「きたきた捕物帖」
宮部みゆき
PHP研究所(PHP文芸文庫)
十六歳の北一は、亡くなった岡っ引き・千吉親分の本業だった文庫売りで生計を立てている。
ちょっと気弱で岡っ引きとしてはまだ見習いの北一が、相棒となる喜多次と出会い、周りの人に助けられながら、事件や不思議な出来事を解き明かしていく物語。
4話の連作短編集。
文庫とは、本や小間物を入れる紙製の箱のこと。
著者の書く魅力的な岡っ引きがまた出て来るのかと思いきや、退場してしまってからがこの物語のスタート。
町の大きな主柱であった千吉親分がいなくなり、主人公を含め皆が喪失感を抱えて幕が開きます。
今作の主要な名探偵役は、親分の寡婦、松葉が担当。
シリーズタイトルとなる二人の出会いも描かれ、他にも魅力的な登場人物が多数。
まだまだ半人前の北一を、こうして皆が助けてくれるのは、やはり本人の人徳なんでしょうね。
著者のシリーズを長く続けていきたいという言葉からも、北一の伸びしろがたっぷりあることが窺えます。
他シリーズの話題がちょろっと登場するところも、ファンには美味しい。
百物語シリーズが怪談寄りなので、ミステリは此方が担当するのかなと想像。
これからの二人の成長や、関係性が楽しみです。
解説は細谷正充氏(文芸評論家)
(古)
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