三沢厚彦の大規模展は過去2回見ている。
最初は、2007年平塚市美術館で見た「ANIMALS+」
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すっかり三沢氏のファンに。
2回目は2017年(なんと10年後だ!)松濤美術館「アニマルハウス:謎の館」
この間も各地で「ANIMALS」シリーズは開催されたが、遠方が多かった。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1963071042&owner_id=2083345
これはさらに面白くて、三沢厚彦がこの松濤美術館を「謎の館」に見立てて、館の主となり、友人アーティストの舟越桂、小林正人、杉戸洋、浅田政志を招いて、会期中においても各自が展示場所を移動したり、制作し続けるという「変幻自在」な展覧会。2回も見に行ってしまった。図録はなくて、最後に出来上がったところで図録制作するという予約販売。買わなかったことを後悔。
三沢氏の作品は、樟の丸太からチェーンソーとノミで掘り出して、最後に油絵具で彩色。大きな作品は、仏像制作の技法・寄木造で作られるという。とにかく力強い、明るい、具象的だがファンタジックの世界が魅力だ。
展示室(7階・8階)の写真撮影は、8階ロビーと8階展示室の一部を除いては不可だが、その他の場所に点在している作品は撮影可。
つまり、三沢厚彦の作品は、展示会場だけでなく、1階のさや堂ホール、4階のつくりかけラボと図書室、5階の常設展示室にもいくつかあって、それが宝探しのようにもなっている。
私は不覚にも図書室の2点を見逃したことに帰宅後気づいた。残念。
作品リストもなく、QRコードで読み込むようになっているが、紙のリストが欲しい人にはくれる(紙のリストを廃止した他の美術館もこうして欲しい)。
平日だったせいか、あるいはイベント(作者滞在制作や作者によるワークショップなど)がない日だったからか、空いていた。
5階の常設展示には、動物関連の展示や三沢氏の友人作家の小林正人氏の特集があって、全館あげて「ANIMALS」で楽しめた。
https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/23-6-10-9-10/
三沢厚彦(みさわあつひこ/1961–)は動物を樟で彫り、油絵具で彩色する「ANIMALS(アニマルズ)」シリーズで知られる日本を代表する彫刻家です。京都で生まれ育ち、幼い頃から仏像や寺社に親しんだ三沢は、東京藝術大学および同大学院で彫刻を学び、1990年代に流木などを寄せ集めて制作された「コロイドトンプ」シリーズで注目を浴びます。人間の想像力への関心から、2000年より始められた「ANIMALS」では、動物のリアリティを追求していく革新的な造形が高く評価され、全国各地で多くの人々を虜にしてきました。
「三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions(アニマルズ/マルチ・ディメンションズ)」は、三沢による千葉県初となる個展です。本展では「多次元」をテーマに、大谷幸夫の設計による千葉市美術館すべてが展示会場となります。そこに棲んでいたかのように親しみやすく、時にどう猛な動物たちに、来場者はさまざまな場所で遭遇することでしょう。この場所だけでしか体験できないサイト・スペシフィックな展示方法もまた、作品と空間の関係への作家独自の思考を示しています。1990年代の初期未発表作から最新作まで、200点を超える彫刻と絵画により、当館の建築物にアプローチしていきます。
21世紀に入り、木彫による具象彫刻、さらには現代アートの分野を牽引してきた三沢は、近年では空想上の生き物である麒麟やキメラといった複数の動物のイメージを組み合わせる表現に発展し、大型の木彫を精力的に制作しています。時空を軽やかに飛び越え、現代の私たちの前にあらわれるキメラたちは、その眼差しでいまの世界を見つめ、何を語るのでしょうか。会期中には、作家の滞在制作も予定されています。三沢のキメラ的思想によって、生が吹き込まれていく本展をぜひお楽しみ下さい。
