このところちょっと気になるバイエルンだが、このSACDハイブリッドのオケはバイエルン放送ではなくて歌劇場の方。FARAO Classicsレーベルの新譜でメータ/バイエルン国立(州立)歌劇場のマラ5だ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3655938
Gustav Mahler: Symphony No.5
Bayerisches Staatsorchester
(英語表記:Bavarian State Orchestra)
Andreas Öttl, Trumpet
Johannes Dengler, Corno obligato
Zubin Mehta(Cond)
ムンバイ生まれのメータは今まで世界中のオケを振って来ており、取り分け合衆国オケでは卓越した統率力を見せつけてきた。バイエルン国立歌劇場管弦楽団はメータが可愛がっていた以前の手兵であり、現在ではケント・ナガノが常任のポストに就いている由緒正しい伝統的ドイツ・オケだ。
マラ5はマーラー交響曲の中でも一二を争う美しいメロディーラインと華美なリズム・セクションが特徴となる名作であるが、メータはマーラーを得意としているようで今回で3枚目の録音と言うことになるらしい。
上のHMVの解説によれば年齢とともにマラ5の演奏時間は延びており、この盤はまま遅いテンポ取りの解釈と言える。似たような時間配分で最近の録音を見ると、たまたま偶然だがMTT/SFSOやブーレーズVPOがそれに当たる。ところが、MTTはかなり速く聞こえるしブーレーズも決して遅くは聞こえない。このメータはどうかというと、確かに速くはないが気絶するほど長くもない。まずまず中庸を行く遅めの解釈と言って良いだろう。
マラ5は5楽章対称形式のマーラー中期の交響曲作品で、全3部の譜面構成となっている。メータは第一部(1〜2楽章)を勇壮にくっきりと描いている。速度は一定でアチェレランド、リタルダンド共に起伏は極めて緩やかで堂々たる鳴らしっぷりだ。このちょっと膨満したゆったり目のオケの鳴らし方はメータの特徴だがそれがこの第一部ではうまく出ている。それは各音符を一貫したテヌートで丁寧に紡ぐやり方に由来しているが、打楽器群の強烈なアタックも奏功している。
第二部=中間のスケルツォ=3楽章もゆったり目で過剰な乗りは感じられずオケをふくよかに鳴らしている。第三部の冒頭アダージェットは遅めではあるが静かな情感を込めて美しく歌わせるリードでありこのオケの弦楽5部の実力がはっきりと現れている。実に美しい弦だ。
最終楽章ではちょっとテンポ感を上げてスタッカート基調で進む。しかし、ここでも過度な疾駆感は抑えていてなかなかにレイショナルで清潔な解釈だ。コーダはマッシブさを纏わせて一気に結んでいる。
ブーレーズやMTTのようなクールで筋肉質のマーラーではないがこれはこれでオケの風圧を楽しむには良い演奏ではなかろうか。
(録音評)
FARAO Classicsレーベル、S108052、SACDハイブリッド。2008年12月15日の演奏会ライブ。音質はマッシブで音像は中庸位置に定位する。サウンドステージは広大だが弦のビームが鋭くて、とても臨場感が豊かだ。とにかく弦が美しく捉えられている。後方から迫り来るブラス/打楽器群の風圧が凄まじく、グランカッサの最低音域は楽々とカバーされ、またコンバスのゴリゴリ感も生々しい迫力だ。
このところのクラシックCDは音質が異様に優秀で、このSACDハイブリッドもまたそのうちの一枚と言える。これがライブ収録だとは俄に信じがたい超高音質録音だ。FARAOのCDを買ったのは初めてだがこれは注目に値する品質のレーベルだ。
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