廃盤になる前に買っておこうという主旨で、2003年リリースの貴重なアルバムを確保した。あの天才女流=リーズ・ドゥ・ラ・サールの初録音とされるCDで、録音当時はなんと14歳。その後、成長するにつれコンチェルト
http://musicarena.exblog.jp/7447677 や長編独奏作品
http://musicarena.exblog.jp/7813261 の録音が次々にリリースされたのは周知の事実。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/576408
Sergei Rachmaninov - ラフマニノフ(1873-1943)
Etudes - tableaux, Op.39 (excerpts) 絵画的練習曲「音の絵」(抜粋)
No. 1 in C minor: Allegro agitato
No. 2 in A minor: Lento assai
Etudes - tableaux, Op.33 (excerpts) 絵画的練習曲「音の絵」(抜粋)
No. 6 in E flat minor: Non allegro
No. 2 in C major: Allegro
No. 9 in C sharp minor: Grave
Maurice Ravel - モーリス・ラヴェル(1875-1937)
Sonatine ソナチネ
I. Modere
II. Mouvement de Menuet
III. Anime 8
Miroirs 鏡
No.1 Noctuelles 蛾
No.2 Oiseaux tristes 悲しい鳥たち
No.3 Une barque sur l'ocean 洋上の小舟
No.4 Alborada del gracioso 道化師の朝の歌
No.5 La vallee des cloches 鐘の谷
Lise De La Salle(p) リーズ・ドゥ・ラ・サール
ラフマニノフの音の絵は練習曲と言いつつも高い完成度と難易度を誇る二冊構成の曲集で、ショパンのop.10+25の二冊と並び称される香り高い練習曲集の一つだ。リーズの初録音はそのOp.39側の1〜2番だった。アルペジオで激しく上下動を繰り返す左手分散和音に交錯する金属音的な右手アルペジオが特徴的な1番を難なく軽々と弾き通すと、今度は大規模で陰鬱かつ激烈な2番に突入。ここまで息を凝らして聴いてきたがなんとも強く引き込まれる演奏だろうか。
ラヴェルのソナチネになると一気に肩の力が抜けて楽しく浮き浮きとした、それでいて突き刺さるような鋭い棘を持った音粒たちが鮮やかに散乱するのだ。最初の一小節を聴いただけでラヴェル作品と分かってしまう余りにも特徴的な不完全和音と未完成スケールがリーズの超絶運指によって鮮やかに弾き込まれるのだ。
白眉は道化師の朝の歌。なんとも言えない旅愁を誘うイベリア風の色彩感が秀逸なこの作品は作曲者自身の手によってオーケストレーション版へと編曲されているが、その雄大で深々とした規模感はピアノ原曲で聴いても圧巻である。オケ版との対比はナンセンスと言わざるを得ないほどリーズの前衛的かつ合理的な解釈は際立っていて、そして演奏の骨格の寸法もまた申し分ない大きさだ。
録音当時の年齢は14歳。驚異と言わざるを得ない技巧と完成度なのであるが、それにも増して人の聴覚と音感を強固にグリップして決して離さないこの厚みある表現力と引力はどこから湧いて出ているのであろうか。
(録音評)
naive V4936、通常CD。録音は2002年9月、場所はnaiveお馴染みのスイス/ティボール・ヴァルガ・スタジオでの収録。この頃のnaiveのレコーディング機器の中心はdCS904による24bit/96KHz録音で、この盤も例外ではない。実にくっきりとした稠密なdCSの音色でありディスクリートADC時代の完成され尽くした音だ。リーズの指が鍵盤に触れる瞬間の音、サスティンペダルが踏み込まれた直後、ダンパーが上がる瞬間の音までリアルに録られていてはっと息を呑む臨場感だ。
前衛的な作品と高い完成度の演奏、そして非の打ち所のない音質と、どこをとっても素晴らしい出来映えだ。
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