大阪や愛媛に巡回があるのですが
6月17日がエッシャーのお誕生日なので!
生誕120年
ミラクルエッシャー展
〜奇想版画家の謎を解く8つの鍵〜
@上野の森美術館
イスラエル博物館から日本初公開作品やドローイングを含む150点が来日。
科学/聖書/風景/人物/広告/技法/反射/錯視/
という8つのキーワードから独特な世界にせまる展覧会です。
教科書にも《描く手》や《父GAエッシャーの肖像》が載っていて日本ではおなじみ。
ハウステンボスの美術館は今もあるのかな?
もちろんそれら代表作も含めたっぷり出ていますが
今回興味深かったのは
「風景」。
イタリア旅行の成果
サンジミニャーノ、アブルッツィ、アマルフィ…
エッシャーという名前から期待されるだまし絵ではないのですが
版画作品として素敵でした。 グッズにはなっていませんでしたが。
《夜の微光》(1933)
夜の波打ち際。微かに光る小さな波頭。
よく見ると空には北斗七星。
《夕暮れ(ローマ)》(1946)
10センチほどの小さなメゾティント。
第1ステート/第2ステート 両方が並んでいて解りやすい。
それにしてもローマの街のライティングはドラマチックなのですねえ。
「広告」
というキーワードのコーナーの蔵書票や年賀状デザインも面白い。
三男ヤンが生まれたときの誕生通知カードの可愛いことといったら、必見!
会場出口には 《相対性》 の中に入り込んで動画撮影ができるコーナーもありました。
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【講演会】
会場をまわったあと、東京都美術館の講堂で行われた講演会を聴講。
次のエッシャーはアナタ!?
敷きつめ(テセレーション)の驚異の世界
講師:日本テセレーションデザイン協会代表
荒木義明
本職?は数学者で
エッシャー生誕100周年(要するに20年前)
パーティに参加した 日本人2人のうちのお一人だそう。(ちなみにもうお一方はグラフィックデザイナーの中村誠さん)
テセレーション歴は27年。
科学館などでテセレーションの面白さ普及につとめていらっしゃるようでお話が面白い。
「今日(の会場)は小さいおともだちから 大きいおともだち(!)までいろいろですね」w
◆世界ではエッシャーは 〇〇〇〇 で有名だ
今日は何の日ですか?
エッシャーの誕生日?えらい!
でも父の日ですよね。私も子供に「お父さんの絵」を描いてもらいました。 ね? テセレーションの説明をしているところです。
エッシャーもお父さんの絵を描いています。 ほらこれ。
・ 父 GAエッシャーの肖像(1935)
オランダ人で、土木技術者として日本政府に招へいされたこともある人です。
でも今日はエッシャーのお誕生日ですからね。
みんなで言ってみましょう。
「エッシャー120歳おめでとう!!」
あ、でもこれではお父さんがでてきてしまいます。
息子のマウリッツのほうを呼ぶために、ニックネームにしましょう。
「モーク、120歳おめでとう!」
・ 自画像(1929)〜ひげのある自画像
ところでエッシャーといえばどんなイメージですか?
・ 相対性(1953)〜本展メインビジュアル
なんだか理系っぽい感じかな。マニアックで。
でも当人は 正直、数学は苦手だったようです。
それなのになんでこんな作品を作っていたんでしょうか。
◆世界ではエッシャーはテセレーションで有名だ
今日は世界テセレーションデーなんですよ。 #World Tessellation Day で検索してみてくださいね。
ではテセレーションとはなにか。
Tessel(四角) + lation(移動)、すきまなく敷きつめることです。
エッシャーのテセレーション作品をみてみましょう。
・ 発展1(1937)
テセレ歴17年ごろの作品です。中央で4匹のトカゲがからまりあっています。
これは元はというと、四角形の編をゆがませたり切り取って違うところにくっつけたりして
できているんですよ。ほら。 これだけです。簡単でしょ?
ではテセレーションを描くきっかけはなんだったのでしょう。
1898年生まれのエッシャーは1920年からテセレをはじめ、以後ずーっとテセレなんです。
50歳くらいで有名になったころ、幼いころの知り合いの女のひとにあったら
「あなた小さいころからずーっと同じことやってるわね」
パンにチーズをちぎって敷き詰めてたっていうんです。
私も実は小さいときにオランダにいたことがあるんですけど、
オランダのチーズ市場ってすごいんですよ。ほら。こんなふうに大きなチーズがいっぱいで。
あ、これもテセレーションだな。 同じ形がぎっしり並んでて。
テセレーションのきっかけはオランダ気質なのかな?
