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2015年08月20日22:05

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「日本化」するドイツ経済

■ドイツ経済、緩やかな成長続ける=財務省月次報告
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=52&from=diary&id=3574583


 ■一般庶民の生活について何も語らない日本の経済ニュース

 記事を読むとさぞやドイツの景気が良いのだな、と思ったしまうが、一般庶民の生活は記事で書いてあるほど良くは無い。

 ドイツ経済は外需頼みになって来ており、このあたり日本と非常によく似て来た。今後のドイツ経済の行方をひとことで示したのがこのタイトルである。

 論より証拠、数字を列挙してみよう。

 1労働分配率(単位:%、ドイツのデータが無いので、2011年で比較)

 日本:71.3

 ドイツ:66.5

 しかし日本もドイツも今から20年前、日本は73%、ドイツは71.8と拮抗していた。それが今ではこの状態である。

 2移民

 日本については移民の定義上、限りなくゼロかデータ無しだが、2014年5月20日、OECDはイツがアメリカに次ぐ移民国家になったと宣言した。

 OECDのトーマス・リッヒ氏は

 「ドイツへの移民はブームだ。」

 と宣言。移民のうち実に38%がドイツだと統計を発表している。移民の人達が行く先はパート労働しかない。ただし、日本ではアルバイトと正社員の賃金格差はあるが、ドイツは日本ほど無い。

 こちらの数字も紹介しておこう(2010年、OECD)

 日本:55.4%、ドイツ:82.8%

 それゆえ大人気の移民先になっているのだ。

 3インフレ率

 2014年、ここへきてドイツもデフレ経済に足を突っ込み始めた。2014年8月期のインフレ率は前年比で0.9%。

 しかしインフレ率が問題なのではない。実質賃金がドイツも0.9%に追いつかない状況に陥ったのである。

 正に実質賃金の低下が著しいという点でも日本化だ。

 ■パッケージで対応が出来ないユーロ圏の特徴につけこんで成長してきたドイツ経済

 しかし財政については日本と良く似て来たどころか、酷似して来たと言っても良い。一般庶民から貸しつけられる(預けられる)ユーロに行き場無いので、仕方なく国債を銀行は買っている状態にある。

 酷似して来たと言ったが、それでも日本はまだまだマシである。

 日本の場合、統計の採り方にもよるが、GDP比で対外債務が41%程度でしかない(cf.ドイツは124%)。日本よりも対外債務が低い国は主要国ではカナダ(35%)しかない。日本人は他人様の銭を使ってまで贅沢をしたいとは思わない民族のようだ。日本国債の購入者の94%は日本の機関投資家か個人。しかも財務省のホームページなどを見ると、1985年以降、日本国債は100%日本円建てである。しかも低金利にしてデフレだから、借金を単純に減らしたければ子会社的な日銀に買い取らせればそれでチャラに出来る。明日にでも財政破綻が日本で起きると息巻いている方々には残念だが、連結決算ではそれが出来るのだから仕方がない。

 金融政策と財政政策のパッケージ政策を行なわねばデフレに対抗出来ない。日本の場合は出来るが、ユーロ圏はそれが出来ない。なぜか?

 各国に金融主権も無ければ、財政主権も無いからだ。

 ユーロは好景気の時は良いが、一度逆を向いてしまった場合はとても脆弱なシステムなのだ。

 各国は通貨が切り下げられる(通貨の競争力が低下する)のを座視するしかない。その結果特にギリシャは悲惨なことになった。何とリーマンショック以前と比較してGDPが25%も減ったのである。

 25%・・・。

 最早戦争でもしなけれは回復しようが無い数字だ。

 ギリシャ問題が明るみに出た2009年以降、ドイツはそれまでユーロ圏に輸出することで成長してきたが、それも出来なくなり、安い為替レートを利してユーロ外へ輸出を拡大することになった。

 ドイツが成長出来たのはそれだけの話である。

 ■輸出主導のドイツと内需主導の日本、アメリカ

 
 それにしてもドイツの輸出依存度は凄まじい。

 次の数字をご覧頂きたい。

 主要国の輸出依存度(IMF OUTLOOK、2013、日本は内閣府、JETROなど)

 ドイツ・・・39%

 中国・・・28%

 韓国・・・48%

 日本・・・11%

 アメリカ・・・7%

 ブラジル・・・9%

 ドイツの数字が突出していることに気づかれただろう。まるで発展途上国のごとく輸出依存度を引き上げ(ちなみに2009年は31%だった)。他国の需要を奪う形で成長してきたのがドイツなのである。

 逆にこの数字が低ければ低いほど、その国は内需中心の国と言える。

 日本、アメリカ、ブラジルがそうだ。

 日本の場合、GDPに占める個人消費が最も高かったのはバブル経済期でも無ければ、高度成長期でもない。2008年で68%とアメリカに迫るほどだった。

 一方、日本が貿易立国だなどとニユースキャスターの中には言う者がいるが(笑)、数字を良く見てから言って欲しい。日本よりも主要国で輸出依存度が低いのはアメリカとブラジルだけである(だから今後ブラジルは大いに期待出来る国といえよう)。

 ■「勝ち組」ドイツの凋落が近い

 
 しかしながら今では世界的に需要減に苛んでいる。あの中国ですらそうだ。需要不足で無かったら、AIIB(アジア投資開発銀行)の設立など唱えるはずもない。国内の供給能力が有り余っているからこそ、この銀行で取って来たプロジェクトに国内企業を充てたいというだけに過ぎない。

 ドイツの成長はユーロ圏が駄目だが、他の地域ならばドイツ製品を受け容れてくれるという前提があるからに過ぎない。しかしこいつも怪しくなってきた。

 既に2013年、2014年とドイツの実質賃金はマイナスを向いてしまっている。

 そこへきて移民が殺到しているから、ドイツ人と移民との間で競争を強いられている。実質賃金が伸びるはずがない。

 そもそも国際競争力を「価格競争力」と定義した場合、グローバル市場による価格競争力と国民の購買力と両立させることは絶対に出来ない。両者はトレードオフの関係にある。

 この点、日本もドイツもアメリカもそろそろ国際競争力の再定義を価格競争力以外にもっていかないと、日本人もドイツ人もアメリカ人も中国人と同じ賃金になるまで下がり続けることを余儀なくされるだろう。

 特にドイツ経済のこの状況を見て

 「日本政府もデフレ化の財政均衡を達成出来る」

 と大前研一氏らは言い出したが、ユーロに加盟しているドイツのこれらの条件を日本に当てはめるなど不可能だ。大体ドイツは輸出主導という開発国のようなことをやっているのに対し、日本は高い労働分配率を利して(それでも少しずつ下がり出して居るのが気がかりだが)、内需主導の経済を戦後ずっと続けて来た。今後もそれで良いのではないか。実質賃金主導の経済に向かおうとしたら、デフレ化の財政均衡など達成出来る訳がない。

 そのような文言には心ある人は絶対に耳を貸してはならない。日本がドイツに学ぶとしたら「反面教師」としてである。
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