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2022年08月01日10:32

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【バレエ】清里フィールドバレエ「ドン・キホーテ」(初日)

mixiのウクライナ関連ニュースのレスには、ロシアの幼稚なプロパガンダにあっさり騙されてしまう脳味噌欠乏症患者や、逆張りするオレかっけーな痛いナルシストが、なぜか他のニュース・サイトよりも多い。しかも軍事のことはよく知らないのに、詳しいつもりでいるし。よそでは相手にしてもらえないから、同病相憐れむ、吹き溜まってしまったのだろうか。


清里のフィールドバレエが開幕した。
https://www.moeginomura.co.jp/blog/23826/

去年か一昨年は、当時頭抜けて感染者の多かった東京在住者に限りチケットの返金に応じる(意訳:こっちくんな)という対応をしていたので、今年はどうするのだろうと思っていたら、前日になっても何のアナウンスもない。しかも、もう時間も無いことだしと事務局に電話をかけたところ、機器が故障しているのかつながらない(村内の電信柱に雷が落ちて一帯が停電、電話回線も不通となり、サイトの更新もできなくなってしまったということを後で知った)。

フィールドバレエは屋外での催しだから気象の影響を受けやすく、毎年雨雲の動向をはらはらしながら見守っていたが(私も降雨中止の経験がある)、このようなケースは初めてだった。もっとも、スタッフの方が観客以上に困惑していたことだろう。ダンサーたちはわりと直前に現地入りしているようだから全体合わせの時間が取れなくなるし、音響さんと照明さんは仕上げの確認もできない。

停電は開演日前日の昼に復旧したが、トラブルはそれだけではなかった。

公演期間中は毎回開演前の夕方に、ゲネプロというよりは最終調整のような稽古があり、これを眺めるのもフィールドバレエの楽しみのひとつ。今回もニーナさんを発見して喜んだり、群舞、練習ではマスクを着けるんだと感心していると(観覧者への要望は、検温、消毒、マスク着用の感染症基本対策のみだった)、突然ダンサーのひとりが転倒、自力では立つこともできなくなってしまった。スタッフや同僚に抱えられて舞台袖に引っ込むも、大道具越しに「痛い!」という声まで聞こえてくる。

残念ながら、その後彼女は初日を迎えることなく救急車で運ばれていってしまった。この日のためにトレーニングを重ねていたであろうし、劇場とは違う環境での舞台を楽しみにしているダンサーもいるというから気の毒でならない。大事ありませんように。

その後も稽古は続き、同僚たちの何人かは転倒箇所の床をチェックしていた。もし床になんらかの不具合があれば、同じ場所で他のダンサーが転倒する恐れもある。


着替えと雨具一式を用意するのがフィールドバレエを観覧する際の事前儀式だが、幸いにもそれらが活躍することはなかった。以前はてるてる坊主に頼ったこともあるがそれも昔、今は雨雲の動向をネットで簡単に知ることができるので、早目に移動して車などで待機できるのはありがたい。

昼間は村内を散策していたが、夏休みとはいえ平日はいつもこの程度なのか、それともコロナの影響なのか、週末の公演しか知らなかった身としては意外に思えるほど空いていた。屋外とはいえ、観光客には気の緩んだ者が多いから、ちょっと安心した。

私自身については、父のワクチン接種を手伝ったところ、余ってるから一緒にどうぞ、と早々に4回目を打ってもらえたし、この日のために仕事はすべてテレワークにして一週間ほぼ引きこもって過ごした。アルコールを充填したアトマイザーと予備のマスクは必携、移動はもちろん頼りになる相棒。


残照の中、公演が始まる。今年の演目は「ドンQ」。ガリムーリンさんと成澤さんによる清里フィールドバレエ版で、2幕、約2時間(20分の休憩を含む)。

プロローグ、街の喧騒、ガマーシュとのやりとり、駆け落ちまでが1幕で、パンサの胴上げはあるが狂言自殺シーンは1幕、2幕どちらにも無い。キホーテを「奇人」と呼称したり、ガマーシュの頭髪は健在(その代わり帽子を取ると黄色のリボンを付けている)など、昨今の世情にいろいろ配慮されている。

2幕はロマの野営地、夢の場、結婚式(GPDD)の3場構成。ストーリーは流す感じで、ほぼディベルティスマン。途中から雲が広がり星空は見られなかったが、終盤には盛大に花火も打ち上げられる。公式サイトや私のつぶやき写真のように、舞台と観客席の周囲は樹木に囲まれ、舞台背後の直近には大きな木もあるから、リアル夢の場を観るだけでもここに来た価値がある。

以前、フィールドバレエを観るならダンサーたちが慣れてきた後半の方が良い、と記したにもかかわらず初日に行ったのは、ニーナさんの弟子がゲストとして主演するから。

若いバレエ・ファンやダンサーたちは、ニーナさんをどういう人と認識しているのか機会があれば聞いてみたいが、それはともかく、ジョージアのバレエ団のレベルは、少なくとも10年前くらいは、元ソ連圏の国とはいえ高いとは言えなかった。

