この2枚分は2007年にリ・イシューされた2枚組(SONY BMG 88697099402)と同一内容がそのままビルトインされる格好となっている。また、これらの2枚は更にその10年ほど前に単発で出たバラード集、舟歌など、および24の前奏曲と葬送、英雄ポロネーズなどの各1枚ものをひとまとめにしたものだった。たまたま評判だったこの2枚組を買っていなかったので買い足しと同じこととなる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3726006
CD3
・バラード第1番ト短調作品23
・バラード第2番ヘ長調作品38
・バラード第3番変イ長調作品47
・バラード第4番ヘ短調作品52
・舟歌 ヘ長調 作品60
・子守歌 変ニ長調 作品57
・スケルツォ第4番ホ長調 作品54
CD4
・24の前奏曲作品28
・ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調作品35『葬送』
・ポロネーズ第6番変イ長調作品53『英雄』
エフゲニー・キーシン(ピアノ)
バラードは、ショパン作品の中ではいずれも私的で感傷的、そして舞踏色の弱い落ち着いた大スケール作品群であり、弾き手の包容力や解釈の深浅が試される難題だ。キーシンのこれらへの解釈は大胆不敵で強烈なアゴーギク、荒々しいタッチが特徴となる。前述の通りバラード集に関してはディテールを塗り重ねる様な描画を期待したい作品群であると個人的には思っている。
ベルセウスは本当に丁寧で素晴らしいのひとこと。これだけの弱音を一定テンポでしかもサスティン音も含めて維持することの難しさは良く分かる。強靱なコントロール能力だ。次のバルカローレは意外なほど沈着でちょっと路線が違う気がする。しかしキーシンの通常の引き倒し方とは違う興味深い一曲といえようか。破天荒さが一切無い丁寧なこの弾き方はことバルカローレの場合には逆という気がしている。
24の前奏曲は前のDisc 3の翌年の同じ夏に同じ場所で録られたものだが、一年のインターバルで随分とプレゼンスの異なったピアノを弾いている。変幻自在で懐深く、そして荒くれなところが殆ど感じられないのだ。瑞々しい解釈とはこのことを指しているのかも知れない。そして葬送。骨格の太い同道とした解釈だ。うねる様な情感を得意のアゴーギクに載せて、いわばキーシン節が炸裂しているのである。葬送の場合、荒々しい部分と情感面の細やかな部分が同居するソナタなので、あるテーマ性を貫いて弾き通すのは難しい作品だがキーシンがやると不統一でばらばらなまとめ方も「あり」か? と思わされてしまう。そういった理屈ではないグリップ力と構図の切り出し方が彼を天才たらしめている、と言えるのかもしれない。
カーネギー・ライブから転載したラストの英雄ポロネーズであるが、これはショパン作品の中でもまさにキーシンのためにある様な作品である。大胆で鮮やかな彫琢は余りに嵌っていて格好よすぎだ。
(録音評)
RCA Red Seal(ソニーBMG)、88697625302、通常CD5枚組。Disc3の録音時期:1997年7月30日、31日、8月1日、録音場所:フライブルク、南西ドイツ放送局スタジオ。Disc4の録音時期:1998年8月5-7日、録音場所:フライブルク、南西ドイツ放送局スタジオ。音質は華美な光沢のない地味で温度感の低いもの。しかしスタジオ録りながら適度なアンビエンスとホールトーンが付加されており、それが何とも潤いに満ちていて心地良い音質だ。キーシンの荒れたキータッチとノイズ、ピアノの暴れは適度にコントロールされている。
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