MIRAREの新譜で、シャニ・ディリュカの待望のアルバム第二弾だ。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2790532
メンデルスゾーン:
・無言歌集第1巻よりホ長調『甘い思い出』Op.19-1
・無言歌集第6巻より嬰ヘ短調『失われた幻影』Op.67-2
・無言歌集第6巻より変ホ長調『瞑想』Op.67-1
・無言歌集第6巻よりハ長調『紡ぎ歌』Op.67-4
・無言歌集第7巻よりニ長調『悲歌』Op.85-4
・無言歌集第8巻よりホ短調『寄る辺なく』Op.102-1
・無言歌集第8巻よりト短調『そよぐ風』Op.102-4
・無言歌集第8巻よりイ長調『楽しき農夫』Op.102-5
・無言歌集第8巻より舟歌Op.102-7(遺作)
・ピアノ三重奏曲Op.49 2楽章(ピアノ独奏版:編曲=シャニ・ディリュカ)
・厳格な変奏曲Op.54
・幻想曲嬰ヘ短調『スコットランド・ソナタ』Op.28
シャニ・ディリュカ(ピアノ)
ディリュカのMIRAREデビュー盤
http://musicarena.exblog.jp/7450029/ は鮮烈で、欧州の主要な音楽賞も総なめだった。グリーグでデビューと言うことで次が何で来るかは予測が出来ず、オーソドックスにモーツァルトかベートーヴェンなどのウィーン楽派、はたまたショパンかリストというピアノ特化の作品、或いはフランス印象派か? などと詮索していたのだが、意外なことにメンデルスゾーンの無言歌集であった。無言歌集は田部京子や小山実稚恵がリサイタルでよく弾いていて優しくて良い曲集だと思っていた。誰かのCDを持っていた気がして手元にあるCDの山を探してみたが無言歌集は見つからなかった。
ディリュカの無言歌集Op.19#1を最初にかけた時、なんだか別の曲という印象を持った。思っていた曲想とは空気感が全然違うのだ。なにがそう思わせるのかははっきり分からないが、ディリュカの弾き方が前出の女流たちとは全然違うのは明白で、テンポが比較的速くて全体に疾駆感が強い。なよとして感傷的なバルソルディの旋律をキリリとしたレガートで隈取り深く弾いている。デュナーミクの頻繁な出し入れが主体でアゴーギクは殆ど入れずに通しており、従って過度にメランコリックなベタベタ感はない。
どこかで聴いた優雅な旋律だと思ったら、ピアノトリオOp.49の二楽章(アンダンテ・コン・モート・トランクィーロ)だった。ん? と思ってライナーを見たらシャニ自身の手による編曲とある。独奏版もシンプルながら優美で可憐だ。
厳格な変奏曲はベートーヴェン風、また、シューベルトちっくな構築美を見せる堅い曲なのだが、シャニはこれは厳めしくハードに弾き切っていてなかなかに勇ましい。スタインウェイが悲鳴を上げてビリ付いているのはご愛敬。
締めのスコットランド・ソナタは色彩感が豊かでドラマティックな展開。終楽章プレストの速度感は格別で、執拗に繰り返される高速6連符の連打がシャニの技巧の優秀性を裏付けている。
(録音評)
MIRARE、MIR062、通常CD。録音はスイス、ティボー・ヴァルガ・スタジオとある。静寂な背景にシャニの強い鍵盤捌きが冴え渡るクリアな音質で、タッチの硬軟がくっきりと、しかし全体にしっとり感のある大人の質感だ。
しかし、MIRAREはボリス・ベレゾフスキー、クレール・デゼール、ブリジット・エンゲラー、そしてこのシャニなど優秀なピアニストをたくさん擁していて、その層の厚さと録音の優秀さでは最右翼だ。
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