さて、3日の主役についてです。
マチネはコシェレワさんとコリパエフ君。
コリパエフ君、大躍進とは言いませんが、上手になっていました。
テクニックもそうですが、なにより落ちつきが感じられます。
こうなると、長い手足はサポートに有利です。
大柄にもかかわらず「ちょっと可愛い」雰囲気はあいかわらずで、
優柔不断なジーク王子にはちょうどいいかもしれませんが、(^o^)
恋人関係というよりは姉弟、
「お姉さんはあなたを信じてるから、頑張ってね、という感じ」(師匠談)
というのは、「白鳥」の物語として、アリなんでしょうか。(^^;)
コシェレワさんは、さらに躍進というわけではありませんが、
順調に経験を重ねているというか、
次の飛躍に向けて力を蓄えている、という印象でした。
32回転のフェッテではポワントが落ちてしまいましたが、これは前述のように、
暴走したオケと、それを制御できなかった指揮者の責任でもあります。
もともと突っ走り傾向にあるマールイオケ、手綱をうまくひいてやらないと、
とんでもないことになります。(uu;)
それにしてもあのテンポに、ダンサーたち、
そして奏者自身、よくついていくなあ。(^^;)
1時間半の休憩をおいたソワレの主役は、
シェスタコワさんとプハチョフさん。
プハチョフさん、かつらがヘンです。(uu;)
誰かなんとかしてあげればいいのに。
かつらはともかく、彼もまたさりげなく上達していました。(^^)
先日武蔵野でも思ったのですが、滑らかで上品な踊りはそのままに、
パのつながりがさらに良くなっていました。
演技に関してなるほどと思ったのは、
「白鳥」というとジークがひたすらオデットにアプローチするイメージですが、
オデットの「助けてください!」という懇願に、
彼は一度背を向け、片手を上げて、「いや、それは無理です」
というセリフが聞こえそうな仕草をしていました。
そして短い逡巡を経てオデットを抱きしめるのですが、
これが後で述べるタコさんの演技を生かすことになります。
よく知られている物語だけに、
そのあたりを観る側もつい軽く流しがちですが、
いくら一目惚れしたとはいえ、成人式を迎えたばかりの王子が、
女性を白鳥に変身させてしまうような力をもつ魔物に勝てるわけがなく、
勢いでOKしてしまうような王子の方が信用できません。
まあ、気持ちにウソはないとしても、
あっさり返り討ちに会うのが関の山でしょう。(^^;)
そのへんの演出は、彼のオリジナルというよりは、
タコさんと一緒に作り上げたものではないでしょうか。
彼女のご主人シャドルーヒンさんが、事実上引退?
状態にあることを考えると、
今後この2人が組む機会は増えそうですが、
パートナーシップも良い感じです。(^^)
そして、マイ・フェイバリット・ダンサー、タコさんについて。
久しぶりに、「白鳥」を観て泣きました。
プログラムからボヤルチコフさんの名前が消え、
ところどころ振付や演出が変わっていましたが、
マールイの音楽院バレエ演出振付研究所版ベースは同じで、
最後は2人が入水自殺してロットを道連れにし、
あの世で結ばれる、という悲劇仕立てのエンディングです。
今回のタコさんの解釈は、変化球なしの直球勝負で、
オデットは血の通う女性の変化(へんげ)。
わが身に起こった不幸を切々と語り、
迷った末にともに戦うことを決意してくれた王子への想い、信じた人の裏切り、
最後は彼の勘違いだったという言葉を信じ、許したように思えたのですが、
彼の気持ちが自分にあったことへの喜び、
けれど状況を覆すことはもはや不可能であり、
2人の想いを遂げるにはあの世へ行くしかないという、
悲しみと喜びの間をさまよう彼女の気持ちがひしひしと伝わってきて、
不覚にも落涙してしまいました。
も〜お、彼女には、いったい何度泣かされるんだ、私は。(uu;)
オディールも、去年の操り人形から一転、
ロットと一緒にジークを騙すのが楽しくて仕方ない、という悪女。
ただしその身のこなしはあくまでも上品で優雅、
悲しみの表情と笑顔で白黒の違いを出していたのですが、
踊りの質を変える以上に説得力があったのは、
演技派である彼女ならでしょう。
白鳥姫というと、ロパートキナさんに代表されるように、
孤高の姫様というイメージと、
ヴィシニョーワさんのような生身の人間に大別されますが、
これについてお師匠さまが、興味深い説を語ってくれました。
コシェレワさんは、白鳥から人間に戻った時、微笑んでいたのですが、
その意味するところが私には理解できず、指南を仰いだところ、
「白鳥になってからの時間が違うんじゃないかな」
へ?
「ロパートキナさんは、もうずっと昔に白鳥にされたんだと思う。」
白鳥になってからあまりにも長い時が経ってしまったため、
諦めにも近い達観が彼女の心を支配し、
人間というよりは精霊に近い存在(思考)になってしまい、
人を寄せ付けないのでは、というです。
それに対しコシェレワさんは、まだ白鳥にされたばかりで、
わずかではあるものの元に戻る希望も心のどこかにあり、
その時々の感情が素直に顔に出てくるのだろう。
夜が明けたらまた白鳥に戻ってしまうけれど、
いまこの瞬間は人間に戻れて嬉しい、という気持ち。
そしてシェスタコワさんはその中間。
すでに希望は失ってしまっていたけれど、
まだロパ様ほどの境地には達していない、そんな存在。
...さすが我が師匠。敬服いたします。<(_ _)>
演技に負けず劣らず素晴らしかったのが、その技術でした。
派手さはないけれど、彼女の優雅で安定したテクニックについては、
これまで再三述べてきましたが、今季はさらに磨きがかかっていて、
人間の体はここまで制御できるのだと、
ひたすら目を丸くして見つめていました。(@_@)
贔屓の対象には、誰しもつい評価は甘くなりがちですから、
普段以上に気を付けて観ていましたが、
私の思い描く理想に限りなく近い動き、踊りを、
彼女は観せてくれました。(^^)
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