■プリゴジン氏は大統領選挙のダークホース!?■
順当にいけばだが、2024年の3月、ロシアでは大統領選挙が実施される。戦時下だが、今のところ変更の予定は言及されていない。
さて、その大統領選挙だが、ここへ来てとんでもない情報が飛び込んで来た。ISW(戦争研究所;アメリカ)などによれば、民間軍事会社のワグネルの創設者のエフゲニー・プリコジンが来年3月に実施される大統領選に立候補する公算が高くなって来たというのだ。
プリコジン氏は貧しい家庭に生まれ、1979年11月にレニングラードで窃盗罪で執行猶予付きの判決を受けた。また、1981年には強盗、詐欺、未成年者を犯罪に巻き込んだとして12年の懲役刑を宣告され、刑期の全う後は様々な事業を展開、2003年頃に高級レストランを設立、プーチン大統領の行きつけのお店となり、関係を築いた。
このようなバックグラウンドの人間ゆえ、庶民にも彼の言葉がよく響くようだ。実際5月31日、ロシアの世論調査機関のレバダ・センターが最も信頼できる政治家を調査したところ、
プーチン大統領 42%
ミシュスキン首相 18%
ラブロフ外相 14%
ショイグ国防相 11%
という結果だった。
多くの人はなぜプーチン大統領の支持率がこれほど高いのか不思議に思うかもしれない。
その背景には烏ロ戦争に駆り出された兵士にまだまだサンクトペテルブルク、モスクワ、エカテリンブルクといった大都市の住民の割合が少ないからだ。
しかし問題はこれからだ。5位はメドベージェフ元大統領の4%で、何とプリコジン氏も同率5位にランクインしたである。政治家の経験がない人間が元大統領と世論調査で並ぶのは極めて異例な事だ。
ウクライナ情勢は混迷を深めつつある。烏ロ両国が互いにやらかしたと批判し合っている
カホフカダム決壊では、駐留するロシア軍兵士が飲料水を確保出来ず、ドニエプル川の汚染された水をやむなく使用したところ、2千人もコレラに感染し、数名が死亡したという。報道を見た時、目を疑った。コロナの間違いではないかと。しかしそこには紛れもなく、欧州とウクライナ系のメディアとはどこもコレラと報じられていたのだ。開発国の軍隊ではあるまいし、世界第二位の軍事大国の軍隊がコレラに感染したのだから驚く。ロシア軍の実力とやらはこの程度だったのか。
このような情勢下、選挙が実施されても確かに幾ら目下赤丸急上昇中とはいえ、プリコジンが大統領になるとは現状では思えない。しかしプーチン大統領は再選が出来るのだろうか。再選出来ない、出馬しない可能性は否定できない。
そうであれば、厳重に管理されたクレムリンの宮殿から出なければならず、政治的な混乱が起きるかもしれない。何しろ欧米主要国では今やプーチン大統領は「プーチン容疑者」なのだ。場合によっては恩賞に目が眩んでプーチン容疑者をひっ捕らえて差し出す者が出て来たっておかしくはない。大義も正義もない、特別軍事作戦そのものが頓挫し、政治的不透明感が高まるだろう。
■ロシア解体か、それとも分割か、中国の経済属国か■
世界史を紐解けば、帝国が解体されるまで、時間が掛かる。大日本帝国が今の面積になってしまうまでは世界史では早い方かもしれない。50年、100年掛かったこともある。一時は東欧最大の面積を誇ったポーランドも国家自体が消滅したことすらある。
ロシアがその例外として逃れられるとは思えない。
以前も述べたが、ロシアはロシア帝国建国以来、戦いに明け暮れて来た。偏にロシアは寒過ぎて、広過ぎる国ゆえ、緩衝地帯と不凍港を求め、東が駄目ならば西に、またその逆も軍を動かしてきた。獲得した領土の中には今の基準では整合性も正当な理由も見当たらない地域もある。例えば沿海州は当時の清がまだ正式に領土と認めておらず、アロー戦争で英仏に対して劣勢だった事に付け込み、1860年の北京条約で半ば恫喝して獲得したようなものだ。
こうして考えると、なぜロシアが北方領土を返還出来なかったかが見えて来る。
歴代のロシアの政権が獲得した領土には正当性がないものが少なからずあるからだ。本音ではオホーツク海に散らばる小さな島々なんぞどうでも良いのだが、ロシアが感情では日本をどう思っているかは別として、うっかり日本に返還してしまうと、他の領土問題に火が付きかねないからだろう。
それでも烏ロ戦争前まではロシアの軍事力は世界第二位と評されていた事もあり、問題が顕在化しないよう、抑えつけることは出来ていた。
しかしロシアは烏ロ戦争で今や「手負いの熊」のような状態だ。たとえ戦争が終結し、政治的混乱が仮に収まったにせよ、頼みの軍事力は核兵器ぐらいしかない。ロシアの衰退に乗じる国、地域が続出する可能性は高い。領土問題が各地で噴出、ロシア連邦から脱退する国が続出、解体か、中国の経済属国になり、落ちぶれて分割されるシナリオもあり得るだろう。
日本はこの好機を活かし、ロシア連邦に属す共和国群と経済連携協定を目指すべきではないか。座していれば、チャイナが遠からず触手を伸ばしてくるのは目に見えている。
最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。(了)
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