まずは美術館ビル正面入り口(さや堂ホール入り口)に、展示会場入り口の同じ《ライオン(白)》(こちらはブロンズ)がお出迎え。
ネオ・ルネサンス様式の旧川崎銀行千葉支店を保存したさや堂ホールには大きな《ペガサス》がよく似合う。
その他にも舟越桂《青い体を船がゆく》、杉戸洋《おほしさま》
浅田政志《鷺の恩返し》
小林正人《金華山号》
あれ?このメンバーは2017年松濤美術館「アニマルハウス:謎の館」の招待人たちではないか。なかなかの遊び心。
8階入場口には、パンダもクマも。それからキメラの油彩画も。
撮影不可の作品では、ライオン、ゾウ、バク、カモシカ、サイ、ヘラジカ、サメ、ワニなどどっしりと大きなものもあれば、トリ、リス、カエル、ヤモリなど可愛いものもある。
クマの部屋から撮影可だ。
どのコもがっしりとしていて、足が太く大きく、爪が長く鋭く、大地を踏みしめていて、圧倒する。規則正しいノミの跡が樟の温かみとほのかないい香りを醸し出す。明るい彩色で、特に目は鋭く見えながらも、茶目っ気がある。里山に出没する獰猛な野獣の面と、ぬいぐるみやキャラクターになる愛らしい面が彼の彫刻に同居していて、我々が持つクマのイメージを体現している。
かわいい小型のセラミックと鮮やかな色彩の油絵もまた楽しい。
特に絵は、画面四隅いっぱいまで描かれていて、絵本にしたらどんなにか楽しいだろうとおもう(実際、絵本も作られていた…!)
ロビーにあった《アニマルハウス カカオの森》は、2017年松濤美術館の展示で公開制作していたもの、その時は三沢氏がチーターと黒猫を描いていて、小林正人氏が空飛ぶチーター?を描いていたっけ。その時の実況中継日記がこちら。渋谷で描いていた作品の完成品を千葉で見るとはね、面白い。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1963950641&owner_id=2083345
7階は撮影不可で、流木などを集めて制作された「コロイドトンプ」シリーズは1990年代の初期作品だ。流木とともに海岸に流れついたゴミなどを集めたところなどは、時代っぽい。
次は「中庭部屋」と称した展示室で、公開制作が行われる。
写真はネットから。
この部屋には、三沢氏の作品以外にも、舟越桂、杉戸洋、小林正人、浅田政志をはじめ、須田悦弘、森山大道、ディヴィット・ホックニー、大竹伸郎、ハンス・フィッシャー(こねこのぴっち)などがさりげなく展示してあり、音楽も流れていて、まさにアトリエだ。須田の《朝顔》は見つけたのに《雑草》は見落とした、悔し。
アトリエに散らばる端材を構成し、絵の具でカラフルに彩った「Strut」シリーズは、4階で行われている参加型の「つくりかけラボ」に通じる作品だ。
最後の展示室は最新作《キメラ》
写真はネットから
顔はライオン、体は豹、鹿の角を持ち、尻尾は蛇、フェニックスの翼を持つ。
翼の間を覗いてみたらアマビエさんがいた!2足立ちのキメラの背中には美女の顔。とにかくこれだけ大きいと迫力だ。
次に千葉市美コレクション選。
関連展示では、「浜口陽三 メゾチントのちいさないきものたち」と「描かれた動物たち」
これらもかなりの見応えありで、しかも三沢氏の小さな作品が隠れている。
友情出演の小林正人氏は特集で「空戦・絵画の子」写真を撮り損ねたがこちも良かった。写真はネットから
つくりかけラボ「三沢厚彦コネクションズ空洞をうめる」では、廃材を利用して子供たちが工作。
ここにも三沢氏本人のこの中にも三沢氏の作品と「コネクションズー様々な交差展ー」に参加した数人のアーティストの作品が隠れていた。
まさにタイトル通りの「Multi-Dimensions」多次元展示、見ごたえたっぷりの大個展。
9月10日まで。
載せきれなかった写真、アルバムあります。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120845012&owner_id=2083345
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