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2020年02月08日08:36

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インポッシブル・アーキテクチャー

これはもう、ひとつのジャンルになっているような。

インポッシブル・アーキテクチャー
〜建築家たちの夢〜
@国立国際美術館
フォト



ようやく関西に巡回してきました。

完成しなかった、とはいってもunbuildではなくimpossible。
(ではimpossible paintingsというのもアリなのか?)

誰よりも早く未来を見ることができるのが建築家、という言葉を胸に行って来ました。

展覧会は20世紀以降に国内外で実現しなかった建築を時系列的に
図面、模型、CGを用いて見せていきます。
以下、各コーナーで印象に残った作品のメモ。



【1920年代】

◆ウラジミール・タトリン《第3インターナショナル記念塔》
フォト


幻の革命記念塔。高さ400mの二重螺旋のなかにはめ込まれた立方体・角錐・半円球等が各々年1月1…で回転するもの。てっぺんからプロパガンダを行うというのが20世紀的。
長倉威彦による大画面のCGは、実際に建っていたらみせたであろう威容をリアルに体感させます。

【1930年代】

◆ブルーノ・タウト
桂離宮の発見者として名高いタウト、近鉄生駒山系に都市計画を残していたとは知りませんでした。
水墨画のような配置図もあり。

【日本】

大学における建築教育はまず構造であったのに対して
より表現主義の立場からある意味ポエティックな作品を残した人たち。

◆川喜田煉七郎《ウクライナ劇場》
国際コンペで日本人が初めて入賞・4等になった作品。
東北大学五十嵐太郎研究室による再現模型と愛ある解説パネルがありました。

【1950年代】

第二次大戦後。
自由に移動して住まう、など思考も自由になってきたようです。
ここで興味深かったのは
◆ジュゼッペ・テラーニ⦅ダンテウム⦆
いわずと知れたダンテの「神曲」をモチーフにした建築。
千葉工業大学による模型とCG。
森→地獄→煉獄→天国
を象徴的にみせてくれます。実際には最後「→帝国」になっていたのだそうですが、その画像は、なし。
正義を愛せ大地を裁くものたちよ、と。

【1960年代】

丹下健三研究室が考えた日本における人口爆発とメタボリズムの、ある解決方法。
黒川紀章などおなじみの名前が登場する海上都市。
ピエール=ジャン・ジルーによるCG・二重螺旋の⦅見えない都市⦆はあまりにリアルです。
実際の建築を予定しないアーキグラムの活動がはじまったのもこのころ。


【1970年代】

キュビズム的なジョン・ヘイダック
ナイヤガラと建造物の組み合わせのスーパースタジオ
とくるともはや建築設計図というより独立した芸術分野のよう。


そのなかで
◆村田豊《ソビエト青少年スポーツ施設》
は実現しなかったのが残念。エアドームを用いる村田の作品は
1970年大阪万国博覧会の富士パビリオンで現実のものとなっていましたからね。
ポンピドゥーセンターのコンペにも応募していたんだなあ。


そして
◆荒川修作+マドリン・ギンズ《問われているプロセス/天命反転の橋》
橋の上に数々の構造物があり、ただでは渡れない障害物競走のような橋。
渡りながら橋というものについて考えさせるのが目的です。
荒川修作の養老・天命反転地にはできたころに行ったことがあるのですが
それと同じような哲学的な感じです。


【80年代以降】

◆ダニエル・リベスキンド《マイクロメガス》
自ら終末空間の建築、というだけあって迷宮のよう。
リベスキンドが実際に手掛けたものとしては《ユダヤ博物館》があります。


◆レム・コールハース《フランス国立図書館》
有機的なものが浮いてます。ポストモダン。


そしてポストモダンといえば!
◆磯崎新《東京都新都庁》
現実に建ったものが天を衝くツインタワーであるのに対し
あえて示した低層プラン。


◆安藤忠雄《中の島エッグ》
世界の安藤、も「連戦連敗」という著書があるくらい
実現しなかった建築が山のようにあるようです。
これはコンペさえ行われなかった大阪中の島公会堂のリノベーション案。
老朽化した建物の内部に巨大な卵型の構造物をつくって支えるというもの。


◆石上純也
◆藤本壮介
お二人に共通するのは自然と建築の融合。
石上の細い柱を数百本?並べるものは堅固な建築と相反するもの。
藤本の《ベトンハラ・ウォーターフロントセンター》は
渦をまくように軽やかに重なり合う道路が構成する街。


そしてシメにはやはり
◆ザハ・ハディド《新国立競技場》
日建設計等共同体による図面や実測設計図などもありました。
実現しなかったのがなんとも残念です。


あ、最後の最後は
◆山口晃
◆会田誠
ご両人による《日本橋 改》《シン日本橋》でしたか。
歴史的景観を高速道路でぶち壊した日本橋。
今更ながら効率化優先を嘆く声に
もう高速道路の上に新しく橋を作ってしまえ、というわけで。愉快です。
実際は高速道路を地下化するようですね。




3月15日まで。
http://www.nmao.go.jp/exhibition/2019/architect.html


収蔵作品展は
「現代日本の美意識」
ロビー展示は
「映画ポスターにみるロシア・アヴァンギャルド」

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