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2026年08月17日23:15

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隣のおじさん     1058

私は望んでここに
向かった訳ではないが旅館にいた

来たかったわけではないので
出来るだけ一緒に来た人達とは
行動を避けるようにした

駅からバスに乗って旅館に来る途中
翡翠色のうつくしい川を見かけたので
そこに行くことにした

何故ここに向かおうとしたかは
一人になりたいだけではなかった

心地良い澄んだ空気が
私を癒してくれることを
望んでいたからだった

バスで川へ到着してまもなく
その望みは満たされた

想像以上にそこは私に
安らぎを与えてくれた

見知らぬ花々は誰の許可を得て
こんなに心地好い匂いを
させているのだろうか

渇望は消え失せ
私はその景色に満足したが
まだここに居たかったので
持っていたパンを鳥たちに投げて
川の流れとそよ風
時間に身を任せた

森林の木漏れ日の隙間より囁きあい
ここを目指してさまざまな鳥たちが舞い込んだ

そうしていると
一羽の足の折れた鳥が
群れの中にいることを知った

そんな時
いつからそこにいたのか分からないくらい
自然と隣に知らないおじさんが座っていた

「いい天気ですね」

私は訝しげにこのおじさんに相槌をうった
そのおじさんは温泉めぐりをしているようで
今まで回ってきた数々の名所を
こちらがお願いしている訳ではないのだが
淡々と語りだした

そうこうしていると
私は少しずつ心を打ち解かせ
いつの間にか私は
この初老の紳士に心を許してしまい
自分の過去を
おぼつかない口調で話し出していた

隣の見ず知らずのおじさんはこういった
「今日も生きててよかったね」と

「見てみなさい、この溢れるばかりの自然の偉大さを
森林を、動物たちを、虫たちを

木々が落雷により打ち裂かれようとも
人々に伐採されようとも

折れた木の裂け目より生え出す枝は太陽を目指し
その枝より広がる緑の葉末は
日の光に向かって唯一途に真っ直ぐ生い茂る

片足が折れてしまってまっすぐ歩くことが出来ず
投げられたパンを取りに行くが
他の鳥たちにいつも先を越され
ご飯にありつけないながらも
その曲がってしまった片足を必死で動かし走っていく様を

巣に戻る途中
不慮の事故に会い
口にくわえたご飯と片手を失いながらも
這いつくばって巣に戻ろうとする
さっき君が何気なく踏んでしまった蟻を」

「いささかなりとも
不平を口にせず
ただ生きることにのみ素直であるさまを
人もこうありたいものだ」


柔らかなそよ風に木々は誘われ
静かに葉音を鳴らす

雲ひとつ無い快晴の空の元
眩し過ぎて直視できない日光と
揺れる草木をどんな宝石よりも美しく散在と写す清流
そして川音

全ての不安感や心配事など
このような状況では考え付くはずも無かった。
ゆっくりとした時間が流れる中
その見ず知らずのおじさんはこういった

「バスが来ましたよ」と

私はずっとごろごろした石の上に座っていたせいで
麻痺して言うことを聞かない片足を無理やり動かし
足元の小さな虫たちに気を配りながら
踏み潰さないように注意を払い
帰路についた


















【ChatGPTによる解説】


この詩は、ひとりの人間が「本来望んでいなかった場所」で、思いもよらない癒しと邂逅に出会う物語やねん。心の奥に抱えてた何か――渇望、孤独、過去の傷――それを癒したのは、人でも言葉でもなく、まずは自然の中の静けさやった。

翡翠色の川、心地よい花の香り、そよ風、鳥や虫たちの生きる姿。そんな当たり前やけど、普段は気づかへん命の営みに、この詩の語り手は心ほどいていく。その自然の声に共鳴するように、突然あらわれた見知らぬ初老の男性の言葉が、ほんまに沁みるんよ。

彼は温泉地の話をするだけの、ただの世間話好きなおっちゃんかと思いきや、その語り口には、自然に対する畏敬と、生命への深いまなざしがある。折れた鳥も、踏まれた蟻も、それでもなお生きようとする姿を、静かに「尊い」と感じられるまなざし。それを、彼は語り手に手渡したんや。

「今日も生きててよかったね」という言葉の重み。命あること自体が、もう奇跡やと気づかせてくれる。最後には、自分の片足がしびれて思うように動かへん状況にも、語り手は自然に歩幅をあわせ、虫たちに気を配る。――それはもう、かつての「避けたかった旅」の姿やない。

この詩は、生きることの苦みや孤独と、それを溶かす優しさ、そして命への静かな感謝を、そっと心に手渡してくるような、深い余韻をもたらす詩やと思う。
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