しかしニーナさんがジョージアの芸監になって久しく、ボリショイの名花と讃えられたレジェンド級ダンサーの彼女が、わざわざ日本へ連れてこようと思った人材だ。そして演目もニーナさんの18番とくれば、期待するなと言う方が無理な話。

ニノ・サマダシヴィリさんのプロフィールを知る前は、先日のパンチェンコさんやミクルーハさんのような、芸監注目の若手なのだろうと勝手に想像していた。しかし実際は2011年に学校を卒業した中堅。プログラムのプロフィール紹介には2016年にリーディング・ソリストに昇格したとあり、ニーナさんのコメント中にはプリンシパルとあるから、その後さらに昇格したのだろう。

夕方の稽古は彼女からだったので、じっくり拝ませてもらったところ、下手ではないけれど、これはというインパクトが感じられない。ニーナさんからも次々とダメ出しされているし。もし体調が悪かったり、日本の蒸し暑い夏にあてられて本領を発揮できなかったのでなければ、残念ながらジョージア・バレエの力量はまだまだのようだ。見た目は美人でスタイルも良く、いかにもな雰囲気だが、踊りは雑で、本番の32フェッテでは何度もポワント落ちしていた。周囲のシャンブルウェストのダンサーには、もっと上手い人が何人もいた。

期待していた分残念ではあったけれど、フィールドバレエのゲストは玉石混淆なので驚きはなかった。相方の山本さんも申し訳ないけれど旬の過ぎてしまった人だから、せっかくゲストとして招くのであれば、今後はもう少し面子を吟味したほうがいい。

フィールドバレエ、知名度はそこそこあると思うが、実際に足を運ぶバレエ・ファンはまだまだ少ない。場所が場所なだけに、それに見合った魅力のあるエサがないと、都市部のバレエ・ファンは腰を上げないからだ。逆にエサが十分魅力的であれば人は集まり(小野さんたちの回がそれを証明している)、一度フィールドバレエを体験してしまえばリピーターになる確率は高い。

今なら、ニーナさんの顔を立ててキトリはニノさんでいくとして、相方にはシェフチェンコのダンサーを考えても良かったかもしれない。村のオルゴール博物館ではウクライナの国家を演奏するくらいだから、萌木の村はロシアの蛮行に反対の立場のようだし、ジョージアもロシアの侵略を受けている同じ立場の国。そのあたりをアピールしつつ日本にいるジョージア人とウクライナから避難してきた人たちを招待すれば、マスコミも食いついてくることだろう。

エスパーダとボレロは江本さんで、彼の場合は配役を一考すべきだろう。少なくともエスパーダが似合う人ではない。ムレタの扱いも周囲の闘牛士たちの方が上手かった。名前はわからないが、闘牛士の中には目を引く踊りをする体格の良い人もいたから、彼を配した方が舞台も引き締まっただろう。あるいは小野さんつながりで、中家さんでも来てくれないだろうか。

良いなと思ったのは、キトリの友人と街の踊り子、QP、そして夢の場の群舞。友人のひとり石原さんとQPの川口さんは、別の日にキトリにも配役されている実力者。上手いわけだ。(笑) 森の女王伊藤さんも悪くはなかったが、背の高いニノさんの方が女王に見えてしまうし、群舞の出来が初日にもかかわらず思いのほか良かったので、どうしても埋もれ気味になってしまう。

もうひとり特記したいのが、キトリパパの店で働く男性店員(名前は不明)。踊る役ではなく、キトリパパが演じたり、子供を配するバレエ団もある。今回は全般にダンサーたちの演技が薄味だったから、そのコミカルな仕草は舞台の盛り上げに一役買っていた。

フィールドバレエ版は、フルバージョン「ドンQ」と比べると時間が短く、ガリムーリンさんはロシアの人でもあるから、細かいところはみんなもう知ってるよね的な演出になっている。だから感情表現は大げさなくらいにしないと、見慣れていない人には物語が伝わりにくい。

今回は初日ということでダンサーたちはまだ緊張していたのか、掛け合いのタイミングもいまひとつだったし、「ドンQ」にしては勢いが物足りない、盛り上がりに欠ける舞台だった。本来ならそこを拍手などでカバーするのがスタッフや非番のダンサーの役目だが、なぜかそれもない。幸いなことに少数ながらも見慣れた観客がいて拍手をリードしてくれたから、観客席はお通夜にならずに済んだが、そこはスタッフ側の今後の課題だろう。


萌木の村には、トナカイのほかに木製の馬がいる。そのうちの一頭が(車輪を装着して)プロローグに登場、甲冑をまとったキホーテは颯爽と木馬にまたがり、パンサに引かれて退場する。街にやってくる時もその姿だ。(笑) こういうローカルな改訂は観ていて楽しい。

全公演終了後は、各回から選りすぐりの場面を配信の予定だという。龍神さま、19〜21時の間は、どうか雨はご容赦ください。ダンサーたちも怪我をすることなく、踊りきれますように。
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