの踏み過ぎによってカバーしようとしている。とにかくガチャガチャやかましいのである。
この人は、いわゆるバッハの対位法を恐らくはちゃんと理解していない。フーガの技法と言えばヴァルヒャのこれ
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=172670718&owner_id=3696997 があるわけだが、ここには対位法の演奏上の規範が全て含まれている。即ち対位法のそれぞれの旋律はプッシュプル動作・・・シーソーが左右で均衡する、綱引きが左右で拮抗する様・・・を行わなければならないこと、ノンレガートでありながら決してマルカートには振れないこと、ジッター、つまり時間軸に過度な揺らぎがあってはならないこと、等々だ。
(録音評)
DG、4777345、通常CD、録音は2007年9月18-22日、ウィーン、コンツェルトハウス(モーツァルトザール)とある。録音担当はお馴染みのエミール・ベルリーナ・スタジオではなくテルデック・スタジオだ。音質は悪くはないのだが少々古風な響きを伴ったもので、特別チューンしたというスタインウェイがノスタルジックに響く。残響は少なくはないが混濁した感じは否めない。演奏内容は耳障りなのだが録音の方も少々五月蠅く感じられる調音である。
※今日明日と夕刻外出のため今週の音楽日記はこれでおしまい
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