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2011年01月06日13:14

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【バレエ】マールイ(レニングラード国立バレエ)「ジゼル」(その2/28日)

チケットの発売当初、発表された配役はルジさんだけだったので、
年末の忙しい時期ということもあり、27日のみを押さえたところ、
その後相手がシェスタコワさんとわかり、急遽28日も追加した、
というのが裏事情ですが、(^^;)
今回の「ジゼル」は、2日間セットで観ると面白さ倍増でした。

       *     *     *

28日は納会のため、あまたのマールイ・ファン、
ルジ・ファンが涙をのんだことと思いますが、
この日の舞台は、彼ら彼女らだけでなく、
一切の先入観と偏見を捨てて、
すべてのバレエ・ファンに観てほしかったです...。(ToT)

       *     *     *

幕開けから、ルジさんの雰囲気が違っていました。
仲違いが伝えられてから初めて観る2人の舞台だっただけに、
最初は不安でなりませんでしたが、終わってみれば、
主役2人の息がこれ以上ないほどにマッチングした、
映像に残してほしい名演でした。

2人がどれほど深く「ゾーン」に突入していたかは、
何度繰り返されたかわからないカテコにおいて、
最後の最後にやっと戻ってきたことからも窺われます。
シャドルーヒンさん(タコさんのダンナ)やクテポワさん(ルジ奥さん)が、
妬くのではないかというほどの、熱愛ぶりなのです。(^O^)

ルジさん、前日と別人。10から15歳は若返っていました。(^o^)
前日は自分の小屋にさっさと駆け込んでいましたが、
この日はジゼルの家を振り返りながら、心ここにあらずの様子。
ウィルフリードの忠告にも、にこにこしながら耳を塞いで「聞こえな〜い」。
婚約者のことを指摘されると、真顔で悩んでから、ぱっと笑顔になり、
「あとで考えるさ〜♪」(^O^)

彼女を誘う様子もプレイボーイではなく、恋人同士のじゃれあいそのもの。
具合が悪くなったときは、本当に心配そうでした。
今日のアルブレヒトは、ジゼルが大好きなんですね。(^^)

大公たちにばれても、「天気が良いものですから、ちょっと散歩に」
と誤魔化してました。そうそう、その手がありましたね。(^o^)
1幕のラストも、抱きしめるバージョンではありませんでしたが、
去りかけては戻りを繰り返し、狼狽する心象が手に取るようにわかります。

またミルタとの遣り取りは、前日が命乞いだったのに対し、
この日は己の犯した罪に対する懺悔のように思えました。
それだけジゼルの事を想っていたのでしょう。
前日泣けなかった理由のひとつは、
2人が相思相愛ではなかったからなのだろうな。

27日公演を観た直後は、前述のとおり、
ルジさんの踊りに不満を覚えましたが、帰路の車中でふと、
彼は今、Kのキャシディさんなんだ、と思い至りました。

跳んだり跳ねたり回ったり「だけ」を、
踊り手に求める人たちには不満でしょうが、
ダンサーの「技術」はそれだけではありません。
ベテランにはベテランの、
経験が未熟な者にはまだ醸しだせない魅力があります。

そうは言っても、体力的な衰えがあるのも事実ですし、
高度な体術もまたバレエの魅力のひとつですが、
それらは今回のようにペザント担当たちに頑張ってもらえば良いわけで、
高齢の主演ダンサーに代わり、別の者がヴァリを担当するというのは、
バレエでは昔から使われていた手法です。

そういえば、「白鳥」の大宮公演では、
ヤフニューク君が王子の弟のような顔をして一緒に登場し、
ヴァリを踊っていたそうですね。(^O^)
4日のソワレもそうだったのでしょうか。

ガラ公演と違って、全幕物の場合、
「作品」として成り立っていれば問題ないわけで、
ルジさんの美しい所作と表現力、存在感は、
そうおいそれと他のダンサーがマネできるものではありません。
改めて、凄いダンサーだと感服しました。(^^)

そのベテラン・ダンサーと、
対等に渡り合うシェスタコワさんも、やはり凄い人です。(*^^*)

単純にステップの技術という意味では、
ペレンちゃん、タコさんと肩を並べつつあり、
パによっては彼女の方が安定している場面もありましたが、
タコさんは、その先を歩んでいました。

どのくらい彼女が素晴らしい踊り手であるか、
ボキャ貧民の私には、もう例えるくらいしかできません。
吉田都さんやコジョカルさん、
ベスメルトノワさん、フェリさんの領域にいる人、
と言えば、イメージは伝わるでしょうか。
これだけの人が無名だなんて!(>_<)

以前から、バレエのダンス・テクニックはツールであって、
プロなら自在に使いこなせて当たり前、
それらを使って何を表現するかが大事、と主張してきましたが、
(同じことを、ベテラン・ダンサーたちもインタビューで語っていました)
タコさんは、その具現者のひとりなのです。

