地球伝承　～古代から未来へ～コミュの日本人の起源

AKKIY氏からの資料を、そのまま載せます。

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さて、今他の日記とのやりとりで下記のような「日本人の起源」をとりあげました。
自分はどこから、祖先はどこから、日本人はどこから、そして人類はどこから、という疑問に歴史の原点があるように思います。

　　　　　　　　　　　　　　　　　記
　　　　　　　　　　　　　「日本人の起源」
（１）血液型
　A型の多い西日本型は、南朝鮮から揚子江より南の南中国に分布し、湖南型と呼ばれる。
B型の多い東日本型は、インドから満州へかけて分布し、北中国を含み、インド・満州型と呼ばれる。
O型の多い太平洋型には、オーストラリア原住民やアメリカ・インディアンに多い太平洋・アメリカ型と、インドネシアからマレー、ベトナム、さらにはマダガスカルへかけて分布する南アジア・アフリカ型とがある。
『血液型からみたわたしの日本人起源論』
もともとの日本列島には､東北部に血液型Bのインド・満州型の人たちが､南西部に血液型Oの太平洋・アメリカ型の人たちが住んでいた。彼らはそれぞれ北方(おそらくは沿海州)および南方から日本列島へやって来た。古モンゴロイドである彼らの名残がそれぞれアイヌ人および沖縄に住む人たちである。今からおよそ5000年前に、血液型Oの南アジア・アフリカ型の人が南から日本の太平洋岸に、血液型Aの湖南型の地から北九州へやって来た。次におよそ2000年前に､朝鮮半島から、これまた血液型Aの湖南型の人たちが湖南の地から北九州へやって来た。彼らは血液型Bの人たちを北方へ、Oの人たちを南方および僻地へ追いやった。
（竹内均　著「ムー大陸から来た日本人　再び」徳間書店P118 P125P130）
（トピック1）日本人のA、B、O型の分布

（２）言語
ア文法
『ツラニーデと環中国語の分布』
興味深いのは、ツラニーデ（ツラは、トルコあるいはトルキスタンなどと同じ語源）の言語の語順が、日本語と同じ主語―目的語―動詞であることである。主語―目的語―動詞といった語順の他に、日本語と共通のいくつかの文法的特徴(てにおはにあたるものをもち)､名詞のすぐ前に形容詞が置かれ､語順にr音がなく､単語がおよそ二音節―はな、やま、かわ―、単語のはじめに濁音が立たない、濁音が少ないー「食べる」は「くふ」、「怖がる」は「おそる」、二重子音がない、重母音が本来ないー「青い」、「笑う」は、「青し」､「笑ふ」）をもった言葉であり、それを地図に書くと中国をとり巻くような分布になっている。そこで、これらの言葉が安本（美典）によって環中国語と名づけられたのである。
・・・環中国語の分布が、インド・満州型と呼ばれるＢ型の多い血液型の分布とほぼ一致していると述べた。確かにそのとおりではあるが、さらによく注意してみると,その分布の一部がここで述べたＡ型の多い湖南型、あるいはそれに近い血液型の分布と一致していることがわかる。環中国語のリストからこのような言葉を選び出すと、トルコ語（アルタイ諸言語）、チベット語、ビルマ語、ロロ語、レプチア語（チベット・ビルマ系諸言語）、ペルシャ語、ベンガーリー語、ネパール語（インド・イラニアン諸言語）、フィンランド語、ハンガリー語（ウラル諸言語）となる。安本の言うビルマ系江南語は明らかにこの中に入る。これで、約５０００年前以後に日本へやって来た、血液型Ａの人たちの素性がかなりはっきりしてきた。彼らは、ツラニーデで新モンゴロイドに属する人たちである。
　彼らは直接には江南の地からやって来た。しかし、さらにさかのぼると彼らの故郷は、雲南さらにはビルマ・チベット・ネパールのあたりということになる。約５０００年前以後に、ビルマ系の江南語を日本へもたらしたのはこれらの人たちである。
（竹内均　著「ムー大陸から来た日本人　再び」徳間書店P150）
イ．基本語
（ア）日本人とメラネシア語およびポリネシア語、カンボジア語
『基本語は南方語と似ている』
古い日本語の基本語と他の基本語とを比較すると､興味深い事実が浮かび上がる。文法で日本語と似ている環中国語の基本語が、日本語のそれとはあまり似ていないのである。基本語で日本語に最も似ているのは、なんとインドネシア系あるいはクメール系の言語なのである。＊1
（竹内均　著「ムー大陸から来た日本人　再び」徳間書店P143）
（イ）日本語とビルマ語、ドラビィダ語（人体語）
安本氏は､手・足・鼻等十二の人体語の中で、日本の上古語と（ビルマ系言語の）ボド語の、語頭の恩の一致するものが、七ないし九もあることから、この一致は偶然にはおこり得ないもので、両言語の間にはかなりの親近性がある（英語とドイツ語程度）と主張している。わずか十二の人体語の、しかも語頭の音だけの比較で、果たして親近度が示されるかどうか疑問であるが、偶然の一致ではありえないという主張は首肯されるように思われる。
藤原明氏は多くの人体語について、日本語とドラビィダ語との対応を示し、その類似性と同根を主張している。しかし、語彙の対応は主観によって個人差があるが、これらの主張については、まだ、必ずしも十分な批判検討はなされていない。
（山岡道生　著「日本民族の由来」葦書房P13７）
（トピック２）ドラビィダ語と日本語
(ウ) 日本語の基底にあるのは、北方的な言語である。日本語のルーツに関しては、（北方語の文法の基盤の上に、南方の語彙が流入したという）「北方語基層説」が成り立つ。
（奈良時代以降、中国語の語彙が大量に流入したにもかかわらず、また、明治維新以降、西欧の語彙が大量に流入したにもかかわらず、日本語の「私は、本を、読みます」という語順は、変化することかなかった.語彙はつぎつぎに変化しても、語順は、きわめて安定していた。）（山岡道生　著「日本民族の由来」Ｐ101葦書房）
『日本語形成についての仮説』
第一の層―「古極東アジア語」の層
６，０００～７，０００年以上前に、ユーラシア大陸の内部から､東北部に押し出された言語があった。その言語を、「古極東アジア語」と仮称する。
朝鮮､北海道､そして北海道以外の日本に分かれて住み、それぞれの言語を独自に発展させて､朝鮮語、アイヌ語､日本語祖語（原倭人語）になっていった。（三つの言語に共通な「私は､本を､読む」という語順）は、「古極東アジア語」に由来する。）
第二の層―「インドネシア系、カンボジア系語」の層
６，０００～７，０００年程度前、日本列島に言語に第二の波がおしよせる。インドネシア系、カンボジアの方面から来た単語も受け入れた。その結果､日本語の「基礎語彙」のなかに、インドネシア､カンボジア系諸語の影響がみられるようになる。これら南方からの言語の流入によって、「古極東アジア語」は北と南に分断される形となる。
第三の層―「ビルマ系江南語」の層
紀元前３～４世紀ごろの弥生時代に、おそらく稲作などとともに､江南からのビルマ系の言語が日本に押し寄せてきた。こうしてそれまでの日本基語のうえにビルマ系の言語が重なって､現代日本語の直接の祖先となる言語「倭人語」が成立した。
第四の層―「中国語」の層
紀元前後から､約２０００年にわたり､中国から漢語が流入し、多数の文化的な語彙をもたらし､現在の日本語が形成された。
（山岡道生　著「日本民族の由来」P110葦書房）
言語習慣は一般に根強いので、民族の言語の系統、あるいは形成過程を探ることは、その民族の由来を開明するのに有力な手段である｡ところで、言語習慣は保守性の強いものであるが、固有普遍のものではない。・・・音韻組織や文法体系は変化しにくく語彙は変化し易いのである。
（山岡道生　著「日本民族の由来」葦書房P124）
（トピック３）「新」｢新鮮｣にみる日本語とシュメール語・バビロニア語
ウ．数詞
白鳥庫吉氏は、縄文時代からや弥生時代への変革が、中国大陸からの渡来人によってなされたか、どうかを検証する一つの方法として、中国周辺諸民族の言語、特にその数詞を鋭意、調査研究した。・・・その結果、氏は日本民族は一・二・三・四と簡単な数を数え始めた太古の時代からこの列島に居住していたであろうと主張している。・・・日本語の数詞は倍数法呼ばれる特殊な体系を示している。一（フィ）と二（フゥ）、三（ミィ）と六（ムウ）、四（ヨオ）と八（ヤァ）は語尾の変化だけで倍数関係を示している。このような構成が明らかになっている数詞は、日本語以外では、アメリカインディアンのハイダ語だけであると言われている。このことは、日本民族が文化的伝統を形成する始原的な時期に、かなり孤立的な状態にあったか、あるいは日本民族が極端に保守的であるのか、どちらかであろう。
（山岡道生　著「日本民族の由来」葦書房P138）
（竹内均　著「ムー大陸から来た日本人再び」徳間書店P221）
エ．日本語「流入論」
日本語は共通の祖語という幹から出た木の枝ではなく、いくつもの川が流れ込んでまとまった一本の川である。　　　　　　
「流入論」
　　インドネシア系言語　　　　　クメールカンボジア系言語　　　　　　　中国語　　　　　　　　日本語　
環中国語　　　　　　古極東アジア語　　　　　　　　　　ビルマ系江南語
（三上喜孝著　　安本美典監修　同文書院　「ニッポン原人」P22）

