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2021年06月13日21:59

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神宮スズメの独り言2021春〜63〜全国を制するために

六大学や東都の代表校はどこが出ようが出場する以上は優勝候補であり、また当然のように優勝を狙ってくる。組み合わせが決まった時から決勝戦までを見据えて投手ローテをある程度構想するはずだ。そしてもちろん慶應も・・・・

対する福井工大のこれまでの43回目の出場にして初めての決勝進出。ある程度の構想は持っていたとしても準々決勝は17−8という乱打戦。5回コールドのチャンスを逃し、結局9回まで戦って6人の投手を使った。1日置いての昨日の準決勝は初回に1点を先制したものの息詰まる投手戦で8回に1点を追加して福井工大は勝利した。祝原君、立石君の継投で5安打完封という渾身の勝利だったが決勝戦まで見据えた投手起用ではもうなくなっていた。

福井工大の今日の先発は南大河君。行けるところまでいって祝原君や立石君につなぐという継投策をイメージしていたのだろう。

先攻の慶應の先頭広瀬君の打球はジャストミートしたがショートライナー。渡部遼人君が1塁ゴロに倒れた後、下山君は三遊間を襲う強烈な打球を放つ。福井工大の3塁手南準斗君はこの抜けるかという打球にグラブを伸ばして捕球。球場がどよめくような素晴らしいプレーだったが、1回転して送球態勢に入ったところでボールを落とした。もし打球がそのままレフトに抜けていたり、グラブをはじかれたりしたら記録はヒットだっただろうが、3塁手のエラーと記録された。

この3塁手にとってはファインプレーをしたばかりにエラーとなって気の毒な気もしたが、走者を許したことには変わりはない。そして打席には正木君を迎える。2回戦と準々決勝は無安打。しかし準決勝で放った今大会初安打がレフトへの本塁打。その後もタイムリーを打っている。

正木君の今日の第1打席での打球は乾いた音を残してセンターバックスクリーンの左に吸い込まれた。彼の打球音を言葉で表現するのは難しいが、少なくとも「カーン」とか「キーン」と言うものではない。あえて言えば「バシッ」だ。かつて王貞治さんの本塁打はバットに乗せてボールを運ぶという表現をされたが、この正木君の打球はボールを叩き潰すという感じ。だからこそ彼の本塁打は打った瞬間わかる。ある意味プロ向きの選手なんだろうとも思う。

だが、福井工大の南大河君も負けてはいない。勢いづく慶應は続く北村君・福井君の連打で2死1・3塁と再びチャンスを作るが後続を断つと、2回は三者凡退、3回は1死から下山君を歩かせるも正木君を併殺にとったのだ。慶應の主砲に打たれはしたが、その後の慶應の勢いはきちんと断った。


慶應の先発は準々決勝で勝ち投手となった増居君。リーグ戦においても森田君との2枚看板を背負い勝ち星を挙げてきた。

福井工大の上位打線はこの大会でも屈指の強力打線だ。先頭の佐藤君は内野ゴロ、木村君は三振、長峯君は四球、尾堂君はライト前安打、田中君は外野フライで0点だった。これを増居君はどうとらえただろうか。この記録だけを見れば1安打、1四球で無失点だが、この1イニングで増居君は30球を投じている。安打を打とうが三振に倒れようがファウルで粘って簡単にはアウトにならない。これが後になって効いてくる。これが福井工大の戦い方だ。

だが、慶應は4回表北村君が2塁打で出て送りバントが決まると、福井工大は投手を替えた。南君は正木君にこそ本塁打を打たれたが踏ん張っていただけにもう少し投げさせてもと思ったがそれは監督の決めることだ。

替わってマウンドに立ったのは昨日の準決勝の先発投手祝原君。福井工大はもう点はやれないという状況に自ら持ち込んでいったように思えた。そして橋本典之君は外野犠飛を打って1点追加。2死無走者となった。この1失点までは福井工大にとって想定内だったはずだ。だが・・・・