ルジさんがアルブレヒトという人物であったのと同様に、
舞台上の彼女は、まさにジゼルという、ひとりの女性でした。
ペレンちゃんは、ツールの扱いは確かに上達していましたが、
まだ「ジセル」を演じている段階で、そこも泣けない理由だったのでしょう。

都さんは、踊る前に自分の役を深く掘り下げることで有名ですが、
タコさんも同様だということは、同じ役でも毎回違う解釈や、
舞台上のなにげない動きからも窺えます。

たとえば、有名な花占い場面では、ぷちぷち引っこ抜いた花びら、
そのまま地面に捨ててしまうのが一般的ですが、
タコさんほか一部のダンサーは、
「好き」の花びらは大切そうにスカートの上に載せます。(^^)

また1幕で、横一列に並んだ群舞の片端にアルブレヒト、
反対側にジゼルが位置し、時計の針のように回る場面では、
大抵のダンサーはさっさと所定のポジションに走り込みますが、
彼女はまだ具合が悪そうに緩慢な動きで移動し、
回転が始まってから遅れ気味に合流します。

これはカルラ・フラッチさんもやっていた演出で、
去年コジョカルさんが病弱の表現としてやっていた、
音を遅らせ気味にとるステップにも通ずるものです。

2幕、アルブレヒトやミルタに花束を渡す場面では、
これまた多くのダンサーが無造作に投げ落しますが、
先日のタコさんは、アルブレヒトにはそっと手渡し、
ミルタに対しては、捧ずるかのように、丁寧に置いていました。

すべての動きには意味があり、
それらを丁寧に解析し、自然な動きにみせる。
彼女の魅力のひとつです。(*^^*)

       *     *     *

群舞が踊っている時、ふと舞台袖に目をやると、
ノボショーロワ母さん、ハンスの置いて行った花束を取り上げて、
あら、いつのまに? 綺麗なお花ね、と眺めたり、
群舞に合わせて腰を振り振り、昔は私も踊ってたのよ、
といわんばかりの笑顔。だからジゼルも踊りが好きなんだ、
と観る者に想像させます。(^^)

ツァル・ハンスもいい味出してます。
オマール・ハンスよりもアクションが大仰で、
2幕、目をひんむいてミルタにおののく様子には、
思わず噴き出しそうになりました。(^O^)

ミルタはステパノワさん。
以前は、まさに冷酷な森の女王でしたが、今回は?
と思って観ていると、登場場面から雰囲気が違います。
動きが柔らかく、力で押さえつけるというよりも、
ウィリたちはその威厳に自ずから従っているという感じ。

けれどそれは仲間に対してのみで、
愚かな男どもには恐怖の象徴でした。(^^;)
ハンスと対峙する場面では、群舞、ドゥ・ウィリに続いて、
「ラスボス登場」(師匠談)。(^O^)

極めつけは、命乞いするハンスに背を向けるシーン。
クテポワさんの冷たい微笑みには目から鱗でしたが、
ステパノワさんは、なんと! 口を開けての高笑い!(^O^)

彼女の踊りのレベルや男前な雰囲気は、
パリオペのジロさんに比肩しますが、
「ジロさんのミルタより面白い」とお師匠さま。(^o^)

ペザントはヤパーロワちゃんとヤフニューク君。
ふたりとも着実に伸びつつあります。(^^)

この日のセミョーノワ・バチルドは、原典に近いものでした。
ネックレスの場面では、互いの婚約者について語るマイムもあり、
ジゼルが踊りを披露する時は、笑顔で拍手するなど、
感じの良いお嬢様。(^^)

群舞は、6日間7公演の最終日とあって、
さすがに足音は以前より響くようになりましたが、それでも静かな人は静か。
相変わらず大きな踊りで、揃い具合もいい感じ。(^^)

感情的な新国マンセーたちには、
この違いを、どう説明しても理解してもらえないのですが、
小野さん級がたくさんいる群舞、といえば伝わるのかなぁ。
マールイと国内バレエ団は、公演数や教育環境からして、
プロとアマチュア並みの差があるのですから、レベルが違って当然、
同じと考える方に無理があるのですがねぇ。(^^;)

       *     *     *

個別に良かったところを並べてみましたが、
この日のいちばんの見どころは、実は舞台の統一感でした。

主役2人のハイレベルなパートナーシップは、もちろん特筆ものですが、
ソリスト、群舞たちも主役2人を気持ち良く支え、
さらに他の日は踊りとの乖離感を感じたブベルニコフさんの指揮ぶりも、
この日はダンサーたちの踊りと混然一体となり、
まさに「ひとつの舞台」を形作っていたのです。

本気モードのボリショイやマリインスキーを凌ぐとは言いません。
けれど、2010年の観覧締めくくりとしては、
願ってもない、最高の舞台でした。(^^)
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