（３）外見と遺伝子
ア．外見
『外見から日本人のルーツをさぐる』
国際日本文化研究センターの植原和郎教授らの「南方人基層説」
アイヌと琉球人が、（体毛やひげが濃く寒冷適応をとげていない）古モンゴロイド、すなわち、日本人の古い特徴を数多く残した人種であり、縄文人に非常に近い人たちである、と考えた。簡単にまとめるならば、こうなる。もともと日本列島には南方系の古モンゴロイドである縄文人が住んでいた｡それがある時期、北方系の新モンゴロイドが大量に渡来してきて、日本本土で混血をくり返し、今の日本人へと進化をとげた。一方、古モンゴロイドは、北と南に追いやられ、それぞれが独自の進化を遂げて、現在のアイヌ、琉球人となった。
（三上喜孝著　　安本美典監修　同文書院　「ニッポン原人」ｐ４5）
イ．遺伝子
（ア）南方系説
京都大学の人類学者・足立文太郎は、耳垢にウエット型とドライ型があることを指摘した。
アイヌは60％くらいがウエット型、沖縄人は、本州の日本人よりもウエット型が多く、アイヌよりは若干低い。一方、大陸をみると、朝鮮・北中国・ツングースなどはほとんどドライである。逆に台湾、ミクロネシア、メラネシアなどはウエット型が多い。
先ず、日本列島には、ウエット型の集団がいた。そこへ持ってきて、北からドライ型の集団が朝鮮半島経由でやって来て混血が行われ、現在の日本人が形成された。
ウエット型=南方系、ドライ型=北方系という指摘がなりたつならば、これもやはり、「南方人基層説」である。

（イ）北方系説
大阪医大の法医学者、松本秀雄氏は、人間のGm遺伝子を材料にして、日本人の起源を探る試みを行っている｡抗体がもっている血液型、「Gm遺伝子」の型は、人種によって明確に異なっている｡また、同じ人種に属していても、民族集団が異なると、その集団間で、遺伝子頻度がいちじるしく違うという特異性をもっているのである。・・日本人を北方型蒙古系民族に属するものとし、その起源をシベリアのバイカル湖畔にもとめたのである。・・アイヌと沖縄人が遺伝的にまったく同じであり、しかも一般的な日本人集団にくらべてはるかに北方的だという点である。

コメント(17)

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[2] mixiユーザー 10月07日 00:41

　紙ベースでも出典を明示すればかまわないとおもいますが、
一応自説の部分は著作権留保ということで、いかがでしょう。
　とはいえ、自説といえるものはあまりなく、趣味で読んだ本のエッセンスの集合ですが。

　本件は管理人様の意見にしたがうべきかとおもいます。

[3] mixiユーザー 10月07日 01:35

AKKIY氏の記事は出展が明示してありますし、問題ないんじゃないでしょうか。
私のほうはヘンテコな自説がいろいろありますが、このての著作権は留保しようとしても流出してしまうことは多々あり、しょうがないんじゃないか、などとノー天気に考えております。

金儲けのネタにしようとしても、そうは簡単にいかない分野ですし、できたとしたらそれはそいつのポピュリズム（大衆迎合）の才能でしょう。

私としてはＯＫです。

[5] mixiユーザー 10月12日 00:17

日本人の起源そのものではないのですが、日本語の由来についての２説を紹介します。
インドからドラビタ語が日本に入ったとする大野説は魅力ありますが、その間の中継地、ムー大陸でもあればべつですが、
にわかには信じえない気がします。

