mixiユーザー(id:3210641)

2018年05月31日14:08

1025 view

【バレエ】 Kバレエ 「コッペリア」(4公演)・その2

スワニルダは、木曜と日曜が小林さん、
土曜マチネが浅野さん、(金曜と)ソワレが毛利さん。
最初は週末に3キャストを1回ずつのつもりだったが、
小林さんが初日と楽日でどう変化するかを観たくて、
木曜を追加してしまった。

小林さんの技術については、
どの程度ロシア風に踊ってくれるか以外、不安のカケラもなく、
未知数だった演技力が興味の対象だったが、
予想以上に表情豊かで愛らしいスワニルダだった。

友だちのリーダーというよりはムードメーカーで、
気の弱いところもあり、けれどフランツが絡むと、
頬を膨らませたり、ロマ女性の前に立ちはだかったりと、
気丈なところもある。

ちなみに丸顔の彼女が頬を膨らませると、
小さい子が拗ねているようで、
つい観ている方も微笑んでしまう。

人形のマネも見事、
キャラダンの動きもよく研究しているようで、
3人の中ではいちばん「らしさ」があった。
(他の2人ももちろん上手い)

今回の踊りは、大きさよりも強靱さの方が印象的で、
手足の振りはやや抑え気味だったが、
制御された力強い動きは音楽とぴたり合い気持ちが良い。
初日のフェッテの入りは4回転?5回転?
途中にも3回転を織り交ぜ、長時間の片足立ちも揺るがない。

プログラムの小林さんの紹介に、
彼女がワガノワ出身だったとの記述があるが、
それが宣伝に使えるということに、
スタッフもようやく気付いたか。(笑)

初日は、踊っている最中、
フランツがコッペリアを観て彼女を手放す時や、
コッペリウスの頬を張る時など、
タイミングがあわないところもあったが、
日曜はそれらも修正されていた。

彼女の実力は熊さんも認めるところのようで、
「ロミジュリ」「ドンQ」「くるみ」と、
立て続けに主役への配役が発表されているが、
今後の目標は、役作りに深みを持たせ、
彼女ならではの個性をだすことと、
演技の説得力向上だろうか。

たとえば2幕、中国人形のゼンマイを巻く場面、
彼女(他の2人も同様)は、
机の上にあるクランクを迷うことなく取りに行くが、
スワニルダがコッペリウスの家に入るのは初めて、
何がどこにあるのかは知らないはずだから、
直前にクランクを「探す」仕草を挟むべきであろう。

小林さんはそのへんで見かける女の子のようなキャラと、
強靭なテクニックという意外性の組み合わせが面白かったが、
浅野さんは綺麗なお姉さん的な風貌と、
かしましい女の子というキャラの、やはりギャップが楽しかった。

「バヤ」のガムザで演技の上手い人との印象を持ち、
常に重要なポジションに配されては、
期待通りの踊りを披露していたから、
今回の3人の中では最初から安心して舞台を楽しめた。

それにしても、浅野さんや神戸さんのような、
目鼻立ちのはっきりした人がこの役を演ずると、
2幕は本物の人形が踊っているように見える。(笑)

3人とも初役ということで、
まだ基本に忠実を心掛けていることがわかる演技だったから、
次回はいかに個性を出してくるかが楽しみだ。

3人目のスワニルダ、毛利さんは、
昨年夏に新国からKへ移籍してきた新顔。
海外で学んだ後、2012年新国入団とあるから、
20代後半だろうか。

国内バレエ団の総合力を勘案すると、
Kからの移籍組の活躍には、当然であって驚きはないが、
その逆は厳しいものがあるように思えてならない。

新国の小野さんや米沢さんが来たと言うのならまだしも、
彼女は名前に聞き覚えがある程度。
にもかかわらず、移籍早々の主役抜擢である。
興味が湧かないわけがない。

観終えたあと、真っ先に思ったことは、
彼女のキトリを観てみたいだったが、
Kがこの秋に上演する「ドンQ」には、
しっかり彼女の名前があった。

浅野さんとはまた違う美人のお姉さんキャラで、
今回の3人のスワニルダの中では、
いちばん気丈で陽性、フランツとのやりとりも、
口と同時に手が出るんじゃないかというお転婆。
他の2人がまだ個性を抑え気味だったのに対し、
「中の人」の地で演じているのでは? というほど自然。

技術的には、Kにあっては突出しているわけではないが、
平均レベルは余裕で越えている。
新国はなぜ彼女ほどの力量の踊り手を、
留めておくことができなかったのだろう。
実にもったいない話だ。

