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2019年08月10日05:49

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日本では1/4カットした短縮版しか公開されなかったと、先日鳴り物入りで完全版が公開されたけど、そこまで言う映画じゃない。ウィリアム・フリードキン監督「恐怖の報酬」(1977)。

2時間1分の上映時間ですが、日本公開版(海外版)は92分だったそうです。それを知ったウィリアム・フリードキンが業界紙ヴァラエティに抗議文を掲載したといういわくつきの作品ですが、僕はたまたまアメリカで見ていたので、短縮版を知りません。そしてビデオ発売のときは完全版がソフト化されたので、ついに海外版を見る機会がありませんでした。

そんなこんなで、DVDにもならず、完全版がようやくデジタルリマスターされて昨年公開されたわけです。でも、そこまでする映画かな? 公開当時にアメリカで見たときも、クルーゾオのオリジナルがあればそれでいいじゃないか、と思っていましたね。

デジタルリマスターした完全版ですが、ステレオ効果を確かめるべく音声はステレオ装置に切り替えました。しかし、公開当時の劇場での立体音響にかなうはずがない。1977年ですから、日本ではモノラル公開が当たり前でした。ところがアメリカでは、きちんと4チャンネルステレオだったわけです。

たまたま一緒に見たツアー同行客が、“タンジェリン・ドリームが音楽を担当している”ということで参加し、その立体音響の素晴らしさをいろいろ語っていました。音楽関係者とのプライベートなツアーだったから、そんな話ができたわけです。でも同じときに見た「スター・ウォーズ」の70ミリによる圧倒的な音響に比べるとイマイチだった気がしますね。

このとき、僕はまだクルーゾオ版は2時間13分のリバイバル公開版しか見ていませんでしたが、あちらと同じように車が走り出すまで1時間近くかかるけれど、4人のドライバーたちの過去をいろいろ描くフリードキン版は、その分“はきだめ”のような南米の町に対する洞察というものがありません。

ペーター・バン・アイクがドイツで収監されていたという“深さ”が、ブルーノ・クレメールの金融詐欺に置き換わってしまい、陽気なイタリア人フォルコ・ルリが消えてアミドゥ演じるアラブゲリラだなんて、人物設計の初歩を間違えている。シャルル・ヴァネルが演じた切れ者が単なる殺し屋だなんて、クルーゾオへの献辞が泣くというものです。

にもかかわらず、“初の完全版劇場公開”という宣伝文句につられて駆けつけた皆さん、お疲れさまでした。“テレビで映画は見ない”なんて気取っているから、コロリと騙されるわけです。僕のように海外版を一度も見たことのない人間の言い分を素直にお聞きなさい(笑)。

ところで僕は、92分の短縮版がどことどこをカットしていたのか知りません。今回確認したのは、連中の過去を描いた冒頭部分が24分あったということ。それをすべてカットしても、あと数分カットしたことになります。自暴自棄になったロイ・シャイダーが、ツタの絡まるジャングルを鉈で切り進もうとする場面かな?

ま、監督さんとしては、無断で1/4もカットされたら泣いて抗議するでしょうね。その気持ちは分かりますが、だからといって完全版をありがたがるというのは、オリジナルを知らない“若さ”でしかありませんよ。

ところで僕は、原題の「Sorcerer」という言葉はロイ・シャイダーたちの車の名前だと思っていたのですが、今回見るとアミドゥたちの車にも横に「Sorcerer」と書いてありました。なんでやねん?
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