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2022年10月24日04:30

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具体 GUTAI

国立国際美術館と大阪中之島美術館、
並びたつ2館の共同開催。

すべて未知の世界へ
ーGUTAI 分化と統合
@国立国際美術館
@大阪中之島美術館

1954年に吉原治良を中心に関西で結成され
第二次大戦中の抑圧経験から
従来の規範からの自由であることを求め
「人の真似をするな」「今までにないものを作れ」
と呼び掛け、世界にも発信した芸術家集団運動。
現在のパフォーマンスやインスタレーションに繋がる様々な実験的手法を行いました。
その解散後50年の展覧会です。

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【国立国際美術館〜統合〜】

さきにこちらを見ました。

◆展覧会構成
1. 握手の仕方
2. 空っぽの中身
3. 絵画とは限らない

まず撮影可能なイントロダクション部に
白髪一雄が芦屋公園の松林に立て、斧で切りつけれパフォーマンスを行ったという
《赤い丸太》、
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元永定正の《作品(水)》はカラフルなビニールに水を湛えてそびえています。

そこから続々と"他にはどこにもない未知の"作品たち。

・上前智祐のマッチ棒集積
・吉原通雄のコールタール
・白髪富士子のガラス
・絵の具のガラス瓶を投げつけて描いた嶋本昭三

物質そのものが絵になり
意味あるかたちと形のない無意味の間を揺らぐような試みが続きます。

・鷲見康夫
・金山明
・正延正俊
・名坂有子

みなタイトルは《作品》。
徹底的に無意味を志向するため、タイトルがないのです。

・蓮根のような吉田稔郎の油彩
・真っ赤なビニールの蚊帳のような山崎つる子の《赤》

空っぽです。
しかし空っぽは何かになる前の形であり、
何物にもなりうるのが空っぽなのだといいます。

呆然としてきたところで
・吉原治良の"円"
・田中敦子の"電気絵"
が出て来て
ああわかりやすい、とほっとしました。
田中敦子作品では、英文のコラージュの上にペン書きした《カレンダー》も良かった。

・数学のように描いた菅野聖子
・ブリジット・ライリーのようなしかし半立体の今中クミ子
・サイケデリックムーヴメントの田井智
・木箱?と思ったら不意に中の時計が時を告げる村上三郎
・記号だらけの向井修二

暗室の中で
・キネティックアートさながら、ヨシダミノルの花弁のような蛍光色の羽根が回り

白の世界では
・堀尾貞治の作品が壁面に陰影を作り
・高崎元尚の板と布の格子は何の"装置"だというのか
・森内敬子のクッションの行列を後にすると

出口にあるのは
村上三郎の枠だけのキャンバス《あらゆる風景》。
額に閉じ込められた動かない時間から生きた時間へ、
新しい絵画を試みようとした作品…

ざわついた心をB3のマーク・マンダースで落ち着けて
次なる美術館へ。

【大阪中之島美術館〜分化〜】

国立国際の76点に対して96点の展示。
展覧会構成も図録通りです。(何故揃えなかったのでしょうね)
撮影可能な作品も多い。

◆展覧会構成
1章. 空間
2章. 物質
3章. コンセプト
4章. 場所

しょっぱなに
・田中敦子の《作品(ベル)》があります。406のコードを会場に巡らしあちこちで鳴るベル。
田中の《電気服》もここにあります。電気がついているのを初めて見ました。

具体の作品はスケールの大きいものが多いという話。
・向井修二
・村上三郎

・吉原通雄の、天井から部屋の角に堆積する紙テープ
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・上前智祐
・金山明のミニマムな作品
・機械で描く方が生々しいという名坂千吉郎
・今中クミ子の"ライリー風"は発泡スチロールに金属板を平行に立てた立体だったのか…

国立国際の展示室で見たばかりのアーティストたちも
目とアタマはすっかりお馴染みになったよう。

作品を説明してはならぬ、ということで
添えられた文章はいずれも作家たちの発言から作品に相応しいものをビックアップしたもの。

絵は遊びであり論理であり哲学だ(菅野聖子)

具体では精神と物質が対立したまま握手している(吉原治良)

天空にごっそりと裂目を作りたい。
材料も技巧もみえない
みる人が畏怖と放心に落ち込むような(白髪富士子)

具体では作品を言葉で説明しません。
しかしそれはコンセプトがないということとは違います。
さらに成果物よりコンセプトが大事だというコンセプチュアル・アートとも異なるのです。
具体では説明なしにコンセプトを受け取らなければならないのです。
(それが"不親切"ではないというのは展覧会をみて分かりました)

会場の出口近くに映像コーナーがありました。
映していたのは
《GUTAI インサイト》
向井三郎、松谷武判、今井祝雄3氏が
具体の始まり
吉原治良の記憶
等について語っていました。
聴けば聴くほど吉原治良という人物が唯一無二であったのですね。
精油会社の社長でありながらアーティストたちの作品を一切の説明なく"よし""だめ"に二分し
ピナコテカという発表の場を作って海外のアンフォルメルと繋がった。
そこで鍛えられた故にパリへ行っても怖くなかったという松谷。
みる人の判断を信用しようと言われてタイトルをつけなくなった向井。
作品が全てを語るのであり芸術論を交わしたのではないという今井。
共通に染み付いているのは「誰もやらないことをせよ」という言葉。
具体は流派ではない。
様式を否定するが美は否定しない。
その後具体の手法の真似と思われるものも見るが
技法を越える「考え」を大切にして欲しい…

最後のコーナーは吉原が実現させた《インターナショナル・スカイ・フェスティバル》。
計画段階の下絵
海外のアーティストと交わした手紙
実際に高島屋屋上から揚げたバルーンにつなげられたアート作品。
来る11月20日から25日まで、
このイベントが形を変えて中之島美術館の屋上で再現されるようです。
晴れるといいですね。

展覧会はいずれの会場も2023年1月9日まで。
https://nakka-art.jp/exhibition-post/gutai-2022/

https://www.nmao.go.jp/events/event/gutai_2022_nakanoshima/

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