mixiユーザー(id:21651068)

2024年03月23日23:05

10 view

福田平八郎

詩人の最果タヒが展覧会とコラボする詩集《春、夏、秋、冬、永遠の断面図》
を出しています。
グッズとして、表が作品 裏に関連する詩を印刷した「栞」もあります。

没後50年 福田平八郎
@大阪中之島美術館
フォト



会期中展示替えがあります。
後期(4/9〜)にならないと《雨》(東京国立近美)は出ていません。
逆に、前期でないと見られないのが
《雨後》(現京都市立芸大 卒業制作買上)など。

【展覧会構成】
第1章 手探りの時代
第2章 写実の探求
第3章 鮮やかな転換
第4章 新たな造形表現への挑戦
第5章 自由で豊かな美の世界へ

出品リスト掲載の200余点のうち85点以上が大分県立美術館の収蔵品です。

撮影可能な作品は
フライヤービジュアルにもなっている
《漣》《桃》《雲》《鱶の鰭と甘鯛》のほか
・安石榴(1920絹本額装)
・朝顔(1926六曲一隻)
・新雪(1948)
フォト


・氷(1955)
・水(1958)
・海魚(1963)
・遊鮎 ユウネン(1965)
・カーネーション、百合(1942)
・紅白餅 うす氷 栗松茸(1949)

心に残ったのは
◆緋鯉(絹本着色1930 京都近美)
縦横3m以上の大画面の上1/3に仄かにグラデーションをつけて降る細い雨脚
画面下部には水に沈む緋鯉4匹と白鯉1匹。
水面をたたく雨粒は処々白く跳ね返り
小さな水紋を描いています。
図録の画像では、雨の線を見せるために鯉の繊細な色が濃くなってしまっている。印刷の限界ですね。

そのほか
出掛けるときには写生帳を手放さなかったという平八郎らしく
写生帳も数多い。
木の葉や動植物、水や波といった直接作品に結び付くものばかりでなく
・TVの天気図
・敬子のセーター
などというものもありました。

*****

講演会
《漣》誕生の秘密
林野雅人(大阪中之島美術館 主任学芸員)
を聴きました。

″つかみ″は自らお召しの「漣シャツ」。
MサイズLサイズ限定各30枚というレアものです。16500円とお値段がはりますが。

【収蔵の経緯】
「漣」は第13回帝展の出品作品です。
それが大阪市のコレクションとなったのは1993年。
2億9870万円という購入価格のおどるサンケイ新聞には
油絵 「漣」
という文字が…日本画なんですが…
それほど「漣」は従来の日本画とかけ離れていたということです。
当初屏風だった漣が修復額装を経て重要文化財に指定されたのは2016年。
重文ゆえに、中之島美術館がオープンしても1年間は環境評価のため搬入できませんでした。
(よって開館記念展には出ていません)

【「漣」は福田平八郎の画業でどう位置付けられるか】
(展示構成にしたがって作品の見どころを説明)

第1章 (〜1918・21歳)
・野薔薇…すでに線が美しい
・池辺の家鴨…トリミングの妙
・雨後…技術は高いが独自性不足 卒業制作(買上)
・桃と娘(後期展示)…技法の試行錯誤がよくわかる

第2章 (〜1928・35歳)
★鯉…日展特選 宮内庁買上。これで結婚の許しを得たので″鯉を描いて恋を得た″作品。
前期は3/24までの2週間のみ
大分でも2週間のみの展示です。
・朝顔…屏風であるため胡粉の剥落などがあり、大分から他館への貸出は最後になると言われています。
フォト



第3章 (〜1944・54歳)
★漣…写生帳など関連資料多数。トリミングを決める枠とか。
″新発見資料″は衝立に貼られていたもの。
注文とは違う金屏風が届いたのでプラチナ箔を上から貼ったと言われていますが、金銀を重ね貼りした試作があり、偶然の事故とは考え難い。
結果として画面に柔らかさが加わりました。
・水…不定形(水 雲 氷等)を描く作品の区切り。
★青柿…前期のみ。
「漣」は日本画界にとって意味が大きいですが、本人にとってはこちらの作品が転機でした。以後、色で形を捉えるようになりました。
・竹…展覧会の入口ゲート

第4章 (〜1960・67歳)
・筍
・氷
★雨…後期展示
・新雪
・雲…展示はなんと60年ぶり。本人は見せるなと言っていたそうですが「気に入らない」のではなく時代が追い付くのを待っていたのでは…

第5章 (1961〜)
★花の習作…「本画はどこ?」ではなく習作というタイトル。最後の日展出品作。
・遊鮎…厳しさから対象への愛へ制作態度が変化した
・日の出…後期展示。自由な色遣い。

【漣の評価】
作品成立については
参考にしたかも!?の
・岡本東洋 の写真
波の影を一つ一つ下絵から写したチェックのあとを紹介。

評価については
「浴衣地のよう」「花鳥風景の手詰り」といった酷評から
「新境地」「題材の転化を求めて勇躍せんとする意気」という高評価まで様々。
本人は「何処かに行く道程に踏み出した様な気がしないでもない」。

【漣は抽象か具象か】

…という問題については、写実に基づく具象絵画であり
抽象画ではありませんが抽象化はされています。

そして今回の展覧会のための研究で
釣りを始めた時期などが訂正されたとのことでした。

【質疑応答】
問。
中之島美術館には平八郎がもう1点あるそうですがどんな作品ですか。
答。
図録を開いたくらいの大きさで筍が横向きに1本描かれています。いつか機会があれば出します。

問。
平八郎は遅筆だったそうですが何かエピソードは。
答。
今回出ている《山桜》(大阪市美)は昭和18年作となっていますが実は19年です。
巡回展のあと寄贈されることになっていまして
最初の大阪展では″構想段階″
次の京都展では″だいたいできました″
次の東京展では″書き直してます″…
寄贈式典の2日前に届いたそうです。
よくいえば作品化に妥協がないといいますか。
帝展への出品もとんだ年があるのはそうした事情かと。

問。
デザインにも通ずるといわれますが実際には
答。
本人の言葉としては残っていません。

問。
《日の出》がモネに似ています。
答。
モネの連作に通じる空気感はありますが真似はしていないと思います。

問。
後期展示の《雨》は雨粒が白かったり黒かったりしているようです。制作のエピソードはありますか。
答。
濡れたり乾いたりするのに興味をもち「瓦を描きたい」と思って写生を始めて。
主役は瓦か?雨か?と迷います。
結果、描いたのは瓦ですが、タイトルは「雨」にしました。
さらに、トリミングのしかたや、瓦の太さに変化をつけたりしたところに拘りを感じます。

4月6日には大分県美の吉田浩太郎氏の講演会があります。



5月6日まで。
5月18日から大分に巡回。
https://nakka-art.jp/exhibition-post/fukudaheihachiro-2023/

3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する