次の新見君にはストレートの四球。朝日君はレフト線に落ちる安打に果敢に2塁を奪って2死2・3塁。ここで福井工大は祝原君から立石君に替えた。これで福井工大は主力級の投手は使い切った形となる。そして慶應の廣瀬君の打球は強烈な3塁ゴロ。捕球した3塁手は態勢を崩したまま1塁へ送球、これがライト側へ逸れて後逸エラーとなった。

ここには2つのエラーがある。送球エラーなら3塁走者が帰るだけ。だが1塁手も捕球をできる送球でもないのに1塁ベースから離れることなく捕球しようとして後逸。2塁走者も生還した。悪送球を見て1塁アウトをあきらめてベースを離れて安全捕球にいけば2塁走者は還らなかった。

5回にも慶應は橋本典之君の犠飛で1点追加したが、その裏の福井工大は四球から佐藤君が右中間に2塁打を放ち1点を返すと佐藤君は犠飛で3塁に進むと長峯君のタイムリーで生還した。6−2。

増居君はこの5回まで被安打は3だ。だが1回は四球の後に安打、4回は四球の後に連続四球、そして5回は四球の後に2塁打を打たれ3塁に進められると再び安打を浴びた。

増居君は四球で崩れる要素が5回までに3度あった。増居君が与えた四球は4つだ。そのうち2つの四球の後は安打、残りの1つの後には連続四球を与えた。5回のうち、3つの四球の後は続けて走者を出している福井工大。ここを攻め切れば試合の流れは変わったのだろうが・・・

ヒットなくしても点を取れるのが野球だ。結局増居君は6回を投げ被安打3、自責点2で勝ち投手のなるのだが5イニングのうち3回も二人の走者を出した福井工大。攻め方によってはもう少しチャンスが増えたようにも思う。

慶應は6回表に1死1・2塁から正木君、北村君の連続タイムリーで2点を追加すると7回からは生井君が1四球無安打で2イニングを抑える。そして9回表には慶應が2死無走者から2塁打と2つの四球で満塁として渡辺遼人君のタイムリーで2点、下山君の本塁打でさらに3点を加え、最後は橋本達也君が3者三振を奪って試合は終了した。

最後は地力の違いが出た。福井工大は最初に述べたとおり43回目の出場であるが、さらに付け加えると10大会連続の出場だ。翻って六大学や東都であれば10大会連続などありえない。いや2大会連続だってものすごいことだ。それだけリーグの実力がせめぎあっている中で出場してくるチームとはやはりレベルが違ったとしか言いようがない。

左打者が放つレフト線へのポテンヒット。これを処理する左翼手の動きがあまりに遅い。打者走者はあわよくば2塁を狙っているのに、捕球する野手はワンバウンドした打球をゆっくり捕球してゆったりとしたボールを内野陣に返す。慶應はこれで2つの2塁打を得た。それはその選手のレベルが低いということではない。そんな環境で試合をしていないということだけだ。

そのような部分が垣間見えたこの決勝戦。選手たちの実力差といえばこの得点差ほどではまったくない。だが、本気で優勝を狙った投手ローテを組んできたか、ほんの細かいプレーを常日頃から緊張感をもってやっているリーグかどうか。ここの差だった。

はっきり言えばこれは選手個々の資質の違いではない。リーグのレベルによって勝ててしまえばそれでいいとするかどうかだ。だが、今日福井工大は慶應にぼろ負けした。それは選手の個々の力によるぼろ負けではない。準備の部分。細かい心配りの部分。取り組み姿勢の部分。集中力の部分。いろいろあるはずだ。

今後この決勝の経験をどう活かすか。試合後の挨拶を終えて慶應の選手たちが雄たけびを上げる中、福井工大の選手たちはベンチ前に集まってミーティングをやっていた。もちろん何を話していたかなどは分からない。だがこの大会の決勝における最多失点の13、最多得点差の11。この記録はこの第70回大会において刻まれた不名誉な記録ではあるが、これを機に彼らの目標は変わったはずだ。

「リーグを制すればいい」から「全国を制するために」へ・・・・




2021年6月13日 第70回全日本大学選手権 決勝(於 明治神宮野球場)
慶應義塾大
200 312 005 = 13
000 020 000 = 2
福井工業大

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