明治神宮大会や大学選手権で東京六大学と対戦すると完全アウェイとなる。
高校野球に毛の生えた応援は洗練された六大学の応援にはかなわない。神宮をホームとする六大学は間違ってもタッチやアフリカンシンフォニーはやらない。伝統校独特の数多い応援歌を歌い野球応援の基礎となった本場の応援を繰り広げる。そしてスタンドを埋めた観客もノリの良さをガンガン出して、相手チームを凌駕する。
当然だ。急造の地方大学の応援団が毎日神宮で勝つための厳しい応援練習をしていて互いに切磋琢磨している六大学のそれには程遠い。
だが・・・・・
所詮それは応援だ。
戦うのは当然だが選手なのだ・・・
第48回明治神宮大会、大学の部の準々決勝。慶應対環太平洋大学・・・・
東大敗戦からスタートした慶應は次の法政との勝ち点も落とし、優勝には絶対絶命の位置からから上位にいた立教明治に一つの落とさず最後は早慶戦を連勝して6連勝で優勝を勝ち取った。
その中で岩見君の本塁打記録やドラフト指名も相まって盛り上がった慶應。だが・・・
慶應にとって日本一を目指したこの初戦。環太平洋大学は西山君を先発させた。野手投げのような投球は球離れが見づらく六大学では強打を誇った慶應打線を翻弄する。
6回まで慶應が放った安打は2本。四死球やエラーもなく慶應が出した走者は2人だけだったが、それは共に併殺に打ち取られる。6回を終わってきれいに18人で片づけられた。
慶應の先発は都立城東出身の1年生関根君。初回の先頭を三振に取ると安打を許したが盗塁を刺して3者凡退。2回も3人で片づけた。
だが3回には先頭打者を安打で出し、盗塁と捕逸で1死3塁とされると内野ゴロで1点を先制された。
共に譲らない投手戦。関根君は5回2死まで被安打2、奪三振は毎回の6だった。
5回がこの試合を決めたのかもしれない。
環太平洋大学は1死後松本君が2塁打を放ったが牽制球で刺された。チャンスは潰れたかと思われたが松岡君の安打と四球で2死1・2塁。
そこで慶應は投手を関根君から高橋君に代えた。そしてそのピンチは退けた。
ほぼ完全に抑えていたとも言える環太平洋大学は7回から予定とおりなのか西山君から岩永君に投手を変え、その後も又吉君、大原君と1イニングごとに継投した。
逆に慶應は継投がこらえ切れなかった。8回にエラーで出した走者は送りバントを2塁で封殺しが、その後ボークで進塁を許すと4連打を浴びて4点を失った。
8回には慶應が四死球で2人の走者を出したが併殺に切ってとられた。
最終回、慶應は岩見君のタイムリーで1点を返し完封を逃れるのが精一杯だった。
スマートに整然と応援をする慶應。高校野球レベルの熱狂的な応援をする環太平洋大学。どっちが勝ちかは関係ない。勝ったのは環太平洋大学なのだ。
試合終盤にはネクタイ姿の学生もチアの振り付けを完璧に覚えて応援していた。最後はダサい応援がすごい応援になっていた。
応援は声だ。伝統校がいくつもある応援歌を歌い、チアの技術の違いを見せつける。だが応援は声なのだ。間違ってもこれは応援コンクールではなく野球の試合なのだから・・・
最後には環太平洋大学の応援に一体感があった。そしてそれは慶應を凌駕した。
慶應はまったく打てなかった。それがすべてだ。慶應の先発投手関根君は1年生ながら試合を作ったが・・・・
下剋上という言葉が適切かどうかはわからない。ただプロ野球で聞いた言葉だ。だが、地方大学が六大学や東都に本気で立ち向かってくるというのは当然だろう。食ってやろう。負けてもともとだ・・・
当たり前の世界である。それに勝って初めて王者である。
陸の王者が陥落した瞬間だった。
2017年11月11日 第48回明治神宮大会 大学の部 準々決勝(明治神宮野球場)
環太平洋大学
001 000 040 = 5
000 000 001 = 1
慶應義塾
ログインしてコメントを確認・投稿する