先週末に速報したポリーニがVPOを弾き振りしたモーツァルトのPコン。週末の三連休はあまり時間がなかったのだが、何度かゆっくり聴いてみた。また、新しく購入したiPOD nanoにも早速ダウンロードして通勤途上にも聴いてきた。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000EMH80E
モーツァルト
ピアノ協奏曲第17番ト長調 K.453
ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467
ポリーニ(マウリツィオ)(指揮、P)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
去年ちょっと話題になった演奏会の模様をライブ録りしたものだが、これは従前のポリーニのイメージとはあまりに違い、固定観念が壊されたのでサラリと書くのも憚られたが、大体雰囲気が分かった。
これは従来のポリーニではない。若年期〜壮年期入り口までの剛直でソリッドな感触はまるでなく、ブレンデル、イェルク・デムスという巨匠に見られる軟質なタッチのモーツァルトだ。いや、一時のアシュケナージ風と言った方が正解かも知れない。実にモデレートでスタンダードな解釈と弾き方は呆気にとられるほどスイート&スムーズである。
これは意見の分かれるところだろう。かつてショパンの独奏曲やPコンで見せた正確無比のピアノサイボーグぶりは全く影を潜めている。ステンレス鋼のような鍵盤さばきではなくウッディで暖かい温もりである。かつての彼の冷たい炎を愛好する熱血ポリーニ・ファンは失望だろう。
個人的には非常に良くまとまった演奏だと思う。21番ハ長調コンチェルトをどう弾いてどう振るのかが興味あるところだったが、中庸のデュナーミクとアゴーギグがポップで楽しいモーツァルトを演出している。
あまりにも有名な二楽章アンダンテは女性的で優雅、スケール豊か、かつ柔らかいマシュマロの感触である。ポリーニと聞かされなければどこかの女流だ、と答えるかも知れない。老成したポリーニの演奏はこうなんだ、と言えば少々短絡になるかも知れないがあのショパンコンクール優勝から連綿と歩んできた硬派ヴィルトゥオーゾの意外な現在を聴かされた気分だ。
三楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイは突き抜けるアップテンポな乗りであり、VPOも絶好調でポップに弾け飛んでいるようだ。この中の小さなカデンツァは、さすがポリーニと言わざるを得ない超絶的なパッセージ弾きをチラッと見せている。
いずれにせよ、ポリーニ初の(たぶん)弾き振り、それも相手は美音の王者VPO、そして楽友協会大ホールでのライブ、プログラムは今年の定番モーツァルトと、話題性は抜群の一枚だろう。
(録音評)
DG、録音は2005年5月、ウィーン・ムジークフェラインザール。
ライブ収録であり、最後に派手な拍手が入っている。
途中、恐らくポリーニが曲に合わせて歌っているのだろう、うめき声や溜息が随所に入っている。また、ステージ上の奏者の発するノイズ、場内の聴衆のノイズも割と盛大に人っている。
ライブなので当然だが、数多くはないマイクで録られた4Dではないオーソドックスな録音だ。トーンマイスターはClaus Heimannとクレジットされている。
音場はステージと言うより聴衆側の空間が大きく感じられるもので、音像は左右にスプレッドして袖方向まで拡がっている感じ。各楽器、特に手前のVn、Va、Vcが克明かつ美しく録られていてVPOの醍醐味を十分に満たしてくれる狙い方だ。但し良くできた4D録音のように手に取るように楽器が整然と並んでいるという仕上がりではなく、あくまでも臨場感豊かなライブ収録である。
ログインしてコメントを確認・投稿する