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2015年11月28日22:37
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ジョゼフ・コーネル
絵の住処(すみか)
〜作品が暮らす11の部屋〜
@DIC川村記念美術館
なかなか行けませんが環境もコレクションも素晴らしい美術館です。
今回は企画展関連講座のタイトルがコーネルがらみとのことで
楽しみにしていきました。
まずは池を巡り、紅葉も見頃な庭園に出て
ヘンリー・ムーアにご挨拶。
館内に入ると、11の展示室毎にテーマを決めてコレクションが並んでいました。
そう、こちらでは企画展示を見るのは最後、
まずは収蔵作品を見るという動線になっているのです。
部屋番号とテーマ、アーティストは次の通り。
◆101:欧州近代絵画の部屋
ﾋﾟｻﾛ、ﾓﾈ、ｼﾀﾞﾈﾙ、ﾙﾉﾜｰﾙ、ﾎﾞﾅｰﾙ、
ｼｬｶﾞｰﾙ、ﾌｼﾞﾀ
◆102:レンブラント・ファン・レインの部屋
ﾚﾝﾌﾞﾗﾝﾄ-ﾌｧﾝ-ﾚｲﾝ
◆103:彫刻の部屋
ﾛﾀﾞﾝ、ﾏｲﾖｰﾙ、ﾌﾞﾗﾝｸｰｼ
◆110:日本画の部屋
鏑木清孝、関智之、尾形光琳、池上秀畝
◆104:前衛芸術の部屋
ｶﾝﾃﾞｨﾝｽｷｰ、ｴﾙﾝｽﾄ、ﾏﾚｰｳﾞｨﾁ、ｱﾙﾌﾞ、ﾏｸﾞﾘｯﾄ、
ﾏﾝﾚｲ、ｳﾞｨﾙｽ
◆105:コーネルの部屋
ｺｰﾈﾙ
◆106:ロスコの部屋
ﾛｽｺ
◆200:バーネットニューマンの部屋
ﾎﾟﾛｯｸ、ﾗｲﾝﾊｰﾄ、ﾃﾞﾋﾞｯﾄｴｱｰ
◆201:フランク・ステラの部屋
ﾌﾗﾝｸ-ｽﾃﾗ
◆202:絵画の部屋
ｸﾗｲﾝ、李禹煥、ﾄｩｵﾝﾌﾞﾘｰ、中西夏之、ﾗｲﾘｰ
◆203:企画展の部屋
ｳｫｰﾎﾙ、ｼﾞｬｽﾊﾟｰｼﾞｮｰﾝｽﾞ、ｼｰｶﾞﾙ、
ﾘｷﾃﾝｽﾀｲﾝ、、、、
コレクションのすごさがわかります。
なかでも不動なのは、ロスコのシーグラム絵画がずらりと並ぶ「ロスコルーム」と
ジョゼフ・コーネルの部屋。
コーネルは、小さな木箱の中に独特な世界を閉じ込める作品で有名です。
私が川村へ行くのはコーネルに会いたい時。
今回は、コーネルがイベントのテーマとなっていることもあり
「箱」7点、コラージュ11点の充実ぶりでした。
今回はじめてみた《ピアノ》。
屋根と側面にドニゼッティなどの楽譜を貼った箱です。箱のなかは2段棚があり
上の棚にはやはり楽譜を貼られたマッチ箱のようなもの。
一番下の棚の左にオルゴールの機械、
右には青白いキューピッド。
箱の背後のゼンマイを巻くと、オルゴールがモーツァルトのピアノソナタ・ハ長調を奏でます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
講演会にも参加しました。
『コーネルとその数式』
平出隆(詩人、多摩美大教授)
タイトルの通り幅広く、大変印象的なお話でした。
コーネルの箱は平面・立体のコラージュでできており、だれでも作れそうに見えます。
そこで多摩美大で学生に作らせてみるが、できない。
なぜか？
「皆、自分の思い出をなかに入れてしまうんです」。。。
まず、コーネルは基本的に描きません。
そこがマックス・エルンストやマルセル・デュシャンと違うところでもあり、彼は画家ではありません。
ただし、塗ることはする。
要するにテクスチャーは作っているのであり、
単純であるほどテクスチャーは大切になる。
そして彼は単なるセンチメンタリズムで製作していない。
彼には《不確定性原理》という作品もあり、
量子力学や数学にも多大な興味を持っていたようであるし
800以上という多作ぶりからして何らかの原理を持っていたはず。
それはなにか。
ここで一冊の本が紹介されました。
『空間の詩学』ガストン・バシュラール(思想社)
建築を専攻する人にはお馴染みのものだそうですが。
目次を見てびっくり。
…第2章 家と宇宙
第3章 引出し、箱及び戸棚
第4章 巣
第5章 貝殻
第6章 片隅
第7章 ミニアチュール
第8章 内密の無限性…
と、そのままコーネルに当てはまりそうな内容です。
科学と詩が平行して進んでいた思想家の最後の著作だそうで、
コーネルも、頭のなかには科学もフル回転していたのではないか。
ここでお話は数学へ。
