今までDG移籍後のハーンの録音を何枚か聴いてきたが、いずれも演奏や解釈の点でいくつか疑問の残るものであった。
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モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第32番、第25番、第28番、第42番
ヒラリー・ハーン(ヴァイオリン)
ナタリー・シュウ(ピアノ)
国内版は去年出たが輸入ユーロ盤は今年の夏になってようやく日本発売となった。
例によって去年から今年に掛けてモーツァルトの新譜リリースが多いなか、このプログラムはなかなかに地味で、ハーンというビッグネームがなければ誰も振り向かないCDだ。
ハーンの演奏としては今回の録音は今まで中で一番の出来映えと言える。
最後の42番がヴィヴィッドさとテンポ・ルバートの巧さという点ではアルバム中、最高の出来だ。
ハーンのヴィブラートは他のヴァイオリニストより振幅が小さく小刻みであり、大胆なルバートを掛けても音の一つ一つの繋がりが切れず、従って大きく破綻することはない。
過度なアゴーギグを伴わず、尚かつテンポを速めにとるナタリー・シュウのピアノのリードがストレートで爽や、そして大変素直な印象を演出している。勿論、ハーンのヴァイオリンも滑らかで細部にまで気を配った周到な演奏である。ハーンの多少細身で若々しく瑞々しい解釈は、やはりモーツァルトのソナタには向くのだ。
黎明とした大規模曲を縦横無尽に弾きこなすというヴィルトゥオーシティは、現在のハーンには期待できない、というか期待したくない。室内楽中心にじっくりと腰を落ち着けた演奏を数多くこなして欲しいものだ。
(録音評)
DG 4775572(去年出た国内版はUCCG-1255で同内容)、録音は2004年2月、11月 ニューヨーク〈デジタル録音〉とある。
Annandake-on-Hudson, NY, Fisher Center for Performing Arts at Bard College
http://fishercenter.bard.edu/about/ 録音した場所は恐ろしく格好良いところ。しかしホール録音にしてはあまりホールの残響は強くは入っていない。トーンマイスターはStephan Flock。うーん、この人の録音は今ひとつピンと来ないし、いつも統一感がない。
今までのハーンの録音に見られるような妙な音色はない。その代わり地味なVnとPの音であり、艶や伸びといったオーディオ的見所は殆どない。
Pの定位は良好な方で、ハンマーが中央右寄りやや奥に固定される。Vnは中央前方に定位するがこれが結構左右にふらつく。恐らくハーンが演奏に合わせて左右小刻みに体を動かしているのだろう。そのたびに左右のスピーカーの存在を検知してしまうほど左右マイクの振り角が広いようだ。
全体としてみれば無難な録音だが、優秀録音という範疇には入らないだろう。
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