ちなみに3人とも3幕のイタリアン・フェッテを平然とこなす。
「難しい技」と言われているようだが、Kの舞台を観ていると、
誰でもできる簡単なテクニックに思えてしまう。(笑)

小林さんの相方、山本フランツは、
背格好、テクともに、小林さんとのバランスが良い。
彼の熊さんに通ずる派手なアクションは、
小林さんの力強い踊りと並んでも霞むことがない。
以前ネットで彼にクレームを付けていた連中がいたが、
おまえら本当に見る目がないな、とドヤ顔で言ってやりたい。(笑)

強いて彼の弱点を挙げるなら、
彼が今目指しているであろう、熊さんの完コピという目標。
目標が目標だから、あそこまで再現できれば、
それはそれで凄いことだが、
「コピー」は100%でないとダメと言われてしまう。

観客は完成形に対する再現度を観るから、
完璧にできても「達成」したことが評価されるだけで、
あとはすべてマイナス評価となる。
たとえ熊さんより高く跳び、速く回転しても、
オリジナルとは違うよね、になってしまう。

ただ何事も最初はベテランの真似事から入るもの、
彼ならいずれ、彼ならではの踊りを披露してくれることだろう。

浅野さんの相方、伊坂さんも、
経験値を相応に持つ中堅、
技術も演技力も定評があるから、
いちばん安心して観ていられるフランツだと思っていた。

しかし幕が開けてみれば、いつもの精彩がなく、
踊りも重たげでミスもあるなど、彼らしくない。
どこか不調だったのだろうか。

毛利さんの相方は篠宮くん。
前2人が踊り出すと熊さんの幻影がちらつくのに対し、
彼の踊りには個性があるので、
テクニック的には前2者の方が上だと思うが、
見比べると良い印象が残るのは彼だった。

演技も同様で、篠宮くんはコミカルではあるけれど、
キザな感じが他の2人よりも鼻につく。(笑)

彼もまた牧からの移籍者。
なぜ牧は彼を手放したのだろう。
もったいないことをするものだ。

しかし改めてDVDを観ると、
熊さんの演技は自然で楽しいが、
ギャグのセンスはドリフの世代なんだな。

メインストリームとは直接関係ないが、
物語のアクセントとなるのがロマたち。
リーダーとその彼女は杉野くんと山田さんの固定、
仲間の女性2名は戸田さんと大井田さんで、
戸田さんがプレイヤーの時は國友さん。
この5名がまた迫力のある踊りをする。

それにしても山田さんは何を演っても巧いし綺麗に見える。
こういう役も見応えあるから良いのだが、
杉野くんがジークも踊るようになったら、
2人の「白鳥」も観てみたい。

「杉野くん、育ちの良さが明るさと優しさに出ているのに、
何故か悪役が多くて板についてきたね。
今日のロマのガラの悪さとか」

これは我が師の褒め言葉であろう。(笑)

彼らとのトラブルは、
フランツとその男友だちの群舞の直後、
突然椅子の倒れる音とともに始まる。
怒るロマのリーダー、謝る宿屋の主人。

いったい何が起きたのか気になるのだが、
直前の男性群舞が見事すぎてついつい目が奪われ、
3回も見逃してしまった。
白旗を掲げお師匠さまにたずねると、

「ロマのリーダーがお酒のお変わりを要求、
宿屋のご主人がマグに注ぐのだけど、
2人とも踊りを観ていてよそ見をしているから、
ご主人がこぼしてしまう」

お師匠さま、実は目玉がもう一組、どこかにあるんですか。
(楽日にようやく自分で確認できた)

領主は栗山廉君のみで、あの風貌どおり、
気の良い、けれどちょっと気弱な領主様。
ロマにさんざん振り回されるにもかかわらず、
先のトラブルでもお金を渡して穏便にすませようとする。

宿屋主人も笹本さんのみ。
プログラムの略歴には何もないが、
どのような経歴の人だろう。
廉くんたちとも息が合っているから、
お芝居専門の踊らない人かとおもったら、
フィナーレでは他の人といっしょに跳んだり回ったりしている。

コッペリア人形も由井さんのみ。
動く場面以外でも、時々眺めてみたが、
まばたきをするところは一度も見かけなかった。
辛いと思うのだが、何か秘訣でもあるのだろうか。

