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2019年02月05日10:37

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【バレエ】Kバレエ「ベートーヴェン第九/アルルの女」(2日マチソワ/3日)

「舞台は良かったけど、観客がね」

と、お師匠さま。

そういえば熊さん、もう踊らないのかな、
と寂しく思っていた矢先の登板は2年振りだという。

その前からすでに彼の露出は減っていたから、
Kの観客層も世代交代が進んでいたようで、
今回は客席の高齢者比率が高いのに驚いたという。(笑)
その「高齢観客」が、いろいろやらかしてくれたそうだ。


我が師から「バレエは総合芸術」と説明されていたので、
オケの演奏を無視して頻繁に湧き上がる拍手に、
バレエを見始めた頃はかなり戸惑った。

ダンサーが跳んではパチパチ、回ってはパチパチ、
舞台最後の余韻などお構いなしに上がる歓声は、
クラコンからきた者には鬱陶しくてたまらなかった。
バレエは「総合芸術」じゃなかったのか? オケに失礼だろ?
ぼーっと拍手してんじゃねえよ! と、ひとり憤慨していた。(笑)

『思わず「ブラヴォー!!」って叫んでました』

と、今回の舞台を御覧になったマイミクさんが語っていたように、
本来拍手やブラボーは、昂揚した感情が心の中に収まりきらず、
マイミクさんのように“思わず”飛び出してしまったものであって、
お約束だからとか、周囲に合わせてするものではない。

よってお手軽に湧き上がる拍手を聞くたびに、
その程度の技、誰でもできるだろ? とか、
演出上、そこは拍手は控える場面だろ? とか、
バレエではなく曲芸を見に来たのか? と、
心の中でハリセンを振り回している。(笑)

心中の怒りが伝わったのか、
さすがに最近は、バレエを観にきたのか、
拍手をしに来たのかわからない客は減りつつあるが、
今回の熊さんの登板日は違ったそうだ。

舞台の進行や演出などはいっさい無視し、
熊さんの一挙手一投足に拍手が湧き上がり、
彼の姿が見えなくなると、おとなしく寝るのは良い方で、
ガサゴソ雑音を立てはじめる始末。

感想を聞いているうちに、
アイドルのショーだかバレエ公演だかわからない、
Kの昔の客席の様子が脳内に蘇ってしまった。

以前、熊さんが「観客を育てる」と語った時は、
「目の前の舞台」ではなく「ブランド」しか見ない、
頭の悪いバレエ・ファンをイメージしているのだろうと思ったが、
もしかしたら自分にくっついてしまった痛いファンのことも、
含まれていたのかもしれない。


Kの「第九」は4回目だが6年振り。そんなにやってなかったのか。
一方「アルルの女」は3年振りだが、
初演時はトリプルビルの1本としてPDDのみだったから、
全幕は今回が初めてとなる。

それにしても、Kの公式サイトは使えない。
この手の情報が薄く、作品紹介も短くおざなりだ。
日頃NBSなどの解説にケチを付けているが、(笑)
日程と主要配役の表を載せただけのKに比べれば、
特設サイトを設けて見所を解説したりと遙かに親切だ。

Kの舞台はあれほど丁寧でプロフェッショナルなのに、
番宣のお知らせを放映日当日にアップしたりと、
公式サイトのやる気のなさにはがっかりする。
今の担当者はクビにして、
もう少し有能な人を雇った方が良くないか?


不肖の弟子が港でぼーっとしていた週末、
我が師は渋谷詣でをされていた。
以下はその感想で、観覧回の主要配役は次の通り。

●2日マチネ

第九:熊川
アルル:フレデリ/益子、ヴィヴェット毛利

●2日ソワレ

第九:中村
アルル:フレデリ/宮尾、ヴィヴェット/荒井

●3日楽日

第九:熊川
アルル:フレデリ/遅沢、ヴィヴェット中村


第九第四楽章の熊さんの衣装が変わっていた。
以前は白Tに黒スパッツだったよね。
たぶん、祥子さんと衣装を同じにするためだと思う。
サイズは違うだろうけど、イメージを同じにしたいのだろうね。

