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2020年02月12日06:11

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クライム・サスペンスの題材なのに、焦点をサスペンス以外に持って行きたいのなら監督を引き受けるな、と言いたい。スティーブ・マックイーン監督「ロスト・マネー 偽りの報酬」(2018)。

原題が「Widows」なので、「寡婦たち」ということになります。ギャング一味が大金を盗んで逃走中に警官隊に取り囲まれ、一斉射撃を食らって逃走車もろとも大爆発を起こす、というのが出だしでした。それまで犯人の妻たちは、何不自由なく暮らしていたけど(不自由な女性もいるけど)突然夫を亡くして困窮します。なにしろ夫たちの200万ドルの負債返済を迫られるから、という物語。

遺された妻ヴェロニカ(ヴァイオラ・デイビス)、アリス(エリザベス・デビッキ)、リンダ(ミシェル・ロドリゲス)たちは、ヴェロニカの夫が遺した犯罪計画ノートをもとに、一攫千金を手に入れようとします。この設定は面白いと思う。WOWOWの「ハリウッド・エキスプレス」でこの情報を得ていた僕は、監督がスティーブ・“パチモン”・マックイーンだと知りながらも手を出してしまいました。

そしたら、犯罪への取り組みから実行へという、映画の最も大事な求心力を追求するよりも、寡婦たちの人間関係にポイントを置いて映画作りをするから、クライム・サスペンスとは違う方向に映画が展開してしまいます。回想シーンが入るのですが、それが犯罪へと進む直線的ドラマ展開を阻害してしまっている。僕はメロドラマは好きだけれど、サスペンスを阻害してまでメロドラマに入れ込みはしません。

それと、寡婦たち3人の犯罪に焦点を絞らないから、脇に有名スターが何人かでていて、それがこんなワキで収まるわけないと感づくわけです。そしたら本来なら“あっと言わせる”トリックのはずが、はるか前半でバレてしまう。大したトリックじゃないから多数の映画ファンは気づくはずですから、そのとおりになるとバカバカしいだけです。ここが、芸術家を気取ったパチモン監督の限界だと僕は感じました。

こんな映画を作っていたら、恥の上塗りだし、いつまでも夜が明けないよ。それでも飢えをしのぐために映画監督を続けるというのは、ロスト・マネーだからやめなはれ。

これがドン・シーゲルあたりだったら、90分のタイトな作品に仕上げて、切れ味鋭く楽しませてくれるだろうに、そういう職人監督は半世紀前に絶滅しましたからね。なにもドン・シーゲルというビッグネームを出す必要はない。アンドレ・ド・トス以下だと思われるゴードン・ダグラス、ロバート・D・ウェッブでいいわけです。←つまり今回のパチモン監督の出来は、ポール・ウェンドコスかドン・テイラー(「ファイナル・カウントダウン」を除く)並みでした。ということで今後は当初の方針どおり、パチモン監督の映画には手を出さないようにしたいと思います。

でも一つだけ、アカデミー賞授賞式で熱唱していたシンシア・エリヴォは、アクションスターとして期待できそうです。走り回る感じがなかなかよかった。それと写真3をご覧ください。光陰矢のごとしですね。「刑事ジョン・ブック/目撃者」(1985)のルーカス・ハースです。気づかなかった…。
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