『数学とは何か』(岩波書店)
をあげながらお話は数学の歴史へ展開します。
自然数
整数
分数
小数
有理数
無理数
実数
複素数
そして虚数…
虚数imaginary number とは
x^2+1=0 の解であり
i^2=-1
i=√-1
全て数字は a+b*i と表され
ここで + は混ざらないという意味である。
a=0 のとき b*i →一物仕立て(俳句用語)
b=0 のとき a→芸術でない日常伝達言語
ちなみに俳句の作り方を言えば
キレを入れ、季語を入れたうえで
「一物仕立て」か「二物衝撃」、3つに分かれてはダメです。
例えば
◆葱買うて 枯木の中を 帰りけり(蕪村)→一物仕立て
◆涼しさや鐘を離るる 鐘の声(蕪村)→二物衝撃
つまり二物衝撃は2つのパートに分かれていて違うものを組み合わせている、
ということはコラージュと同じである。
さらに俳句はあまりに短いのでクラウドに皆の共通理解をためておいて(季語など)それを下ろしてきて使う。
つまり 実数aは作者の衝動という小さな空間だが、
i という皆の持っているものを組み合わせることにより大きな空間に広がって行く。
それと同じようにコーネルも自分の経験やありふれた印刷物から
虚に上がって行き、それが実と入れ替わるのではないか。
1�短擁�の土地があったとして、
それが失われたとき
「あれがあったら１平方�辰世辰燭福廚伐�かしく考えるだけでなく
「なくなったままの１平方�叩廚鮃佑┐襪里�虚数的な考え方。
コーネルは失われた場所を「そのまま表している」ので
幻惑が起こり虚と実の入れ代わり運動がおきている。
すごい芸術作品はかならず大きな世界を含み、
それが交代する運動まで内包している、のだそうです。
エルンストが「コラージュ」を発見したのも、
「様々な科学の教材テキストを目にして全てがぐるぐるとまわり、その混沌から」生まれたそうですし。
コーネルも箱を作るときにはそうした面白さに引きずりこまれていたのかも。
そう考えると、一生NYから出なくても、決して狭い世界で生きていたわけではなさそうな気がしてきます。
お話のあと、もう一度会場を廻りました。
なんだかアート全体のみかたが変わったような気がします。
1月11日まで。
http://
〜作品が暮らす11の部屋〜
@DIC川村記念美術館
なかなか行けませんが環境もコレクションも素晴らしい美術館です。
今回は企画展関連講座のタイトルがコーネルがらみとのことで
楽しみにしていきました。
まずは池を巡り、紅葉も見頃な庭園に出て
ヘンリー・ムーアにご挨拶。
館内に入ると、11の展示室毎にテーマを決めてコレクションが並んでいました。
そう、こちらでは企画展示を見るのは最後、
まずは収蔵作品を見るという動線になっているのです。
部屋番号とテーマ、アーティストは次の通り。
◆101:欧州近代絵画の部屋
ﾋﾟｻﾛ、ﾓﾈ、ｼﾀﾞﾈﾙ、ﾙﾉﾜｰﾙ、ﾎﾞﾅｰﾙ、
ｼｬｶﾞｰﾙ、ﾌｼﾞﾀ
◆102:レンブラント・ファン・レインの部屋
ﾚﾝﾌﾞﾗﾝﾄ-ﾌｧﾝ-ﾚｲﾝ
◆103:彫刻の部屋
ﾛﾀﾞﾝ、ﾏｲﾖｰﾙ、ﾌﾞﾗﾝｸｰｼ
◆110:日本画の部屋
鏑木清孝、関智之、尾形光琳、池上秀畝
◆104:前衛芸術の部屋
ｶﾝﾃﾞｨﾝｽｷｰ、ｴﾙﾝｽﾄ、ﾏﾚｰｳﾞｨﾁ、ｱﾙﾌﾞ、ﾏｸﾞﾘｯﾄ、
ﾏﾝﾚｲ、ｳﾞｨﾙｽ
◆105:コーネルの部屋
ｺｰﾈﾙ
◆106:ロスコの部屋
ﾛｽｺ
◆200:バーネットニューマンの部屋
ﾎﾟﾛｯｸ、ﾗｲﾝﾊｰﾄ、ﾃﾞﾋﾞｯﾄｴｱｰ
◆201:フランク・ステラの部屋
ﾌﾗﾝｸ-ｽﾃﾗ
◆202:絵画の部屋
ｸﾗｲﾝ、李禹煥、ﾄｩｵﾝﾌﾞﾘｰ、中西夏之、ﾗｲﾘｰ
◆203:企画展の部屋
ｳｫｰﾎﾙ、ｼﾞｬｽﾊﾟｰｼﾞｮｰﾝｽﾞ、ｼｰｶﾞﾙ、
ﾘｷﾃﾝｽﾀｲﾝ、、、、
コレクションのすごさがわかります。
なかでも不動なのは、ロスコのシーグラム絵画がずらりと並ぶ「ロスコルーム」と
ジョゼフ・コーネルの部屋。
コーネルは、小さな木箱の中に独特な世界を閉じ込める作品で有名です。
私が川村へ行くのはコーネルに会いたい時。
今回は、コーネルがイベントのテーマとなっていることもあり
「箱」7点、コラージュ11点の充実ぶりでした。
今回はじめてみた《ピアノ》。