白Tは右肩のみの斜めカット、黒スパッツは同じだけど、
シフォンの黒い布を左肩から斜めに纏ってる。
そのため上は白と黒のVネックみたいになって、
下はアシメントリーのスカート的な感じで中性的な雰囲気。

祥子さんには凄く似合いそうだけど、
正直、熊さんは白Tと黒スパッツの方がスッキリする。
ディアナとか神話的な衣装を長くした感じなので、
神々しさは出る。たぶん、それも狙ったんだろうな。

益子くんのフレデリは全力! というか気合いが凄くて、
観ている方も緊張した。
一途でストイックな感じがフレデリに合ってた。
一途って方向性を間違えると狂気に陥りやすい。

まだこなれてはいないから、振付がクリアに見えて、
それはそれで新鮮だった。こういう振付だったんだな、と。

リアブコさんとかボッレさんとか、
踊り慣れた人は自分のものにしてる分、
感情表現の方に振れて振付は見えにくくなる。
益子くんはまだ振付に感情を乗せている段階だから、
振付がクリアに見える。

テクニック的には、
踊り慣れた古典なら乱れないような着地があったりと、
小さなミスはあったけど、
それよりもアルルの女の存在をハッキリと見せてくれた方が大きい。

オケは最初、ちょっと弱め? という箇所もあったものの良かったと思うよ。
(その後のお話では、昨今の傾向通り、マチネよりソワレ、
ソワレより楽日と、次第に調子を上げ、迫力も増したそうだ)

ただし観客がイマイチ。
何故かと思ったら熊さん目当ての年配者が多くて、
回ったら拍手、ジャンプしたら拍手、とパブロフの犬かと思う。

フレデリが窓から飛び降りる前の狂気に取り憑かれたマネージュ、
あの鬼気迫る緊迫した場面で拍手するか? と。
もちろん、観客全体ではなく、ガサガサしてるのと同じ辺りの連中。

第九も歌声が続いているのに、ジャンプしたら拍手、
熊さんがはけると拍手、とか。もう音楽性無視。
作品は音楽性に溢れているのに。

そういう人たちは穏やかな第三楽章で、
もれなく飽きて落ち着きが無くなるか、寝落ちしてる。
もう! って感じ。

でも、Kスクールの生徒さんらしき子も、
上演中にペットボトルを飲んだりもしてるんだよね。
キャップを開閉する音も意外と気になる。マナーも教えてくれないかな。
細身で手脚が長くて頭も小さくて髪をまとめてるから目立つのに。残念。

キャストでずいぶん印象が異なるものだね。
第九は熊さんから祥子さんと男性から女性に変わったこともあって、
余計に作品の印象が違う。
大きなテーマ、火(大地の叫び)、水(海からの創世)、
植物(生命の誕生)、ヒト(母なる星)というのは変わらないのだけど。

熊さんの時は太陽と月が宮尾くんと遅沢さん。
祥子さんの時は太陽=西口くん、月=廉くん。
熊さんの圧倒的な存在感と、
宮尾くん&遅沢さんという力強さが際立つ第九。
祥子さんの回は神々しさと、
西口くん&廉くんという清々しく美しさが際立つ第九。

やっぱり今回の衣装は祥子さんに似合う。
祥子さんはポワントなので、ポワントバランスを見せたのだけど、
まだ歌声も演奏も続いているのに急に拍手が。
なんだか作品が中断された感じ。
とても綺麗なホールケーキに、急にナイフを入れられた感じというか。

宮尾くんのフレデリは、益子くんとは全然違うタイプで、
翻弄されて導かれて窓から身を投げた感じ。
ナイーブさがアルルの女に惑わされる要因というか。
狂気は感じなかった

ヴィヴェットとの結婚を頑なに拒んでいるような益子くんとは違い、
困惑しているというか浮かない感じというか。
アルルの女に対しても手が届かない憧れの存在として捉えているようで、
切ない想いを抱えているような様子。
目の前にはヴィヴェットがいるし、でも届かないアルルの女が頭から消えない。
情熱的というより幻影に惑わされ囚われている男。

荒井さんのヴィヴェットは、フレデリとの結婚が本当に嬉しそうで、
冒頭では幸せいっぱいの笑顔。
隣の浮かない顔のフレデリの様子には気づいていない。
この幸せそうな笑顔が後半との落差で切なさを増す。

