原田ひ香『三千円の使いかた』(中公文庫)を読みました。
著者は、文庫本の最後の解説を担当している垣谷美雨などとろもに、人気の小説家・脚本家です。ただ、私はそれほど作品を読んだことはありません。『財布は踊る』と『一橋桐子(76)の犯罪日記』くらいしか記憶にありません。
本書は一言でいうと、節約小説です。私のようなエコノミストから見て、いかにもデフレ経済の時代にふさわしい、というか、もうインフレ経済に入っていますので、ふさわしかった、というべき小説です。もっとも、エッセイでも、ハウツー本でもなく、あくまで小説です。
主人公は御厨家の次女である御厨美帆20代半ばです。貯金はわずかに30万円ほどです。姉の御厨琴子はアラサーで元は証券会社に勤務し、すでに、消防士と結婚して子どももいます。貯金は、何と、600万円あります。母親の御厨智子は50代半ばで、貯金100万円ほどですが、祖母の御厨琴子は70歳を過ぎていて、かつては貯金1000万円ありましたが、夫を亡くして減額された年金の収入を補うため、作中で働きに出ることになります。この一家のほか、御厨琴子がホームセンターの園芸売り場で知り合った小森安生は40歳近いのですが、定職を持たずにお金が貯まると海外旅行する自由人で、彼のよき理解者であり、恋人である本木きなりは小森安生と同年代でライターをしています。
実際に、タイトルにある3000円の使い道が問われるのは冒頭章だけなのですが、一貫して、お金にまつわるお話が延々と続きます。主人公と同級生だった女性の結婚にまつわるお話にも、何となく、身につまされるものがありました。ただ、主人公は保護犬と出会って、犬を飼える一軒家の頭金を目標に節約に励み、貯金を始めます。
繰返しになりますが、実践的なハウツー本ではありませんから、あくまで小説として、心構えとか、貯蓄や投資に取り組む気概などを読み取るのが良いかという気がします。ただ、登場人物で上げたように、それほどたくさんの男性は登場しません。まあ、しょうがないか、と思います。
最後の最後に、最終ページに近いp.337に名言があります。御厨琴子の言葉です。
「お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない。」
というものです。はい、グッドハートの法則ですね。初耳だった人はネット検索してみましょう。
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