他にも中国人形など5体の人形役がいるが、
なぜか配役表には名前がない。
動きも上手かったし、じっとしているのも大変だろうから、
そこは名前を入れてあげよう。

スワニルダの友だちは、
井平、河合、吉田、萱野、佐伯、吉岡の1チームのみ。
みな仕草が可愛いが、DVDのように、
もっとかしましい雰囲気にしても良いように思う。

フランツの友だちも、
堀内、石橋、益子、奥田の固定だが、
これがまた見応えがある。

「石橋くんは髪型変えたら雰囲気変わったね。
今の方が踊りの雰囲気に合ってる感じ」とお師匠さま。

プレイヤーはメインが矢内さんで、
毛利さんの日だけ戸田さん。

矢内さんはもう細身の印象はなく、
踊りの安定感がさらに増した感じ。
「ロミジュリ」「ドンQ」に配役されているのも納得で、
一見おっとりしてそうな見かけによらず、
元気で闊達なジュリエットやキトリを魅せてくれることだろう。

戸田さんは、名前はよく見かけるのだが、
これまではなぜか識別できていなかった。
しかし今回のソロを観て、今後はもっと注目してみようと思った。

長い手脚を有効活用した優雅な踊りは、
スケール感もあって好みのタイプ。
優しく包み込むような雰囲気は、この役にぴったりだった。

ブライドメイドは、
リーダー(?)は湊さん、毛利さんの日のみ井平さん。
2人ともひときわ小柄なのだが、踊りが大きいので埋もれない。
他は大井田、吉田、佐伯、吉岡の1チームのみ。

村人や仕事の群舞もほぼ1チームで、
ほんの数名入れ替わるだけ。
今回は若手の集中特訓なのだろう。

前述のように、最初はKらしくない群舞だったが、
(個々の踊りは良いのだが、統制感に欠ける)
最終的には及第点に達した。

緩急自在、シャープな動きの時もあれば、
優雅で美しい踊りもできる。
他のバレエ団に比べれば、初日でも十分上手いと思うが、
熊さんの目指しているレベルは高い。

そういえば、毛利さんの回の仕事の踊りに、
「小麦」ちゃんという子がいた。
まだ最下級のアパレンティスなので、
オフィシャルサイトに顔写真も載っていないから、
どんな子かはわからないが、彼女の名前で、
お師匠さまとしばし盛り上がってしまった。

「キラキラネームに入るのかもしれないけど、
なんかいいよね、かわいいよね。
両親はどういう思いを込めて名付けたのかな」

「主食のように欠かせない人になってね、ということかな、
だとすると日本ならお米だけど、
お米ちゃんではゆるきゃらすぎるから小麦?」

「それとも小麦はパンにパスタにうどんにそうめん、
白ビールやウイスキーの原料にもなる、
グルテンを加工すれば麩にもなるから、
沢山の可能性を秘めた子に育ってほしい、ということなのかな」

単に両親がパンやパスタを好きだったからじゃないですか?
と言ったらはたかれた。

群舞の踊りの中では、
1幕麦の穂の後のスワニルダの友だちの踊り、
2幕スワニルダたちが中国人形の真似する場面、
3幕フランツのヴァリの後の時の踊りが、
曲も含めて好みだったりする。

でも、男性陣のでんぐり返しは、
振付上もたついてしまうから、いらないんじゃないか。

8年前も今回も、つい気になってしまったのが、
3幕終盤、フランツの友だちが、
祭りの象徴である鐘を釣り上げる場面。
金属の塊であるはずの鐘の重さが、
まったく感じられないのだ。

手前には主人公や村人たちがたむろし、
舞台上手奥での作業なので、
観客の注意はほとんど向かないが、
キャシディさんが怪しげな本を運んでくる時は、
しっかり重さが感じられるし、
キホーテからランスや盾を受け取る時、
重さにふらついたり落としそうな演技をしたキトリ・パパもいた。

些細なことだが、
些細なことでもおざなりにしない姿勢が、
将来の演技力につながっていく。


それにしても、「コッペリア」は楽しい演目だ。
バレエ初心者に観せるとしたら、やはりこれか「ドンQ」だろう。
拍手し放題の演奏付きカーテンコールも盛り上がるし。(笑)

拍手といえば、土曜ソワレに変な観客がいた。
賑やかな場面になると、突如手拍子を始めるのだ。
本人的には演奏に合わせて
盛り上げているつもりなのかもしれないが、
リズムも合ってないから雑音でしかない。

ほどなくしてしなくなったところをみると、
周囲の人に取り押さえられたのだろうか。(笑)

「コッペリア」の3幕は、踊りがだらだら続くだけでつまらない、
という解説や感想をたまに見かけるが、
それは下手なところの舞台しか観ていないからで、
「眠り」同様、上手いところの舞台は見飽きないどころか、
あっという間に終わってしまう。

久しぶりの上演ということもあり、
今回は4公演を観たが、どの回もあっという間だった。
6 13

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年05月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031