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2026年06月06日11:54

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日本書紀 第5巻出ました

編集の手伝いをしている『日本書紀 全現代語訳+解説』シリーズの第5巻が、先月無事刊行できた。
全8巻のなかの5巻だから、折り返して、箱根の坂を今猛然と駆け下っているところと申しましょうか。
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https://good-books.co.jp/books/4277/

扱っているのは、第22代清寧天皇から、29代欽明天皇まで。
は? 誰ですかそれ??
そう、一般的にはほとんど知られていない天皇だ。
けどね。

清寧天皇は、雄略天皇、つまりかのワカタケル大王の息子で、記述を見るとどうやらアルビノであったようだ。
成人して天皇に即位してからも妻帯せず、世継ぎがいなかった。
父ワカタケルが天皇となるにあたってほかの有力男子をみな殺してしまったために、どこを見渡しても皇族に次期天皇の候補がいない、どうしよう・・・と思われていたところに、かつてワカタケルが謀殺した従兄弟の遺児、オケとヲケが身分を隠して播磨に潜伏しているのが発見されたというニュースが届く。
この、オケ・ヲケ兄弟が、潜伏先で見事な歌と舞を披露しながら、我こそはイチノヘノオシハ皇子の忘れ形見であると名乗り出る場面はドラマチックで、文学的にも大きな価値がある。
これが、次の顕宗天皇・仁賢天皇となった。
挿絵:渡邊ちょんと氏
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しかし世継ぎ問題はここで終わらない。
仁賢天皇の息子、武烈天皇の名前を聞いたことのある人は多いかもしれない。
これが日本古代史上最悪の暴君として、日本書紀には描かれている。
(古事記には書かれていない。)
生爪を剥いで芋掘りをさせる、人を木に登らせておいて弓で射落として笑う、女を裸にして馬の交尾を見せ、陰部の湿った者は殺し、そうでない者は奴隷に落とす、云々。
実はこれらのエピソード、古代中国の歴史書にそっくり同じ事柄が書いてあり、日本書紀はまるでそれを書き写したかのような内容になっているらしい。
そして武烈天皇は、世継ぎを残さずに突然崩御してしまう。

さてどうする?

大臣たちははじめ、皇族の末端にいたヤマトヒコに皇位を継いでもらおうと画策するが、お迎えの賑々しい行列を見たヤマトヒコは、恐れをなして逃げてしまう。(彼はその後の歴史に出てこない。)
次に白羽の矢を立てたのが、北陸に地盤を持つ実力者、5代さかのぼれば応神天皇に行きつくというヲホド王だった。
当時相当に広いネットワークを持っていたと思われるヲホド王は、出入りの馬飼いに命じて都の様子を探らせ、情報を吟味したうえで、天皇の座に就くことを重々しく承諾する、という流れだったと伝えられる。
ヲホド王=第26代継体天皇はこうして誕生した。
齢50を過ぎていたヲホド王には、当然ながらすでに妻子がいたが、即位にあたっては武烈天皇の妹・手白香皇女(たしらかのひめみこ)を皇后に迎え、皇統をつないでゆくことになった。

そしてこの頃から、ヤマトと朝鮮半島との行き来が激しくなる。
ヤマトは朝鮮の拠点だった任那を失い、新羅・百済・高麗とヤマトの間で何度も小競り合いが起きる。
継体天皇の死後、即位前のヲホド王が北陸でもうけていた息子、安閑天皇・宣化天皇を経て、手白香皇女が生んだ息子が第29代欽明天皇となると、朝鮮半島はいよいよ混迷の度合いを深める――。


『日本書紀 全現代語訳+解説』の第5巻の内容はこんなところだ。
この巻は、学者たちや巷間の古代史ファンのなどの間でさまざまな読みや主張がされている、問題を多くはらんだ巻であーる。
武烈天皇があんなに酷い支配者として書かれているのはなぜか。
オケ・ヲケ兄弟の前に、女性天皇がいたのではないか。
継体天皇とは何者なのか。
安閑・宣化両天皇は本当にいたのか。
ことに、皇統のあり方、王朝の交代の有無については、喧しい議論が続いている。
さらに、朝鮮半島をめぐる記事に言及するにはちょっと慎重にならざるを得ないので、日本の学者たちもあまり深く触れないようにしているという現実があるらしい。

本書の著者である寺田惠子先生は、前書きでこう述べている。
「『日本書紀』を文献批判的に読んで歴史の事実を追究しようとするよりも、書かれた内容をわかりやすく伝え、その意図を読解することを目的としていますので(略)『日本書紀』の主張は主張としてそのまま書いています。」
「ただし、これを元にして批判し、事実認定や名称の是非を議論することを否定するものではありません。むしろ本書を素材として議論を深めていってくだされば、それに勝る幸いはありません。」


天皇を中心とした歴史の話題に触れることを、やたらにタブー視して避けようとする臆病な風潮に、私は与しない。
逆に、ある立場に立って「これが真実」と主張を曲げない人とも、距離を置きたい。
サッカーの競技規則を読みもしないで、今のはイエローカードだ、オフサイドだ、誤審だと騒ぐのと似たようなものだ。(読んでたって間違っちゃうけどね)

まず、読もうぜ。
読んでから何か言った方がいいんじゃない?

・・・というわけで、読んでください。
図書館にあれば借りてもらって、なければリクエスト出してください。
そうしてもらえると、関係者一同、とても喜びます。
もちろん買ってくれるのが一番嬉しいけど。


第五巻の表紙は、欽明天皇紀にある仏教公伝の場面。
百済の聖明王からの使者が、金銅の仏像や経典をたずさえて欽明天皇の前に進み出た際、欽明天皇は「躍り上って喜んだ(歓喜踊躍)」のだそうだ。


見開きに採用した、「朝廷の使いがヲホド王に天皇即位をお願いに上がる」画も見どころ。
挿絵画家の渡邊ちょんとさんの発案で背後に雪山を描き、厳冬期にヤマトから北陸へ、輿を担いでお迎えに上がった朝廷の切迫した危機感がよく表れていると思う。



※継体天皇の古墳を見学した時の記録
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1985183369&owner_id=24016198



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