原題は「La résistance de l'air」です。フランス語を知らない僕でも、これが“空気抵抗”だろうと推測できました。とはいえ、映画の中で空気抵抗を計算するシーンは出できません。そのあたりはすべて主人公のアタマの中で正確に計算されているから、正確な射撃ができるということになっています。というか、そう納得しました。
物語は、射撃競技に才能を見せるサラリーマンのヴァンサン(レダ・カテブ)ですが、妻デルフィーヌ(リュディヴィーヌ・ササニエ)が歯科医と結婚した妹夫婦の生活と競い合い、自宅を建てようとします。亭主の稼ぎが少ないため義弟に借金するとまで言いだす。普通なら“あんさん、別れなはれ”で見るのを止める僕ですが、射撃でフランス代表も夢ではないというヴァンサンの、冴えない風貌から、“この嫁を逃すなよ”と思ってしまいました。
しかしまぁなんですねぇ(by桂小枝、覚えてる？)、サニエちゃんも今年で41歳。撮影時は35歳だけど、小学生の娘がいても当然です。なにしろ「スイミング・プール」でシャーロット・ランプリングを惑わせた小娘ですよ。「ジャック・メスリーヌ」なんていう作品もありました。この女と結婚するのなら、ヤバい仕事でもやらんと収まらんでしょう。
しかしながらヴァンサンはそこまで思いが至らなかった。せいぜいカーニバルの射的で、娘にクマのぬいぐるみを取ってやれば満足という小市民だったわけです。そして、たかが映画(byヒッチコック)ですから、ヤバい仕事に手を出してでも、娘と嫁を手放してはいかんのです。面倒を見なくちゃいけなくなる老いた父親が、無一文になっても女を買うというあたり、痛烈でした。
なにしろこのエロじじいを、チェッキー・カリョが演じてますねん。つい最近「ニキータ」を見直したとこですねん。あのおっさん、ニキータに逃げられてからというもの女狂いしてはったんでっしゃろ。よう分かりま。僕の妄想世界とぴったり一致しますわ。←こういう一致点を、自慢げに語っちゃいけないな。
つまり、射撃の名手が殺し屋としてスカウトされるわけですが、その話がまとまるまで30分かかるわけです。100分に満たない上映時間ですから、邦題に至るまでが長すぎる。でも原題しか知らなかったら、あの嫁とのぎくしゃくは当然(僕だけ？)ですから、これでええ。とはいえ、たかが映画なんだから殺し屋に転職するのは５分で描いてもいいとも思う(これも僕だけ？)。
ヴァンサンの得意種目が“300”で、これは300メートルの距離を狙撃(射撃やで)する競技だそうです。でもって、金に目がくらんだヴァンサンは仕事を引き受け、見事に成し遂げます。ところが素人の悲しさ、相手が女だと分かると仕事しないんです。ヴァンサン役のレダ・カテブがアルジェリア男優とフランス人看護師の息子だそうで、その小市民的風貌に説得力がありました。
そして父の男手一つで育てられたというヴァンサンの不幸な境遇も、スナイパーへの転職(単に副業ですけど)を後押しします。そうやって苦労して手にした金を、どスケベ親父(Sorry my French.)が娼婦に遣ってしまうあたりのやるせなさがいい。←映画としての話でっせ。実際にそうだったら僕は父親を狙撃してしまうな。チェッキー・カリョを撃ち殺したら、フランス政府から勲章がもらえるかも(全部妄想やで、本気にしなはんなや)。
とりあえず、父親の射撃の腕前に感激した娘が、“あたしも銃を撃ちたい”と喜色満面に語る場面が白眉でした。「15ミニッツ・ウォー」で興味を持った監督さんですが、この監督さんなかなかだと思います。この作品を5.8とするimdbの投票者たちは、あまりにも“常識人”すぎると思う。腹が立ったから僕は８点を与えておきました。これはやり過ぎですよ。本当なら７点がいいところ。
とりあえず、「ニキータ」の泣きながら狙撃するシーンが好きな人なら、このおっさん(じゃないヴァンサン)の勝手気ままな副業を是とするはず。ええんです、空気抵抗の話なんか。あの程度の嫁のわがままは、相手がサニエちゃんなら僕は許す。って、実生活では僕がわがままのし放題なんですけどね。たかが映画じゃないですか。勝手気ままな妄想を満たしてもらえればええんです。自宅建築の料金が滞納となり、請負業者が取り壊そうとするとヴァンサンが殴りつけ、“金は十分に払ってやる”と札びらでほっぺたをひっぱたくわけです、それが映画や。
ただし、よい子の皆さんは、決して真似をしないように。僕があと100歳若かったら、スナイパーになりたいと思いますけどね。サニエちゃんのためなら、え〜んやこ〜らァ。←これは本音。写真３は、サニエちゃん(赤)にまで色目を使うエロじじいのカリョ。
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