・ 昼と夜(1938)〜テセレ歴18年ごろの作品
これね、画面の左半分には明るい空に黒い鳥がとんでて、右半分には暗い空に白い鳥が飛んでる。
背景の地面をみてください。オランダの田園地帯ですね。
風車があったり、運河があったり、
オランダ人は「世界は神がつくったが、オランダはオランダ人が作った」って自負してるんですよ。
つまりオランダ人は 海を埋め立てて/農地を整備して/園芸農業で発展した。
それとおなじように 平面を敷きつめて/四角を鳥にかえて/作品をつくったのがエッシャーというわけです。
◆エッシャーは自分が 〇〇〇〇 だと思い込んでいた
旅好きのモークは旅行で画風がかわりました。
どこにいったと思いますか? スペインです。
モザイクの壁を模写もしています。
でも幾何学模様ばっかりなんですよね。
動物のテセレーションは誰も描いていないの? ・・・
エッシャーは自分が孤独だと思い込んでいました。
実際はそんなことはありません。
こんなのがあるよーって教えてあげたいですね。
◇千鳥格子〜フランス語でピエ・ド・プル(鳥の足)、英語でハウンドツース(犬の歯)。
2000年以上前のスウェーデンで発見されたのが最古。
◇アンデス文明の鳥模様
プレ・インカ。3000年前から500年前・・・
って超ざっくりしてますが。
◇杉浦非水のペリカン模様
日本人です。
来年国立近代美術館の工芸館で展覧会があるようです。
◇ルネ・ラリックの花瓶《亀》
有名なガラス工芸作家の作品ですね。
◇コロマン・モーザー《金魚》
エッシャーが出会ったのはこれです。
モーザー作品に出会ったので 孤独だと思っていた 「が」(そうじゃなかった)、
ということですね。
◆エッシャーはだますより 〇〇〇〇 を楽しんでいた。
彼は素朴な疑問として、単純なテセレーションから
どんな動物が欠けるだろうか、とドキドキしていた
と思うんです。
動物も1種類から複数へと展開していきました。
・ 太陽と月(1948)
どうですか。単なる鳥の絵ではなくて、なにかが重なって見えませんか。 そう、三日月です。画面の色を変えるとみえてきますね。
・ 解放(1955)
ぎっしりつまっているのに、動物の形が自由ですね。 だまそうとしている、というよりテセレーションの方法を模索している感じです。
ほかの作家の作品にも動物が密集するデザイン例は見られます。
◇ジョン・スローン《黒鳥パズル》(1903)
◇烏鷺文手箱
◇歌川芳藤《子猫あつまって大猫になる》(1858)
それにほら、今日私が来ているTシャツ! 小魚が集まってクジラの形になってるでしょう?
これは Marble SUD というブランドのものなんですよ。
・ 宿命(1951)
〜テセレ歴31年頃の作品
あ、ちょっと怖かったですか。
キャラクターが決まるとストーリーは勝手に動き始めるらしいですね。
このように次々と奇妙な生き物たちが現れてきます。
ほかのアーティスト作品をみてみましょう。
◇マーガレット・リチャードソン《悪夢》(1909)〜米国のパズル作家
◇鶴舞う形の群馬県〜群馬のひとには有名なおはなし。
皆さんのお住まいの県も
何かのかたちにみえませんか。
◇藤田伸《Zoo Set》
エッシャーの楽しみは、
素朴な疑問から
一歩踏み出すことによる
想定外の展開だったと思います。
◆いま、テセレーションを通して学ぶ 〇〇〇〇 心
これは文部科学省の学習指導要領です。
予測不可能な時代に向けた学びのために
人工知能が進化してもかわらない人間の強みとして
美しさを学ぶこととしています。
美しさを学ぶ教科ってなんでしょうか。
音楽?図画工作? それに数学も加わるというのです。
低学年から図形がでてくる。
エッシャーや私もそうです。
素朴な疑問を 自分なりのみかた、やりかたで 一歩踏み出すことにより 想定外の展開を楽しむ。
これが講演会のお土産ですね。
最期にもう一度
「モーク120歳おめでとう!」
◆スペシャルゲスト・野老朝雄さん
講演会の最後に、エッシャー展のロゴをデザインした野老さんがステージにあがられました。
〜ESCHER〜
この展覧会のために作られたフォントはTシャツにもなっています。
1字ずつ、上から見たり、下から見たり、と交互になっています。
次の行は反対。
でも輪郭線は同じ…って本当だ!
この6字だからできたデザインで、MとかWが入っていたらダメだったそう。
野老さんは2020年のオリンピック&パラリンピックのマークデザインでも有名な方。
こっそりあのマークのなりたちも教えて下さいました。
パーツの面積は2:√3:1
角度は3:2:1
算数の教科書にも載るそうです。
あらゆる教科に「美」はある、と言われていました。
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エッシャー展、上野は7月29日まで。
11月16日からあべのハルカス美術館に巡回。
http://www.escher.jp/
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