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2024年03月05日13:53

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EVカート

テレビをつけると、東京お台場の元ビーナス・フォートが体験型アトラクション施設「イマーシブ・フォート東京」に生まれ変わるよ、というニュースをやっていた。

どんな施設なのだろうとそのまま眺めていたら、周辺には「こんなところ」もあって、青海地区は今後お台場観光の目玉となりそうです、とリポーター。

んで、「こんなところ」とは、これ。

シティ・サーキット東京ベイ
https://city-circuit.com

モータースポーツの最底辺カテゴリーにレーシング・カートというのがある。見た目は遊園地の遊具的だけど、厳格なレギュレーションのもとに全国大会も開催されており、体感性能も馬鹿にできない。

これに素人をいきなり乗せるのは危険すぎるほどなので、性能を落として誰でも楽しめるようにしたのがスポーツ・カート。各地に専用のコースもあり、F1がブームだった頃は乗るのに2時間3時間待ちはあたりまえ、某アトラクション施設並みの人気だったそうだが、今は混むのは週末のみ、平日はどこも閑古鳥が鳴いている。

載せているエンジンは、昔は50〜90ccのガソリン2サイクル・エンジンが主流だったが、自動車の大気汚染が問題視されはじめると200cc程度のガソリン4サイクル・エンジンに置き換わりはじめ、現在はほぼ4サイクル・エンジン車となった。さらに昨今は電動カート(EVカート)も登場しつつあるが、まだ普及はしていないので乗ったことはもちろん、現物を見たこともなかった。

しかし三菱の嚆矢的EV、アイ・ミーブで電動システムの凄さを体験して以来、電動の小型スポーツカーを造ったらさぞ楽しかろうと思っていたので、さっそくお台場のコースを訪ねてみた。

場所は「ゆりかもめ」青海駅のすぐ近く、青海・有明南連絡線道路の北側なので、車で行く場合はどこからアプローチするにせよ青海1丁目交差点から東に向かうことになる。ただしカート場の無料駐車場には4、5台しか停められない。

受付は無料駐車場脇の小さな建物。そこで希望の乗車時間枠を予約し、料金を払うが、現金は使えない。またヘルメットとグローブ(軍手)、ネックガードは無料で貸してくれるが、ヘルメットの内部を汗や整髪料で汚さないようバラクラバ型のインナーを買わなければならないから、持っている人は持参した方が安上がりだ。ちなみに予約はwebサイトからも可能で、ビジター料金は4分1500円、7分3500円。長い方が高いのはなぜだ。(笑) これにメットインナー600円が必要となる。

受付を済ませたら別のドアから外に出て隣の建物(待機室)に行き、ルールなど諸注意をまとめた動画を見る。このルール説明、真面目なカート場はものすごくきっちりやるし、不真面目なところでも最低限の項目はスタッフが口頭で説明する。下手したら怪我では済まないからだ。しかしここは動画を見るのは本人まかせ。大丈夫だろうか。

なお待機室にはトイレやシャワー、無料の小型ロッカーも併設され、外には飲料の自販機もある。また屋根は露天の見学台になっている。

予約時間の10分前になったら、場外コースに隣接した屋内コース(キッズカート用)に向かう。その一画がピットレーンとカートの駐車場、ドライバーの走行準備場所になっている。

衝動的に訪れてしまったのでコース・レイアウトは待ち時間に覚えればいいやと思っていたら、暗記する間もなく乗車時間になってしまった。仕方がない、タイム・アタックは次回にして、今日はEVカートの感触を楽しむことにしよう。

参考までに周回タイムをスタッフのお兄さんにたずねると、カートの経験があって体重の軽い中学生が34秒台を出したのを見たことがありますが、大人だと乗り慣れた速い人で35秒台、ここが初めての人は速い人でも45秒前後、カート経験の無い人なら50秒台ですね。1分を超える人もたくさんいますから心配しなくていいですよ、となぜか慰められた。(笑)

シートに収まり、ペダルを調整、起動を待つ。ぱっと見はガソリン・カートと同じだが、車体はちょっと大きく感じる。シートの左にバッテリー・ボックス、右に似た形状の管制盤ボックスがあり、ガソリン・カートならエンジンのある場所にモーターが置かれている。

「では時間になったので、スタートしましょう」

お兄さんがステアリングの中央やや下にある赤いボタンを押す。

そのまましばらく待っていると、怪訝な顔をしたお兄さん、「もういいですよ?」

あ。そうか。

電動だから、赤いボタンはただのON/OFFスイッチなのか。(笑)

走り出しの感触がわからないので、おそるおそるアクセルを踏むと、踏み込み量にあわせてじわじわと車体が前に進みだす。短いピットレーンを抜け、本コースへ。コース長は約400メートルとのことで、前半はメインストレート、右180度ターン、直線、左180度ターン、直線と、3本の直線をヘアピンでつないだ高速セクション。

