フィンランドONDINEの輸入新譜から、ハヴリジ・ハトルグリームソンという現代作家のVcコン二題。ソロVcは名手トルルス・モルクだ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3573873
Halflið Hallgrímsson:
Cello Concerto Op.30(World Premiere Recording)
Herma Op.17 for cello and string orchestra
Truls Mørk(Vc)
Scottish Chamber Orchestra, John Storgårds(Cond)
例によって解釈の難しい現代音楽だ。だが新ウィーン楽派に見られるような12音技法やトーンクラスタではなく、ある程度の調和を辛うじて保っているような音楽だ。ハヴリジ・ハトルグリームソンは元々はアイスランドに生まれ、そこでチェリストとして音楽キャリアをスタートしたが、その後には拠点を英国エジンバラに移し、このCDのオケ演奏を担当してるスコティッシュ室内オーケストラのチェリストとして活動してきた。しかし作曲活動に先進するためにチェロ奏者としての活動は休止して現在に至っている。
VcコンOp.30はハトルグリームソンの二曲目となるVcのための協奏曲で、一曲目は協奏曲とは銘打っていないもののこのCDの二つ目に入っているヘルマ(=アイスランド語:英語で言うとherald importtant newsだそうで、昨今では人の言葉を引用したり真似たりする時に使われるという)という作品がそれに当たる。どちらも一楽章形式の曲で、それぞれは連続して一気に演奏されるが、中味は割と明確な領域分けがされている。いわば起承転結の見られる緩い結合状態の3〜4楽章形式だ。
いずれの音楽も不可思議だ。Op.30の方は調性が不明確だがハ調らしく、長大なチェロ独奏が優しくもあり、不安げでもあるモチーフを断続的にコーダまで引きずる。オケとのダイアロク部分とチェロのモノローグ部分が交錯しながら進む起伏の大きな展開だ。
ライナーにある通り、幼少期にチェロでなぞったグリーグの子守歌(Berceuse)からインスパイアされたという。そして、奇妙な夢を見ているようで、また完全に覚醒している私を宥(なだ)めてくれるような大規模な子守歌を作ったのだ、という述懐が雰囲気的には理解できる。
安定と不安定、明と暗、そしてどこまでもゆっくりと墜落して行くような浮遊感が堪らない作品だ。但し聴き辛い曲で解釈も難しく、従って万人にお勧め出来る代物ではない。
(録音評)
ONDINEレーベル、ODE 1133-2、通常CD。録音はEdinburgh, Greyfriars Church 12-14 Apr. 2007、プロデューサー:Paul Baxter(Delphian Records)、エンジニア:Adam Binks(Classical Record Production)とある。
ONDINEはSACDハイブリッドの旗手として永らく君臨してきたレーベルだが、ここのところシングルレイヤーCDでのリリースが主となった。理由は良く分からないが、CDだけでも十二分なクォリティが得られるので敢えてSACDハイブリッドで出す理由が見つからなくなったと言うことなのだろうか。
音質はかなり良好で、演色度合いは極小、空間の拡がりも相当秀逸、レンジも上下とも素直に伸びている。モルクのVcは中庸位置で捉えられているが生々しい臨場感と実在感が素晴らしい。オケ残響の深みも十二分に堪能できる壁抜けするサウンドステージは広大だ。
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