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2021年02月15日16:17

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【バレエ】英ロイヤル「眠れる森の美女」

光藍社がシェフチェンコの「シンデレラ」全幕の公開を再開した。
https://m.youtube.com/watch?v=XLlA0_d7GPI&feature=youtu.be

見慣れたものとは趣の違う版ではあるけれど、「シンデレラ」のバリエーションとしては有りの映像なので、バレエ好きを自認する方には視聴をお勧めしたい。


有料チャンネルにはバレエを売りにするところもあるが、プログラムを眺めていると、気になる作品もたしかにあるものの本数が少なかったり、いまさらそれ? みたいな映像を繰り返し流すだけなので、敢えて入ろうという気にはならない。

ところがWOWOWは、バレエ番組を前面に出してはいないにもかかわらず、内外の全幕作品(来月はKのシネマもやる)に加え、珍しいシリーズものやダンサーのドキュメンタリーなども放映してくれる。表題の「眠り」もその1つで、昨年映画館で上映され、代役の金子さんが話題になったものだ。

金子さんを初めて観たのは、2010年のダンチェンコ来日ガラ公演で、まだ18歳ということもあり、温情出演だろうと勝手に解釈した。だが日本人離れしたスタイルに加え、ダンチェンコのソリストと並んでも見劣りのしない優れた技術に考えを改めた。

彼女は当時の芸監フィーリンさんが、前年(2009年)のモスクワのバレコン(銀賞入賞)で見つけた金のたまごだよ、と連れてきたそうで、速攻でお気に入りリストに登録した。

しかしその後は断片的な映像を見かけるのみで、怪我もあって全幕の主役姿を観るのはこれが初めて。昨年シネマを観た人たちやメディアの絶賛もあり、期待値マックス(笑)でテレビの前に座った。

だが、1幕の登場直後は良かったものの、調子をあげるどころか「?」と思う場面が続いたので、途中で観るのをやめてしまった。録画はかけてあったから、急いで観ることもないか、と。

そのことを我が師に伝えたところ、逆に好奇心を刺激してしまったようで(お師匠さまもシネマはご覧になっていない)、臨時の鑑賞会を開くことになった。

冒頭のクレジットによると、昨年1月16日に上演されたこの舞台は、アシュトン版にダウエルさんが若干手を加えた版に、さらにウィールドンさんが手を入れたもの。彼の名に一抹の不安を覚えたが、それはまた後ほど。

主な配役は、オーロラが金子さん、王子がボネッリさん。王様にサウンダーズさん、王妃様にマクゴリアンさん、カタラビュートにホワイトヘッドさんと馴染みの名前も並ぶ。マクゴリアンさん、相変わらずお美しい。仕草も上品で気品に満ちている。英国の本物の貴族はこういう感じなのだろうか。

ロイヤルオケは、当初つまらないミスがちまちまとあり、迫力も普段より乏しい感じがしたが、後半は安心して聴いていられた。テンポも軽快で、ロシアバレエファンにも心地よい速度。

プロローグの貴族の衣装と演技はイメージ通りのデザインと優雅さで、さすがロイヤルと感心したが、群舞が登場すると、示し合わせたわけではないのに、つい2人して苦笑を漏らしてしまった。古典の群舞は笑いを取る場面ではないのだが。

リラ精といえば、「北風と太陽」の太陽、人々を優しく包み込むイメージがあり、配役される人もそういう雰囲気の人(もしくはそういう演技のできる人)が多い。しかし登場したジェンセンさんは、笑顔こそ絶やさないものの女性にしては強面で、やや色黒、肩幅もあり、踊りもダイナミックなことから、お師匠さまへの第1報ではつい「武闘派」と記してしまい「?」マークが戻ってきたが、ご覧になって納得されていた。

対するカラボスのマクナリーさんはまだ若い人なのだろうか、演技が軽く威圧感がまったくない。王様たちと対峙したり、カタラビュートや妖精をいたぶる場面では、上から目線で妖しく陰湿に圧をかけてくるのがカラボスの定番だが、甲高い声でヒステリックに叫んでいるようにしか見えなかった。

上級妖精たちは動きがぎこちなく、振付も曲のイメージと合っていない。この場面でそのように感じるのは、ダンサーが下手な時と、振付家がしなくていい余計な手を加えた場合があるが、今回はどちらだろう。

今のロイヤルで古典バレエの上品かつ優雅な動きで踊れるのは、ムンタギロフくんをはじめとする一部の人のみで、あとは勢いに任せたガサツな踊り手ばかりだから、それも影響しているのだろうか。

ちなみに2幕の群舞の衣装はロマンチックチュチュ風のデザインなので、裾は浮き上がるとふんわり落ちてくる。これが直線的な動きを結果的にフォローしてくれるので、クラシックチュチュの時ほどアラが目立たない。

このほか2幕以降で印象に残ったのは、伯爵夫人アレスティスさんの美貌と、3幕宝石トリオ(ここではフロレスタンと彼の姉妹。王様はフロレスタン24世だから、オーロラの親戚たち?)のうち男性と女性の1人のマイルドな踊り。男性はヘイさん、女性はオサリバンさんかマグリさん。どっちだ?(1人は直線的)

猫はクラリネットの妖艶な音色に、踊りの質が合っていないのが気になった。

フロリナ王女と青い鳥がダメだったら、ロイヤルもおしまいだが、フロリナのナグディさん、青い鳥のボールさんを観てちょっと安心した。今回はボネッリさんとこの2人がもっとも古典していた。ナグディさんとボールさんの「眠り」も観てみたいものだ。次のロイヤル来日公演では、この2人に注目してチケットを取ろう、とお師匠さま。私も同意だ。

赤ずきんは演技がナチュラルで可愛い。

金子さんがポワントで立つとほぼボネッリさんと同じ高さになり、彼女も筋肉質だから、ボネッリさんの年齢を考えるとリフトが少し心配になったが、そこは鍛えているボネッリさん、特に不安は感じなかった。

サポート姿も美しく、踊りは優雅、王子の心情もしっかり伝わる演技だったが、パートナーシップという点では急造感は否めず、エイヴィス王子ともども初役ダンサーを見守る様子が隠しきれていなかった。そういえば、降板してしまったオーロラは誰だったのだろう。

金子さんは、前述したように、登場直後の動きは良かったのだが、次第に余裕がなくなり、踊りが粗くなっていく。

休憩が入った2幕ではやや持ち直し、あのペースでは持たないと思ったのか、動きがセーブモードに。3幕GPはボネッリさんのサポートと、ソロ場面では演奏のテンポをかなり落としてもらえたこともあり、なんとか無難にやり遂げたという感じ。シネマ観覧者とメディアは褒めすぎ。

逆に私は最初、少し厳しく見すぎてしまった。現時点での技術レベルについて訂正するつもりはないし、一般論として10年という時を経たダンサーは、もっと進化していてもおかしくはない。しかし彼女には怪我で失った時間があり、加えて代役登板、それも初役ということを考慮すると、良く頑張ったと思う。3幕はつい応援モードで観てしまった。

「金子さんの『眠り』を観て良かったなと思ったのは、金子さん、愛されてるな〜と思えたところかな。観客の応援が暖かく、舞台上でも、少なくともエイヴィスさんやボネッリさんは優しく見守っていた。日本でキャスト変更したら、祖国なのにアウェーになるからね」(お師匠さま談)


*英ロイヤル「眠れる森の美女」垂直テイスティング
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1978020995&owner_id=3210641
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