ちょっと様子がおかしいかも、
と不安な気持ちが幸せを押しのけていくのが、
フレデリを見守る背中から伝わってくる。
それでも愛情に溢れた楽しかった日々を思い出せば大丈夫、
と試行錯誤するものの、
後半二人きりになり衣装の上着を脱ぐ辺りから、
困惑と切なる訴えが浮き彫りになる。
フレデリがシャツを脱ぎ始める頃には穏やかな表情の中に、
もうフレデリは戻ってこないという現実を受け止め、
別れのキスをして涙とシャツを抱えて去って行く。

いじらしく切ないのだけれど、
苦しんでもがいていたヴィヴェットから、
諦めというより受け入れた包容力を感じた。
ヴィヴェットがジゼルなら、
アルルの女はシルフィードやウィリみたいなものなのかな。

益子くんのフレデリだと、全身で頑なに結婚を拒否しているので、
毛利さんのヴィヴェットは気づかないのかな? とも思うのだけど、
若いカップルと考えれば、
フレデリとの結婚が嬉しくて彼の様子が見えていないとも言える。
いじらしさ、というのは見えなかったけれど、
幸せから不安、焦燥と切なさは十分に伝わってきた。

益子くんのフレデリはアルルの女に対する気持ちが強すぎて、
ヴィヴェットが気の毒でありながら、ヴィヴェットの印象が薄くなる。
益子くんのフレデリはアルルの女を想う時、
嬉しそうというか幸せそうでヴィヴェットが不憫なほど。

全幕なので男女の群舞がいるのだけど、
最初は二人の結婚祝いの雰囲気なので皆んなニコニコしてる。
笑顔でないのはフレデリだけ。

女性群舞は白いブラウスに、濃紺(もしくは黒)のワンピースで、
白いスカーフがあしらってある。
男性群舞は白いシャツに黒のベストとパンツ、赤いカマーベルト。

男性群舞は同じ服装だけど、
ヴィヴェットがフレデリの異変に気付いて悲しむ辺りから、
女性群舞はケープのような布で衣装の白い部分を覆って、
黒服のような様相に変わる。
ヴィヴェットの心境に寄り添うように、舞台の上から華やぎが消えていく。

背景はプロヴァンスの田舎の風景を表しているのだろうけど、
穏やかな田園風景というよりはゴッホの絵のような、
寂しさと不安を感じさせる気がする。
後半二人だけの場面になると風景は黒い布で覆われて背景が無くなり、
ヴィヴェットが消えると、あの窓が現れる。

上から見ると全体が見渡せる利点があると同時に、
舞台裏も見えてしまうことがあるけれど、この演目もそう。

白い窓から暗い舞台裏へ飛び込むわけだから、
マットから外れると怪我につながるよね。
だからマットの外枠は白いテープで囲ってあって、
この範囲から外れないようにと分かるようになっいる。
さらにマット中央には大きく×印が描かれ、
ここを目がけて飛び込んで! となってる。

フレデリの衣装は、ガラ公演の印象で黒だと思っていたけど、
1人だけブラウンなんだね。田舎の純朴な青年という感じがする。
プティは黒を洗練、エレガンスの象徴として用いるけど、
ブラウンってあまり使わないよね。

遅沢さんのフレデリが一番泣けた。
ヴィヴェットを拒んでいるというより、
アルルの女に惹かれている自分には
ヴィヴェットの愛情を受ける資格がないと思っているよう。
だから押し退ける強さはなくて力無くかわすような感じ。

ヴィヴェットが嫌になったわけでも邪魔に思えるわけでもなく、
思い悩んで葛藤してる。その苦悩がとてもよく見える。
そんなに苦しいのにアルルの女のことが忘れられず、
どうしても幻影を消すことができない。

後半、フレデリがシャツを脱ぎ始める少し前、
フレデリが壊れた気がする。

(中村さんのヴィヴェットも良かったそうだが、
感情表現の繊細さでは荒井さんの方が印象的で、
同じ舞台では、つい遅沢さんに注目してしまったという)
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