屋根と側面にドニゼッティなどの楽譜を貼った箱です。箱のなかは2段棚があり
上の棚にはやはり楽譜を貼られたマッチ箱のようなもの。
一番下の棚の左にオルゴールの機械、
右には青白いキューピッド。
箱の背後のゼンマイを巻くと、オルゴールがモーツァルトのピアノソナタ・ハ長調を奏でます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
講演会にも参加しました。
『コーネルとその数式』
平出隆(詩人、多摩美大教授)
タイトルの通り幅広く、大変印象的なお話でした。
コーネルの箱は平面・立体のコラージュでできており、だれでも作れそうに見えます。
そこで多摩美大で学生に作らせてみるが、できない。
なぜか？
「皆、自分の思い出をなかに入れてしまうんです」。。。
まず、コーネルは基本的に描きません。
そこがマックス・エルンストやマルセル・デュシャンと違うところでもあり、彼は画家ではありません。
ただし、塗ることはする。
要するにテクスチャーは作っているのであり、
単純であるほどテクスチャーは大切になる。
そして彼は単なるセンチメンタリズムで製作していない。
彼には《不確定性原理》という作品もあり、
量子力学や数学にも多大な興味を持っていたようであるし
800以上という多作ぶりからして何らかの原理を持っていたはず。
それはなにか。
ここで一冊の本が紹介されました。
『空間の詩学』ガストン・バシュラール(思想社)
建築を専攻する人にはお馴染みのものだそうですが。
目次を見てびっくり。
…第2章 家と宇宙
第3章 引出し、箱及び戸棚
第4章 巣
第5章 貝殻
第6章 片隅
第7章 ミニアチュール
第8章 内密の無限性…
と、そのままコーネルに当てはまりそうな内容です。
科学と詩が平行して進んでいた思想家の最後の著作だそうで、
コーネルも、頭のなかには科学もフル回転していたのではないか。
ここでお話は数学へ。
『数学とは何か』(岩波書店)
をあげながらお話は数学の歴史へ展開します。
自然数
整数
分数
小数
有理数
無理数
実数
複素数
そして虚数…
虚数imaginary number とは
x^2+1=0 の解であり
i^2=-1
i=√-1
全て数字は a+b*i と表され
ここで + は混ざらないという意味である。
a=0 のとき b*i →一物仕立て(俳句用語)
b=0 のとき a→芸術でない日常伝達言語
ちなみに俳句の作り方を言えば
キレを入れ、季語を入れたうえで
「一物仕立て」か「二物衝撃」、3つに分かれてはダメです。
例えば
◆葱買うて 枯木の中を 帰りけり(蕪村)→一物仕立て
◆涼しさや鐘を離るる 鐘の声(蕪村)→二物衝撃
つまり二物衝撃は2つのパートに分かれていて違うものを組み合わせている、
ということはコラージュと同じである。
さらに俳句はあまりに短いのでクラウドに皆の共通理解をためておいて(季語など)それを下ろしてきて使う。
つまり 実数aは作者の衝動という小さな空間だが、
i という皆の持っているものを組み合わせることにより大きな空間に広がって行く。
それと同じようにコーネルも自分の経験やありふれた印刷物から
虚に上がって行き、それが実と入れ替わるのではないか。
1�短擁�の土地があったとして、
それが失われたとき
「あれがあったら１平方�辰世辰燭福廚伐�かしく考えるだけでなく
「なくなったままの１平方�叩廚鮃佑┐襪里�虚数的な考え方。
コーネルは失われた場所を「そのまま表している」ので
幻惑が起こり虚と実の入れ代わり運動がおきている。
すごい芸術作品はかならず大きな世界を含み、
それが交代する運動まで内包している、のだそうです。
エルンストが「コラージュ」を発見したのも、
「様々な科学の教材テキストを目にして全てがぐるぐるとまわり、その混沌から」生まれたそうですし。
コーネルも箱を作るときにはそうした面白さに引きずりこまれていたのかも。
そう考えると、一生NYから出なくても、決して狭い世界で生きていたわけではなさそうな気がしてきます。
お話のあと、もう一度会場を廻りました。
なんだかアート全体のみかたが変わったような気がします。
1月11日まで。
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