工藤説が紹介するアフリカのナイル上流に人類の起源あり、とう壮大な説はこの「地球伝承」にふさわしいとおもい引用する次第です。

１．大野説

「日本語はいかに成立したか」中公文庫2002年大野晋　著　Ｐ96　
・縄文時代
栽培植物がイモ、言語はオーストロネシア（ミクロネシア、メラネシア、インドネシア、ポリネシア）
ー母音終わり、単純な子音、捲舌音なしー
・弥生時代
栽培植物が稲、言語はタミル語（ドラヴィタ系諸語）、
ー農作関連の単語にて共通ー
日本語の文法と単語の基礎
・古墳時代
言語は高句麗語系（アルタイ系ートルコ、蒙古、満州、朝鮮半島の言語）
語順が共通、単語のはじめにＲ音なし、但し母音終わりなし、
神話において共通点多し

２．工藤説
遺伝子研究が変える言語の系統研究
最近の遺伝子研究によれば、現代のヒトの起源は今から15万年から20万年前のアフリカ中北部、ナイル上流にさかのぼるらしい。スタンフォード大学のカヴァリ＝スフォルツァ教授が数十年前から率いている遺伝子研究チームは次のような仮説を提唱している。
　ヒトの集団がアフリカの中で東西に分裂し始めたのが10万年ほど前。西行した集団は大西洋に阻まれ、南下してアフリカ南部で行き止まるが、東に動いた集団は北に向きを変え、スエズ地峡を通り、カスピ海南部に至って5万5千年ほど前に南北に分かれる。南に下った集団はインドネシアをへて中国南部とオーストラリアに行き着き、北上した集団はカスピ海の北で3万5千年から4万年ほど前、コーカサスの北を通り、西のヨーロッパ方面に行く群と東の中央アジア方面に向かう群とに再び分かれる。東に向かい東北アジアに居を構えた集団は、今から3万年から、1万5千年前再び細分化し、ベーリング海峡を通ってアメリカ大陸に入る者と、満州、モンゴル、チベット、朝鮮半島、日本列島といった極東地域に展開する者とに分かれた。当時の日本列島はおそらく大陸につながっていたと思われる。この現代人の俯瞰図は、アイヌ、琉球人を含め原日本人の起源を中国東北部に求めた分子人類学者、尾本惠市博士の説にほぼ重なる。
　原日本人はまず今から2万年ほど前から、当時陸続きとなっていた部分から日本列島に入り込んでいたのだ。1万年続く縄文時代の主人公たちである。さらに縄文末期、今から3千年以上前、主に朝鮮半島から高度な技術をもった人間の第二波流入があり弥生時代が始まる。先住の縄文人の多くは新大陸人と混血したが、あまり混血せず北に押し上げられたのがアイヌ人であり、南に押し下げられたのが琉球人である。
（「日本語はどこから生まれたか」工藤進　著　ベスト新書Ｐ１４～１６）

ユーラシア語とつながる原日本語
遺伝子研究チームの言語部門担当ともいえるメリット・ルーレンは、日本、朝鮮、アイヌ語など極東言語が印欧語と同じ起源をもつばかりでなく、世界の言語が一つの祖語に収斂するという説(1994)を立てた。・・・現代人・アフリカ起源説からみると、原日本語が大昔、インドのドラビィダ語などといった言語に関係していてもいっこうにおかしくない。大野晋は日本語とドラビィダ語の一つ、タミル語との直接的つながりを見出そうとしている。しかしインド大陸の南端からヤマトへのヒトの直接的移動は私には想像の外である。いったい縄文後期から弥生時代にかけてインドの南から人間が大量に、直接（ということは陸路ではなく海路で）、繰り返して日本列島に移動したということがありえただろうか。
（「日本語はどこから生まれたか」工藤進　著　ベスト新書Ｐ１６～１７）

[7] mixiユーザー 10月13日 00:14

遺伝子、染色体と科学的な観点からの話題と新しい知識を得ることが出来ました。
　実は中学1年のクリスマスイブ、スキーで足を骨折し、そのころの授業内容がいまだに苦手で、染色体と天気図がよめません。そのころの漢字も書けず・・・。

　あやふやですが、突然敦賀から継体天皇が登場したり、名前からして万世一系をかえって疑問視したくなります。

　今個人的に関心をもつのは、何故古代天皇家では近親婚が多かったのか、という下記の内容です。

　勿論マリーン様引用のように貴種保存という観点はあったのでしょうが。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記
　　　　　　　　　　　　　　　　　日本と中国の洪水神話と兄妹婚

１．サエノカミと洪水始祖説
「古事記」「日本書記」にさかのぼると､伊邪(いざ)那岐(なぎ)、伊邪(いざ)那美(なみ)の二神の死別の場面である黄泉国訪問譚に、「塞(さや)り坐(ま)す黄泉戸の大神」「衝き立つ船戸の神」｢道俣(ちまた)の神｣ほか、いくつもの境の神が長い道中の間に次々に登場する。
民間の神と知られるサエノカミにあたるものの勢ぞろいである。境の神々は伊邪那美の杖・履物・衣･褌などから化生している。おそらくそれらの品々は手向けの弊物へいもつであったろう。ところで、サエノカミ起源伝承に､近親婚のタブーを犯した兄と妹の説話がかなり広い範囲に伝えられている｡倉石忠彦によると､双神道祖神の分布地と兄妹婚話説は百例超える重なりをみせているという。この兄妹婚話説自体についてや、「記紀」に伊邪那岐、伊邪那美の婚姻がそれであるという。（倉石忠彦「道祖神信仰論」名著出版）
こうした兄妹婚話説には洪水始祖説の形をとる例が世界的な規模で広がっており、伊邪那岐、伊邪那美の婚姻にも前段として洪水説話があり､洪水で生き残った兄妹が近親相姦を犯し､始祖となったと考えられている。・・・長野県には兄妹婚型洪水説話と結びつく可能性のある洪水説話が、中球磨川･犀川流域を中心とした諏訪盆地､天竜川上流域などに集中的にみられるという。朝鮮半島にも近親相姦の説話があり、太白山脈の山麓の峠に立つ､村の守護神・チャンスンの由来もその一つである。・・・道が人びとにとって生活上の貴重な空間であり、広場をともない、宇宙観の中枢であった時代、小集落の共同体の暮らしと人びとを守護する神として男女一対の神は祖霊であった可能性がある。チャンスンの場合は里程標を兼ねている。しかし、時代の進展にともない路傍の守護神も違った様相をみせてくる。平安時代の「小野宮中行事」の「道饗祭事」の記事、「扶桑略記」の天慶(てんぎょう)２年（939年）の条、または｢本朝世紀｣の天慶元年の条によると、「路上に立つ男女2体の神像は臍下に陰陽を絵いた」とあり、この男女神を「岐神」、あるいは「御霊」ともよんだ。
御霊とは、菅原天神のように、政争に破れたり戦いに負けたりして非業の死を遂げた霊を言い、都市の流行病などをもたらす悪霊をいう。つまり、疫病を流行らせる霊を祭り上げて御霊とよび、逆に疫病退散に役立てようとしたものである。つまり、本来の「岐神」に、都市の発達にともない平安時代に新しく興った御霊信仰が習合したものである。この「岐神」すなわち「御霊」とよぶ神が、どのような神か当時の人びとにもわからず、これを奇としたという。
　このように境に立つ男根、女陰をあからさまに表現した性神は、縄文時代には祖先神であったし、東アジアの視野でみても、子孫繁栄の子授けの始祖神であることが多い。一方、男性器にしろ、女性器にしろ、これみよがしにして外敵を威嚇する例があることは古今東西を問わない。むろん、それを認めないわけではないが、その点ばかりが強調されがちであることを訴えておきたいのである。・・・北部タイの山地民アカ族の村には入り口に鳥居形の門があって、門柱の根方に男女一対の木偶がある。
(萩原秀三郎　著　｢神樹｣　小学館　P26～28)

