随分前のリリースになるが、MTT/SFSOのマラ3+亡き子を偲ぶ歌。因みにこのディスクは発売年のクラシック・オーケストラ作品部門でグラミー賞を獲得している。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/506952
Gustav Mahler:
Symphony No.3 in D minor
Kindertotenlieder
San Francisco Symphony Orchestra
Michael Tilson Thomas
Michelle DeYoung(Ms)
Women of the San Francisco Symphony Chorus
Pacific Boy Choir
San Francisco Girls Chorus
この名録音には何故か肩透かしを喰らってばかりいて、ずっとPCM音源だけで我慢してきた。ずっとサーバー上に鎮座していて、そこへ時折、無線LAN経由で再生リクエストを掛けては溜息をついていたのだが、ようやくDSD音源を手にする事が出来た。このSFSメディアの配給はOEHMSと同様に初版のみしか手に入れる事は出来ず、従って最初のディストリビューションで見逃すと基本的には新品での入手は不可能となる。
今更ながらのインプレを長く書こうとは思わないが、MTTの真骨頂がここで確かに聴き取れる。また、亡き子を偲ぶ歌がカップリングされているのであるが、寧ろこちらをメインディッシュと評する事さえ無謀ではないと思われる出色の出来映えだ。デヤングは、"寅さんといえば渥美清"
と等価のワンアンドオンリーの配役であり、ハイティンクやブーレーズらも昔から重用するマーラー・スペシャリストとしての立ち位置を確立している(勿論そんな事はなくてブロードなレパートリーは現代Msとしては最右翼と考えられる一人だ・・)。
マラ3は、では、もの凄く斬新で突き抜けたパフォーマンスか? といえばそうではなくて、極々普通、いや、日本語では表現しがたい概念なのだが「カノニカル」の一言に尽きるであろう。おおよそ基本に忠実、だがマイクロスコピックなMTTの特性を最大限に出しつつクールで逸脱のない理知的な盛り上がりを幾つも演出して見せてくれている。最終楽章が余りに淡々とし過ぎていて盛り上がりや熱感に乏しいとの誹りはあるやも知れないが、前半〜中盤の構築スタイルを踏襲すればこれしかなかったと思われる透徹の極みのようなフィナーレ、そしてコーダなのである。疾駆感に関しては昨今のゲルLSOがよく引き合いに出されるが、それは異次元同士の比較であって、この比較という行為自体がナンセンスなのだ。
ビンバン〜終楽章主題まで肩肘が張っているのを自覚しつつ、しかしコーダまで聴き届けた後、無音時間もそこそこにやって来る亡き子を偲ぶ歌は、これまたバックオケを背景とした切々たるメゾの独壇場であり、デヤングの歌声は他のどの指揮者の録音よりもしっとり湿潤かつ落ち着いたエモーションで支配されている。声自体も素晴らしく伸びやかかつ深く暖かい。演奏も解釈も独唱もカノニカルであって突出した演出は認められない。が、深く静かな感動が宿っているのであった。不思議というか変わっているというか、いや、変わっていなさ加減が変わっているというべきか・・。正攻法とはかくあるべしという手本なのであろう。脱帽。
(録音評)
SFSメディア、82193600032、SACDハイブリッド2枚組。デイヴィス・シンフォニー・ホールでのライブ収録。録音担当は一貫してお馴染みのTritonus Musikproduktion GmbHで、Andreas Neubronnerの手による。
贅沢なもので、このDSD録音、特に#3の方が陳腐で普通に聞こえてしまうのである。要するに少々ソリッド加減が強いのだ。もうちょっと面接触のまろんだ肌触りが感じられていい気がするが、まぁ、それでも立体的三次元に展開する深い音場とビームが飛びまくるサウンドステージにはいつもながら驚かされてしまう。DSDらしさがちょっと感じられずどちらかというとPCM的な隈取りの音質だ。因みに、亡き子を偲ぶ歌の方の音質は超絶的な典型DSDで、これはいつものノイブロンナーの手になる耳に馴染んだ録り方である。
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