後半は右に左にS字U字180度ターンが連続するテクニカル・セクションだから、バック・ストレートはないが雰囲気はもてぎの本コースに似ている。最終コーナーをうまく立ち上がれば、メインストレートの中盤あたりで70キロの最高速度が出るという。ただしコース幅は広いとは言えず、エスケープ・ゾーンも皆無だから、レースよりもタイム・アタックの方が楽しそうだ。

とりあえずアクセルのレスポンス、ブレーキの利き具合、操縦性、タイヤの状態、路面状況などを噛み締めながら1周する。アクセルの感触はモーターだけあってとてもリニア。踏めば踏んだだけ、ダイレクトに応答がある。出力は約7馬力とのことだからガソリンのスポーツ・カートと同等だが、トルクはもっとあるのではないだろうか。

ブレーキの利きも申し分ない。借りた車のタイヤは新しすぎず寿命でもなかったのでグリップにも不安はない。操縦性もいたって素直で、車重が120キロとガソリン・カート(おおむね80キロ前後)よりかなり重いにもかかわらず、重さを感じさせない。さすがトムスが手掛けたマシンだ。

加えてコースの路面が滑らかでいい。専用のカート場といいつつも駐車場を流用しただけのところが多く、車体が跳ねてサングラスがブレまくる酷いカート場もあるが、ここはアスファルトを敷きなおしたのかとても走り心地が良く、タイヤもしっかりグリップする。

初めての車の挙動を探る意味もあって、最初の2周はガソリン・カート式(エンジンの回転数をなるべく落とさないよう、コーナーリング速度重視)で走っていたが、レスポンスが良くトルクフルなモーターにはターマック・ラリー式(後述)の方が合いそうな気がしたので、3周目以降は走り方を変えてみた。

たとえば、メインストレート直後の右ヘアピンは、ガソリン・カートだと目いっぱい左に寄せてから進入、クリッピング・ポイントを深くとりつつも回頭後は外に膨らんでいく、コーナーのRをなるべく大きくするやや先端の尖ったU字ラインをとる。先に予約を取っていたグループ、後から走っていたグループともにそういう走り方だった。

でもEVカートはエンジン回転数の落ち込みによるパワーダウンをあまり気にする必要はなさそうだから、最終コーナーを立ち上がったあとは1コーナーのイン側めがけて最短距離を一直線に走り、クリッピング・ポイント手前でノーズを右に入れつつブレーキを一瞬強く踏み、同時にアクセルも戻す。

すると荷重の抜けた後輪は外側にスライドして一気に車の向きが変わるが、タイヤも路面もしっかりグリップするからスライドはすぐに収まる。車の鼻面が次のコーナーのイン側に向いたら、あとはもうアクセルをべた踏み、カートは最短距離を突進する。V字ライン、といったところだろうか。

ただし直線がほとんど無い後半のテクニカル・セクションでは、速度が乗り過ぎて不必要なブレーキを使ったり、ハーフスピンもしてしまったから、ライン取りは一考、というかその前にレイアウトを覚えなければならないが(笑)、後半がとっちらかっていたにもかかわらず後述のタイムが出たということは、前半の高速セクションはターマック・ラリー式が正解のようだ。

チェッカー・フラッグに片手を上げて応え、ゆっくり一周してピットレーンに戻る。久しぶりのカート、それもEVカートの初体験、楽しかったなあ、とバイザーを上げると、駆け寄って来たお兄さんが笑顔で話しかけてくる。

「お客さん! 無茶苦茶速いじゃないですか!」

なんでもラップタイムは35秒台の前半が出たらしい。褒められたことは素直に嬉しいけれど、私が通っていたカート場の上級者たちなら皆もっと速いタイムを初見で出すだろうから、カート場が新しすぎて(昨年12月にオープンしたばかり)、猛者たちがまだやってきていないだけなんだと思う。(笑)

在来のカート場は、モータースポーツを熟知した車好きが経営しているだけあって、来訪者にルールを徹底したり、コースのレイアウトもトラブルを想定しているところが多い。けれど今回訪れたところは遊園地の延長というか、モータースポーツは専門外のイベント屋も関与しているように感じた。

もちろん、EVカートの出来は素晴らしいし、プロジェクション・マッピングを用いて夜間走行を盛り上げたり、e-スポーツ・コーナーも設けるなど新規参入ならではの試みもあって、時流に即したプロモーションは在来のカート場も(財布が許すのであれば)見習うべきだろう。

でも、重量120キロもの物体(さらに体重も加わる)が時速70キロで走り、万一事故を起こしたらどうなるのか。そのあたりの配慮がまだ足りないように感じた。
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