２．中国の洪水神話と箱舟伝説
洪水説話は､創世の神話の最初の形態としてあらわれる。すでに定着的な農耕の段階にある地域で､最もおそれられたのは洪水であろう。・・・中国には数種の洪水説話がある。洪水神としては禹､共工や伏羲と女媧、また伊尹の説話がある。それらはいずれも河南西部の古い洪水地帯に起こったものであり、それぞれ異なる種族の間に伝えられたものであろう。
禹は夏王朝の始祖とされるもので、それは夏系の神話である。共工は姜姓の神であるらしく、羌人の伝えた者と思われる。伏羲・女媧は、その説話がのちまでもひろく苗系の間におこなわれていたることからみても、南方の苗人のもつ神話であった。この男女の二神は、また人類の創造者ともされている。伊尹は殷の湯王をたすけた聖者とされ、伏羲・女媧と同じく箱舟型の説話をもつ。おそらく殷人の伝承したものであろう。これを土器文化との関係においていえば、禹と共工とはおそらく仰韶文化、伏羲・女媧は屈家嶺の文化＊5、伊尹は竜山文化系＊6に属することとなる。これらの神々の葛藤は、共工の治水の失敗のあとを承けて、夏系の禹がこれを治めたとし、苗系では伏羲・女媧がこれを修理補成したという。そのような闘争の過程からいえば、共工が最も古い神となる。しかしそれは種族間の闘争として語られているものであるから、必ずしも時間的な関係を示すものではなく、むしろ勢力関係、あるいはいえ敵対関係を反映するものとみるべきである。・・・共工は姜姓であるが、顓頊(せんぎょく)と帝となることを争うて敗れ、天柱地維を折ってこれを傾けたものである。・・・「人面にして朱髪、蛇身にして人の手足あり」としるされている共工の神像は、伏羲・女媧の姿に似ている。・・・禹はもと魚形（偏枯）の神であった。・・・しかしこの偏枯が、もとの禹の神像を示すものであったことは早く忘れられて、それは治水のために山川の間を跋渉し､病みつかれた禹の姿をいうものと解された。羌系の共工およびその臣などが、みな竜形の神であるのに対して、夏系の洪水神は魚の形を本態として考えられている。禹の字形は､両竜を組み合わせた形であるが、・・・文字が殷人によって作られていることからいえば、殷人は、これを洪水神の一般の形態として､竜形の神と解したのであろう。・・・「礼記」に「女媧の笙簧(しゃうくわう)」というのがあり、・・・それは伏羲・女媧の洪水説話に用いられる葫蘆(ふくべ)から名を得ている。・・・女媧は70たび化するという話がみえ､死してまた蘇る神の性格を持っている。おそらく農業神としての一面をもつものであろう。すなわち大地母神的な神であった。・・・伏羲はまた庖羲(ほうぎ)ともかかれているが、庖はおそらく匏瓜(ほうか)の匏、すなわちひさごであろう。女媧は洪水をふせぐのに葫蘆(ふくべ)の灰を用いたが、葫蘆(ふくべ)もまたひさごで､壺蘆ともいう。大洪水をのがれた女媧は、このひさごの中にいたのであった。おそらく伏羲の原型はこのひさごであり、それは、箱舟型の洪水説話であったとみられる。・・・竜トーテム的な信仰は、殷人にも深い影響を与えた．天上の神とされる雲や虹はみな竜形であらわされた。・・・自然神を祀ることを祀というが、祀も蛇神、すなわち夜刀(やと)の神＊８をまつるのが原義であった。・・・殷人がもし竜トーテム的信仰をとり入れていたとすれば、それはおそらく屈家嶺文化の稲作農業と関係があろう。
（白川　静著「中国の神話」中央公論新社P71～85）
中国の古代神話の中には､大洪水のときに兄妹の二人だけが助かって夫婦となり､新しい人類の始祖となる伝承がある。兄の名を伏羲、妹の名を女媧と呼ぶことが多く、またこの兄妹は､漢代の画像石などには、下半身が二匹の蛇のように絡み合った姿で描かれている（白川静『中国の神話』）。伏羲・女媧の神話の系統が日本にも渡来して、イザナギ・イザナミの神話となった､という説がある。ナキ・ナミはナーガの変形語で蛇を意味している。
（谷川健一　著「日本の神々」岩波新書P94）
トピック１日本と中国の神話体系

３．周の同姓不婚
羌としての牧畜の経験(近親相姦的な割合がたかくなると体的に虚弱なものやさまざまな疾患をもったものがふえてくる、特に羊の場合、盲目を生むことが多い)から同姓不婚の智恵をもっていたらしい。この禁制は、「周礼(しゅらい)」からはじまるのである。
いまでも中国は慣習として同姓不婚だし、韓国でもそうで、民法でこれを禁止している。紀元前の「周礼」という文明の要素は、牢固として生きているのである。
日本は、いわば南方社会で、いとこ結婚制度を大目に見ねば､大混乱してしまう。
たとえば、・・・持統天皇の配偶者（天武天皇）は、いとこどころか叔父にあたる。
（司馬遼太郎　著「この国のかたち」三『婚姻雑話』文芸春秋）
周は､同姓のものを諸侯に封じた。いわゆる姫姓の諸侯であるが、・・・異姓の諸侯も､だんだんに多くなった。そこで、これらを周天下と言う一つの大きな組織のなかにどう組みこんでいくかがたいへん大切なことになってくる｡その場合､同姓不娶の制度によって､姫姓諸侯はかならず異姓諸侯の家と婚姻関係を結ばねばならないとなると、それがどんな役目をはたすであろうかは、もはや説明するまでもなかろう。いうまでもなく、天下は、王を頂点とする網の目にうまくまとめあげられていくわけである。
（水野清一　責任編集　　「中国文明の歴史」１『中国文化の成立』中公文庫）

