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2020年02月16日09:30

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源氏物語手鑑

80枚の全点展示。

華麗なる源氏絵
@和泉市久保惣記念美術館
フォト

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400年前に作られた折帖形式の源氏絵です。
源氏54帖から80場面が選ばれています。
元々は1ページの上部に絵、下部に対の詞書となっていましたが今は上下逆。
平成26年重要文化財に指定されたのを機会に4年かけた修理を行い、終了記念に
いま全点公開されています。

学芸員さんの展示解説をききました。
以下、概略のメモ。

【絵の特徴】

特徴は、まず80枚全て揃っていて保存もよいことです。

今回修理をしたといっても袋貼りとなって浮いていたのを直したりといった台紙部分の取替は行ったものの
絵と詞書はそのままです。
400年前と思えない鮮やかさ、画材がよかったのでしょう。

絵について。
寸法はほぼ皆同じ(19.8*29cm)土佐派による大和絵技法。
建物は吹き抜け屋台、小さな顔にいわゆるひき目かぎ鼻、口は赤い点ですが
現在でも好ましく思われる表現です。
これは大事なことで、だからこそ代々の所有者が大切にしてきたのでしょう。

作者は堺在住の土佐光吉。
依頼者は石川忠総(ただふさ)。
武将にも教養が求められる時代でした。
完成は1612年。
ちなみに描いたとき光吉は73歳でした。
大変細かい表現が自然光の下で大変だったことを示すように(虫?)眼鏡を注文した記録もあります。

また、修理の過程で色の指示なども見つかりました。

【詞書の特徴】

筆者は18人。
("蔦の細道"の烏丸光廣、三条西実条など有名どころがずらり)

書きぶりが各々全く違うのも見所です。
(個人的には冷泉為満のたっぷりしたものが好みでした)

同じ筆者が隣り合わない、ということはプロデューサーがいたと思われます。
それが中院通村。
筆者の一人である山科言緒(ときお)の日記『言緒卿記』によれば、7月30日中院に依頼された詞書を完成させて渡した旨の記載があり
花散里/若菜三/橋姫二 という場面も現存作品と一致します。
こうした作歴が明らかなことも本作が重要文化財の指定される決め手となりました。

一方料紙ですが。
こちらもひとつとして同じものはありません。
抽象的なグラフィカルなものあり、風景を描いたものあり。
ただし具体的な絵柄は必ずしも文字内容とは一致しません。
黒い部分は銀です。制作当時は金銀きらびやかであったことでしょう。

大きさも色々です。
一番横長なのは《竹河二》。
今回の修理で完全に端まで見えるようになりました。

【具体的な個別説明】

◆紅葉賀
源氏が参内前に幼い若紫を訪ねると雛遊びをしている場面。
唯一、30倍に拡大した額が展示されています。
旧蹴上のホテルに飾られていた10枚のひとつ。
拡大してもまだ細かい。
雛人形の顔など実物は米粒大でしょうに。
ゆるがない格子や御簾の線にも驚かされます。

◆薄雲一
明石の上が二条院に引き取られる明石の姫君を引き渡す場面。
背景は雪景色で池の端は凍りかけているのが見えます。
女房が差し出す蒔絵の箱蓋に乗っている小物まで本文に忠実。

◆野分
台風のあと秋好む中宮の住まいを見舞う夕霧が目にした光景。
女童が撫子を手にしたり虫籠に露をやったりというのは本文に忠実。

◆若菜一
本展チラシメインビジュアル。
久保惣記念美術館が源氏絵を出すのは毎年春であるため
このような正月の場面は出しません。珍しい機会です。
手前。いったんきものを描いて、その上に御簾の平行線を細密に引いています。

◆横笛二

修理が終わって早々にメトロポリタンに貸しました。
夕霧の夢の中に柏木が出て来て笛を子に伝えるよう頼む場面。
柏木の着物の模様が詳細に描かれ、背景がはっきり透けて見えています。
ぼかすのでなくこのように表現するのは他に例がありません。

◆椎ヶ本
詞書部分、料紙は菊に流水模様ですが上下が逆さまです。
珍しく間違えたものと思われます。

【その他の展示物】



◆源氏物語図貼交屏風(江戸時代)
土佐派による6曲1双屏風。
奇数面に3、偶数面に2ずつ絵と詞書を貼って28野分からいきなり手習/夢浮橋で終わる。

◆源氏物語手鑑 旧帖・箱
展示するのは2回目だそう。
帖には剥がしたあとが。
(現在の一枚ずつのかたちになる前を偲ばれます)

◆源氏物語柏木図扇面
絵は土佐光起、詞書は飛鳥井雅章。新収蔵。
臥せる柏木と襖を隔てて祈祷の手配をする到仕大臣が両方描かれているのが珍しい。
扇面という変形の画面に建物を描くのは構図が難しいが成功している例。

◆合貝
源氏物語絵は貝合わせの題に選ばれることも多いですね。
(詳しい遊び方の説明もありました。
360個フルセットのものもあるそうですね)

◆蒔絵 扇面散文八角重箱
5段の重箱ですが
・台があり
・八角形
と貝桶を模していて使用感がありません。
模様の扇は開きかたも模様も様々で大変美しい。


3月22日まで。
2月18日から後期展示
(後期展示には《若紫》が出ます。
なかなかレアな場面が選ばれているそうなので
それもみたいものです)
http://www.ikm-art.jp/tenrankai/2019/03/post-15.html

***

久保惣記念美術館はお庭もきれいです。
今は黄梅と垂れ梅が咲いていました。
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