４．馬の系図
今日もアラビア人など極めて馬の系図を重んじ貴種の馬の血筋を堕さぬようもっとも腐心するを見れば、たまたま母子を配せしめた事もあろう。そのアラビア人は今日も同姓婚を重んじ、従妹は従兄の妻と極めているから、婦(よめ)を求むるに先立ち必ずまずその従兄の有無を尋ね許諾を受けにゃならぬ。・・・国史を繙(ひもと)く者は少なくとも鎌倉時代の末まで邦人殊に貴族間に同姓婚行なわれたと知る。支那は同姓不婚で名高い国だが、「左伝」「史記」などに貴族の兄弟姉妹と通じ事を起こした例が少なからぬ。これも上世同性婚を尚んだ遺風であろう。・・・またことごとく邪淫の念のみに起こったと想われぬ、そもそも王家母系のみを重んずる諸国にありては、王の后が真の王権を具し、王は単にその夫たるだけの訳で崇(あが)められるに過ぎず、したがって王冠が垢の他人の手に移らぬよう王はなるべくその姉妹を后とした。
（南方熊楠　著「十二支考」(上)岩波文庫Ｐ402～403）

５．古代天皇家と兄妹婚
沖縄の宮古島に次の話がある。昔、久米島の豪族に一人の娘がいた。この娘はたいそう賢かったために、その兄嫁の嫉妬を買った。兄嫁は娘の父に向かって、娘のところには男が毎夜通ってくるといいたてた。そこでその父は腹をたてて、小舟に娘をのせてどこへともなく追放した。娘の兄はこれを知り、自分の妹がなんの罪もないのに、妻の讒言によって流されたことを悲しんだ。そこで自分も妹と一緒に死のうとおもって小舟に泳ぎつき、二人で漂流をつづけた。するとあくる朝に、舟は宮古島の港についた。兄と妹は小屋をたてて住んでいたが、そののち妹の方は土地の男と結婚した。兄妹が死んだのち、二人を船立の御嶽にまつったと「宮古島旧記」は伝えている。じっさい兄と妹とは夫婦になったのであろう。この話で異常なのは、兄が自分の妻をさしおいて、妹の運命を案じ、そのために死ぬことさえいとわないことである。
この話はただちに「古事記」に記された垂仁天皇の妃のサホヒメとその兄のサホヒコの相愛の物語を思い起させる。サホヒコの叛乱に加担しようとして果たさなかったサホヒメは自分の夫である垂仁天皇を捨てて、兄の許に走り、兄が殺されると自分も一緒に死ぬのである。このエピソードに匹敵する例として、間(はし)人(ひと)皇后が病床にある夫の孝徳帝をおいて、同母兄である中大兄皇子と共に大和へ去った例がある。「日本書紀」はそのとき孝徳帝が間人皇后にたいして深い不安をあらわした歌を作ったと述べている。それは男女の仲をうたがうような内容の歌である。・・・明確に兄妹相姦にあたるものは記紀に載せられた允恭天皇の皇子である軽皇子(かるのみこ)と同腹の妹である軽大郎女(かるのいらつめ)との相愛である。このために罪せられて、軽大郎女は伊予にながされたと「日本書紀」は記している｡このばあいは、母をおなじくする兄妹であればこそ、兄妹相姦を罪せられたのである。しかし古代日本において異母兄妹の結婚はみとめられていた。
　兄と妹との関係が夫と妻以上に親密であるということについては、さまざまな理由が考えられる。
　たとえば、中根千枝氏によると、母系制の社会では、夫婦関係は不安定で、そのかわり兄弟姉妹は死ぬまで仲よくむすびついている。兄弟姉妹関係と夫婦関係とは相反する両極として、強い引力を持って、個人を両方から引っぱる。中根氏は母系制の特色として、財産の所有権が母から娘に相続されるということと、権威、監督権が母の兄弟であるオジから姉妹の息子、つまりオイに相続されるという二点をあげている。（「人間の社会」所収論文）。古代日本や古琉球の社会が母系制社会であった証跡はまだ確認されないが、「妹の力」のつよかったことは確かである。
　大林太良氏は、記紀で異母姉妹の結婚の事例がさかんに出てくるのは仁徳天皇以後であることを指摘している。そしてこの兄妹婚は本質的には古代の天皇家に限られたもので、天皇家の血統の純粋性を維持するためにおこなわれたものであろうと「古代の婚姻」の中で指摘している。
　洞富雄氏は「天皇不親政の起源」の中で古代には男女の二重主権があったとし、ヒメは祭祀を、ヒコは政治をつかさどったと考えている。中山太郎も同意見である。それは古琉球の国王と聞得大君との間柄、あるいは斎宮と天皇との関係にまで延長できる考えである。・・・洞富雄氏は記紀の伝承では、崇神天皇の以前は、正妻（大后）も次妻以下も同様に近隣の豪族の女性をめとるという族外婚であるが、崇神天皇以降の近親結婚、とくに仁徳天皇以後の異母姉妹との結婚の時期は、大林太良氏の指摘するように、王権が急速に充実した時期にあたる。天皇の兄妹婚は、王統の確認の動きに応じるものであるという。また日本古代の兄妹婚が、本質的には天皇家に限られたものであるとすれば、この現象に対して一つの解釈が可能となる。
　天皇は氏族連合社会の共同幻想だけでは不十分であることから、対幻想の一方の当事者の役割をもはたそうとしたのではないか、と私は推測してみたいのである。すなわちそれは結果的には、兄と妹の関係をなぞったヒメヒコ制社会の「対幻想」を天皇はうばったことになると私は思うのである。しかしそれはもとよりヒメヒコ制社会のように充足したものではなかった。皇后を神と天皇との仲介者である巫女的存在としてナカツスメラミコトと呼び、ヒメヒコ制の二重統治になぞらえたとしても、また斎宮が伊勢に移されて、国家的に祭祀が拡大したとしても、それらは宗教的権威者である女性が政治と関わりあう場から敗退していった社会現象であった。つまり古代天皇家の出現は、士族的共同幻想の剥奪だけでなく、その根幹とつながって連結するところの対幻想の収奪でもあった。
（谷川健一　著「失われた日本を求めて」青土社P104）

[9] mixiユーザー 10月14日 00:02

　実はまだ引用のみで自身の仮説に至りませんが、マリーン様引用の天皇男系説に触発されて未完成ながら「古代天皇家と兄妹婚」を紹介しました。
　必ずしも柳田説のように南方沖縄にオリジンを求めるわけではありませんが、沖縄に日本人ルーツの一つを感じます。大野説の言語学ではありませんが、インドのドラビタ語や交叉イトコ婚といった共通性も南方にはあるようです。

[10] mixiユーザー 10月14日 13:54

　未整理の「古代天皇家と兄妹婚」補足説明です。

　１純粋性の維持
　「記紀で異母姉妹の結婚の事例がさかんに出てくるのは仁徳天皇以後、そしてこの兄妹婚は本質的には古代の天皇家に限られたもので、天皇家の血統の純粋性を維持するためにおこなわれた。」大林太良説
（マリーン様引用の蔵琢也研究員説明と純粋性という意味で近いものを感じます。）
　２母系制と相続
「母系制の特色として、財産の所有権が母から娘に相続されるということと、権威、監督権が母の兄弟であるオジから姉妹の息子、つまりオイに相続される。」中根千枝説
　３いとこ婚
いとこ婚を日本が南方社会であることで説明する。「日本は、いわば南方社会で、いとこ結婚制度を大目に見ねば､大混乱してしまう。たとえば、・・・持統天皇の配偶者（天武天皇）は、いとこどころか叔父にあたる。」司馬遼太郎説

　下記の辛島説にある「南インド交叉いとこ婚と女性地位の高さ」が古代天皇家以前の日本においてアマテラス、トヨが崇拝されたことを説明する材料となるのかもしれません。人類の起源とまでいかないものの、天皇家、古代日本の起源のヒントになるようにも思うことから、長文となりますが紹介致します。

　なお、「交叉イトコ婚」は人類学では普遍的な知識なのかもしれませんが、素人の小生には難解な知識で未消化です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　記
　　　　　　　　　　　　　　　　「南インドにおける交叉イトコ婚」
　南インドでは、兄（または弟）の子と妹（または姉）の子供達（交叉イトコ達同士）が結婚することは理想的な結婚だと思われている。交叉イトコとは母の兄弟または父の姉妹の子供達のことで、平行イトコとは母の姉妹の子供達と父の兄弟の子供達をさしており、この平行イトコ同士は実の兄弟姉妹と同様に考えられているので結婚できない。交叉イトコ婚には三種類あって、父方イトコ婚、父方交叉イトコ婚、双系交叉イトコ婚（どちらの交叉イトコでも可とされる場合）などがあり、南インドではカーストや地域によっていずれかが選ばれている。カーストによっては母方の叔父とその姪が結婚することすら認められるほどである。・・・南インドの女性の地位が比較的高いとされるのは、交叉イトコ婚と夫婦を基本とする核家族的な居住パターンに見られるような親族関係によっている。女性には結婚後も実家からの支援が続くため、夫婦は妻の実家にはひんぱんに行き来し、夫方居住、妻方居住、のいずれのケースを選ぶのもかなり自由である。・・・既婚女性の吉祥性とは、実は女性を取り囲む複数の男性の存在によって守られている。・・・父、息子、祖父、あるいは義理の息子と姑父、義兄弟などが権利と義務によって結ばれるのに対し、彼らをつなぐ核になるのが女性である。子供を生み、再生産活動によって男性達を連帯させ、同盟させるのである。・・・女性のもつ生殖力は社会の再生産の源である。この力がきちんとしたチャネル（結婚）によって活かされれば家と一族の繁栄に繋がる、と南インドの人びとは考える。チャネルからはずれること（つまり正しくない結婚によって女性と彼女の子供がカースト外へ出てしまうこと）は極力さけなければならない。・・・女性の生殖力をコントロールすることは、家族と親戚（ときに母方の人びと）に課せられている道徳律でもある。・・・
結婚した姉妹を通じて姻戚となった人びとの関係は、いくつかの新しい婚姻をもたらし、両家はガッシリとむすびつけられていくのが理想なのである。
（辛島　昇編　西村祐子「ドラビィダの世界」東京大学出版会P97～110）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「血縁集団」
　血縁を紐帯とする部分社会の呼称。血縁とは、この場合、親子関係による血のつながりの縦の連鎖だけではなく、それを生み出す夫婦関係、親をともにすることによる兄弟姉妹関係をも含めて、生物学的関係の存在を意味するが、血という生物学的なものがただちに社会的結合をもたらすものではなく、血縁意識が集団を形成している。その際、血縁意識が単系的（父系または母系）なものと、双系的（父方、母方の双方へ同じ比重）なものとがある。
（クロード・レヴィ＝ストロース　仲沢紀雄訳「今日のトーテミスム」みすず書房ⅰ～ⅱ）

[11] mixiユーザー 10月15日 07:42

なかなかややこしい話になっているようですが、横槍を入れさせてもらいますと、まず「日本人とは何か？」という無意識の詰問設定に呪縛されていると、なかなか整理がつかないと思います。「何か？」というと、どれかひとつのルーツに限定しなければいけないような、暗黙の強迫観念に囚われてしまいます。「あれも、これも」日本人なのだ、という多民族混合説に立つのが、私の前提です。

以下は『古代天皇と日本正史　現人神と万世一系の超秘密』中丸薫（徳間書房）から。

通常、日本史を語る場合は、旧石器時代について数行言及した後、縄文時代から弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代、といった具合に話が進んでいく。そのシナリオでは、大前提として日本列島という、大陸から孤立した温室のような環境が存在し、単一言語の単一民族がその中でぬくぬくと育ち、単一国家を形成して、中国の文物を取捨選択しながら独自の文化を発展させ、その結果、今日の日本に至る、とされる。
もちろんその過程で、蝦夷が大和朝廷に反抗したとか、百済あたりからの帰化人（最近では「渡来人」）が文化的に貢献したとか、あるいは蒙古が襲来した程度の記述はある。
ところが事実は、日本が単一民族の国だったことなど一度もないのである。
近年の研究を待たずとも、日本が単一文化や単一言語の国というのは、幻想に過ぎないことは知られていた。（ｐ４１）

縄文文化の起源も単一ではない。北日本と南日本では系統的に異なり、複雑な文化の組み合わせがあった。縄文人は何千年も大陸から孤立して日本列島で独自の世界を築いていたのではなく、広範なネットワークを通して、大陸と交渉していたのである。（ｐ４３）

ところで、遺跡の広場の中心には、巨木を積み上げた建物が建っている。その技術は、われわれの縄文時代に対する認識をくつがえすのに十分だが、それ以上に注目すべきは、その政治的意味である。１７メートルもの高い楼がなぜ必要だったのか。交易に行き来する船の目印とも考えられるが、単にそのような目的だけのためなら、多大な労力を費やして高い楼を建造する必要はない。明らかにこれは軍事的な見張り台であり、それを建てる必要があったということは、縄文時代がけっして平和な桃源郷ではなく、戦争が念頭にあったことを意味する。（ｐ９１）

弥生人は概して栄養状態が良く、縄文人より背が高かった。朝鮮半島の南部から高度な武器、稲作、その他の技術を持って渡来したものの戦いも相次いだ。頭のない人骨。石ぞくを多数射ち込まれた人骨も数多く発見されており、こうした事実も、弥生時代に、戦争が日常茶飯事だったことを示している。縄文時代同様、弥生時時代もけっしてのどかな世界などではなかったのである。（ｐ９６）

さらに新羅や伽耶の樹木冠（王冠）が、日本でも多数発見されている。群馬県の双子山古墳と奈良の藤ノ木古墳、茨城県三昧塚で発見されたものは、馬てい形の装飾があり、馬に関係の深い騎馬民族の王冠であることが分かる。と同時にこれらの文化もまた、西アジアの伝統の延長にあるといえよう。（ｐ５８）
同様に日本列島の古墳時代の衣服や冠も騎馬民族との共通点が多く、５世紀前後にスキタイの伝統を引く騎馬民族が侵入したことを示している。（ｐ５８）

ところで新羅の王冠は「聖樹冠」と呼ばれ、文字通り樹木のような形であるが、このデザインのベースにあるのは聖樹信仰である。聖樹信仰とは、実はスキタイ系の騎馬民族の信仰形態であり、ゾロアスター教（拝火教）の聖典がこの「聖樹」に言及し、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教でも秘儀として受け継がれている。
またギリシア・ローマ神話でも、森の女神ディアナ（ダイアナ）にまつわる聖なる樹木の枝が伝えられ、その枝は、森の王のみが折り取ることが許されるという。西アジアの聖樹冠は、ヨーロッパにおいても王冠のデザインとして変遷の歴史をとどめているのである。
　東アジアなどと一口で言うが、われわれ日本人の文化の基層も汎ユーラシア、汎世界的なものととらえる方が、より正しいと言えよう。（ｐ６２）

その上で、天皇家の「男系の意味＝Ｙ染色体」の話ですが、これは科学的・医学的な説明がどうこうと言うより、信仰の問題なのだと思います。昔「万世一系」と言ったものを、今は説得力に欠けると思い「Ｙ染色体」と言い直してみた。でも、結局、そのありがたさを信仰するか否かの問題であり、信じない人にとってはどうでもよい鰯の頭であり、信じる者にとっては死守すべき聖域なのです。
で、その父系の万世一系≒Ｙ染色体の神話ですが、これも非漢民族系のアジア騎馬民族の神話がルーツだそうです。血統的に一系かどうかは無視しまして（私はほとんど信じていません）、その思想・信仰が日本の皇室にバトンタッチされてきたのは、ほぼ疑いないと思います。

一方、日本の一般庶民はというと、母系社会（南方系？）の名残りの色濃い地域もあるようですし、それ以前に、他国（特に西洋）と比べて、それほど血統にこだわる国民性でもないんですね。血統・血縁よりも地縁・職縁という実用主義的な伝統もあって、それが高度経済成長を支えてきた側面でもあるはずです。（血縁のためだけにしか働かない、というのでは、国家ぐるみの労働効率が悪いわけだから）

ぶっちゃけた話、天皇家と庶民は、異民族と考えたほうがよいのでは？　（たまに天皇家に成り損ねた騎馬民族系がいて、これは日本社会ではただの変わり者！？）　でも、庶民の深層意識において、「しょせん天皇家は雲上人」という異民族感覚があったからこそ、それ以上の覇権争いが激化しなかったのかもしれないし、それはそれでうまく機能しているような気もするのです。

[12] mixiユーザー 10月15日 10:25

　いとこ婚を日本が南方社会であることで説明するという司馬遼太郎説は天皇家にはあてはめない、そして日本を多民族国家とかんがえれば整理できるわけですね。
　
　天皇家は、九州から神武天皇が東遷した、というイメージが漠然とあり、南方社会説を受け入れたのかも知れません。

[14] mixiユーザー 10月17日 00:14

マリーン様
　竹内氏は「遺伝子が解く!万世一系のひみつ」のレビューでは、近親婚姻もとりあげているようで、興味がもてます。

　著者は、生物学に詳しいようですね。

　現代版進化論という内容のようで「小さな悪魔の背中の窪み」とうネーミングも手なれたかんじですね。

　残念ながら近くの図書館ではみつけられませんでしたので、
もし時間あればレビューに詳しい書評を掲載してくださいませんか。

[15] mixiユーザー 10月17日 18:17

▽マリーン様
古代史探索をレアチーズケーキに喩えるとは、すごい発想です。将来、古代史ロマンを扱った女性誌が出てきたら、使えそうなキャッチ・コピーですね。

病原菌で思い出しましたが、少し前に流行った新手の進化論で、ハレー彗星が地球に存在しなかった宇宙の菌だかウィルスだかを運んできて撒き散らす、というのがありました。
だから疫病が大流行したり、人心が乱れたり、占星学的に言っても不吉とされるのだけど、一方それが種の進化の引き金にもなってきた、というような説です。
地球レベルでの、禍福は糾える縄の如し……、ですね。

さて、遺伝子学的な万世一系のことですが、やはり普通の農耕民には出てきにくい発想ではないのかと、思い当たりました。遊牧や牧畜を生活の常とする民族のほうが、日常的かつ実験的に、遺伝子の掛け合わせということを目の当たりにしているわけですから。
それと少しでも優秀な子孫を残そうとする熾烈な欲求は、戦争を常とする騎馬民族の馬に当てはまりやすいと思います。馬の能力によって、一族の命運まで左右されやすいのですから。
但し、近親婚ということになると、優れた固体も出るかわりに障害者も出やすい。（「不具者」というのは差別用語なのでしょうか？私のＰＣでは漢字変換で出てきません）　そういうバクチ的な行為は、普通の農耕民は嫌うでしょう。平均的でいいから、労働の総合力になったほうがいいのです。

近親婚に関しては、思想的・文化的伝統の他に、島の民族のように周辺から孤立した生活状況において、否応なく習慣化したケースがあると聞いたことがあります。地理的に孤立していなくとも、外部から渡来した少数民族とか、逆に侵入した民族に駆逐され、特定地域に隔離された先住民族など、他部族との交流を断たれた状況も考えられるでしょう。
それでも武力や行動力のある部族の場合は、極端な近親婚の反復による弊害を避けるため、他の里から娘をさらってくる略奪婚などもあったでしょう。ナマハゲや鬼や天狗などによる人さらいの民話・伝説などに、その痕跡が残っているはずです。
天皇家の場合は、この騎馬民族の伝統である父系を機軸とした遺伝子信仰と、少数民族の生き残り戦略である近親婚と、両方あったような気がします。

とは言え（繰り返しになりますが）、現天皇家が実際に万世一系だったとは、私は思っていません。
※九州から上陸した卑弥呼や神武天皇の時点（３世紀前後？）で、すでに混合王朝だったかもしれず、その後も大化の改新（６４５）、壬申の乱（６７２）あたりの“国際的”政変で激しくミキシングされ、すっかり入れ替わってしまっています。このあたりで初めて国家の原型らしきものができるのであり、それまでは国際色豊かな部族・氏族が乱立し、隙を窺っては覇を競うバトルロワイヤル状態だった。
（※卑弥呼や神武は南方経由で上陸したということで、南方文化と混合していたかもしれないが、それが即ち南方系民族だったということにはなりません。それこそ古代ユダヤの末裔としての流浪の民だったかもしれません）

この６～７～８世紀の激動で頭角を現してきたのが、朝鮮半島経由の騎馬民族の子孫です。そして、その政変の勝者が編纂したのが『古事記』『日本書紀』（通称『記紀』）で、これは歴史書や民族伝承の形を借りたイデオロギー書の意図が強かった。（但し、下請けの編集職人は為政者の意図に反抗して、暗号として史実をも書きとめようとしているので、決して無視できる書物でもありません）

『書記』は正確な歴史書ではない。あくまでも列島内での万世一系を謳うイデオロギー書として、倭王を理想化するために、架空の人物や王朝を捏造したりしている。あるいは逆に王としてふさわしくない行為があった場合、その倭王は存在が抹殺されることもあった。
（前掲『古代天皇家と日本正史』Ｐ２８５）

では、その騎馬民族の子孫がそのまま平安貴族につながっているのかと言えば、これもはなはだ怪しい。それにしては軟弱すぎます。（むしろ平将門などのほうが、その血が濃いでしょう）　激動には強いが、平和の裏の陰謀には弱いのが騎馬民族です。ここでも天皇家の入れ替わりが起こっていると、私は睨んでいます。
さらに近い時代としては、明治維新の時の長州藩が怪しく、天皇家に入り込んでいるという（かなり眉唾かもしれないけれど）陰謀説もあります。

しかし、そうした天皇家の各派（という言い方をあえてするならば）が、近い世代では異民族に見えても、ず～っとルーツを辿れば大きく一つの幹に集約されるのかもしれません。つまり、列島内の歴史で見る限りでは、天皇家は一系ではなく枝葉の複系ということです。

縄文合衆国としてのニギハヤヒ王朝＆出雲王朝が、そのまま素朴に発展していたのであれば、まだしもわかりやすかったのかもしれませんが、歴史とはアマノジャクです。そうは簡単にハッピーエンドにはさせてくれないのですね。

[17] mixiユーザー 11月25日 23:33

10月17日１５の管理人様の「略奪婚」に関して、スサノヲが八岐大蛇から「人身御供＝略奪婚」の対象となったクシイナダヒメを救い、妻としたことを説明する下記の内容に出会いました。クシイナダヒメもさぞかし美人であったことでしょう。

　　　　　　　人身御供と一夜妻－スサノヲとクシイナダヒメ－
喜田貞吉は、「人身御供」と題する論文で、人身御供を求めた「邪神姦鬼」の徒は。「化外の蛮民」とされた「山人」のことで、山人社会では、「昔は必要上大抵略奪結婚が行われた。八岐の大蛇が毎年出て来て少女を取るといふのは、即ち女子の欠乏に対する略奪結婚であったに相違ない。酒呑童子が美目よい女房や上臈を盗んだといふのも、つまりは同じく婦女の欠乏の結果なのだ。」と書き、「こうした略奪を防ぐため、一定の時期に村の婦女を彼らに嫁せしめる。是が即ち人身御供だ」と書く。そして、「其の犠牲となる婦女の選定は、或は卜定により、或は抽籤による場合もあろう。即ちこれ白羽の矢が立ったのだ。若し人身御供なるものが、真に其の肉を喰ふのみの、目的であるならば、飛騨の猿神の話の場合の様に、男女を限らず肉付きのよいものを希望すべき筈であるに拘らず、出雲簸川上なる八乙女を始として、通例は必ず未婚の少女で、しかも美目よきものを注目する所に此の消息は伺われる」と述べている。・・・八岐大蛇は荒御魂の山神、荒神であり、スサノヲと同性格である。・・・人身御供になったクシイナダヒメが、オロチを退治したスサノヲの妃になったのは、一夜妻のイスケヨリヒメが神武天皇の妃になったことと重なる。・・・『日本書紀』の三輪山伝説には、三輪山の神（大物主神）の正体は蛇で、美しい男に化身して娘のところに通ったとあり、山神は蛇である。この神が通った娘（ヤマトトトビモモソヒメ）について、『日本書紀』は「大物主神の妻」と書いている。彼女は神妻・一夜妻で、クシイナダヒメと同じである。このように人身御供譚は一夜妻譚だから、一時上臈の祭儀に人身御供が伴っているのである。
中山太郎も、一夜妻について、
或る定められた一夜（神祭の夜）だけ神に占められる務めを有ってゐた女性を、かく呼び習はしたものと考へたい。詳言すれば後世の伝説として、神の標である白羽の矢が家の棟に立ち、その女子が人身御供にあがるといふ思想の、最初の姿がこの一夜妻であったのである。伝説の通俗化は我国の『生贄』と支那の「犠牲」とを混同させ、人身御供といヘば、忽ちに神の餌食として取り殺されるように盲信させてしまったが、古き人身御供の意義は単なる神寵であって、一時的の神妻であり、神采女に過ぎなかったのである。
「日本婚姻史」Ｐ39～40日文社　復刻）と述べている。
（「遊女と天皇」大和岩雄　白水社P67～68）

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