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2025年02月24日17:30

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ヒプノシス Hipgnosis

ヒプノシス(Hipgnosis)は、ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエル(ポー)によって結成された英国のデザインチーム(1968年〜1983年解散)。ストームは、ピンク・フロイドのシド・バレットやロジャー・ウォーターズとケンブリッジで学生時代より親交があり、彼らのアルバムのジャケットデザインを手掛けるようになった。
フロイドとヒプノシスは、ロックにヴィジュアル革命を起こす。

フロイドの作品群に象徴されるように、アーティスト名やタイトルの文字を排除した、演出された写真や斬新なデザインだけの表現手段はヒプノシスの真髄であり、ロックのレコードジャケットが芸術的なキャンバスとなり得ることを証明した歴史的な仕事だった。70年代にはコンピュータ処理に対応するため、ピーター・クリストファーソンが新たに加入。
70年代ロックの肥大化するビジネス(レコード売り上げや大掛かりなツアー)と向き合いながらも、本来の“夢や物語”を綴ったアートワークは、ロックファンたちの胸に永遠に展示されることになった。そして80年代半ばにはMTV時代を見据えてビデオ制作会社へとシフトチェンジするもあえなく倒産。
ストームはその後デザインの仕事を再開。90年代以降もフロイドのほか、オーディオスレイヴ、マーズ・ヴォルタ、ミューズなどの新世代バンドのヴィジュアル世界を創造した(2013年4月死去)。また、2012年のロンドン五輪開会式イベントでは、ヒプノシスとフロイドの作品群(『狂気』『あなたがここにいてほしい』『アニマルズ』など)がオマージュされていたことは有名。

(ヒプノシスが手掛けた主なアーティスト)*アルファベット順
10CC、AC/DC、バッド・カンパニー、シド・パレット、ブラック・サバス、ブランドX、デフ・レパード、ELO、EL&P、ピーター・フランプトン、ピーター・ガブリエル、ジェネシス、デイヴィッド・ギルモア、サミー・ヘイガー、ロイ・ハーパー、レッド・ツェッペリン、松任谷由実、ポール・マッカートニー、ナイス、アラン・パーソンズ・プロジェクト、ピンク・フロイド、ロバート・プラント、プリティ・シングス、レインボー、トッド・ラングレン、スコーピオンズ、アル・スチュワート、スティクス、Tレックス、ミック・テイラー、UFO、ウイングス、ウィッシュボーン・アッシュ、XTC、イエス



テアトル梅田で映画「ヒプノシス〜レコードジャケットの美学」を見る。アントン・コービン監督初のドキュメンタリー。原題は「Squaring the Circle 」という。Squaring the Circleは古代幾何学の問題で与えられた円と同じ面積の正方形を割り出すという物で、それは不可能らしい。そこで不可能な事をやろうとするという意味もあり、LPジャケットは正方形なので…このタイトルはヒプノシスの仕事とばっちり合致する。
https://www.hipgnosismovie.com/

この映画は、当時なけなしの小遣いでロックのLPをこつこつ買ってた世代にとても響く映画のようで(ノエル・ギャラガー曰く「レコードジャケットは貧乏人のアートコレクション」)、シニアのロックファンの間で静かなるブームが起こっている。とはいえ来週木曜で上映終了してしまうみたい。

私も絵やイラストを描くとき芸術的なジャケットに影響を受けたし(とくにヒプノシスの奇抜なアイデアには触発された)それらが異世界とかシュールレアリズムへの関心につながっていった。当時はロジャー・ディーンの絵が好きでYESのアルバムをジャケ買いコレクションしていた学生時代を思い出して懐かしかった(ロジャー・ディーンもこの映画に出ていた)。

確かに昔のロックのアルバムにはコンセプトがあり、バンドによってはその音楽に社会的影響力があった。アルバムジャケットを見れば聴く前からその主張や世界観を感じとることができた。

ピンク・フロイドの「原子心母」や「狂気」のジャケット。誰でもすぐあぁあれね、って思ってしまうくらい有名だ。では牛やプリズムの写真に一体どういう意味が込められているの?なんか深淵な意味があるのではないかと思ってしまうが、彼らはそういう憶測の無意味さと説明なくインパクトのあるヴィジュアルというタブーに挑戦したところが面白い。

決定的瞬間を切り取って作られるヴィジュアルのすごさ!「炎」(Wish You Were Here)で握手をかわしている男性の一方は体が燃えているがこれはスタントマンを使って、脇で消火器をかまえながら何度もショットを撮った命がけの作業だったそうだ。今ならいくらでもCGで合成できるのだろうが当時はすべてアナログ。

10CCのアルバムでは、ハワイの海岸で精神科医のカウチに羊をのせてジャケットを撮影したり、ウイングスのベストアルバムは、ポール・マッカートニーの希望で、エベレストの山頂まで彫像を運び撮影したという。どんだけ金がかかんねん?というかスタジオで撮影して加工すればすむことじゃないの?まぁその時代は経費は青天井だったのだろうね。

レッド・ツェッペリンのジミーペイジとロバートプラントのインタビューとともに、「聖なる館」や、「イン・スルー・ジ・アウトドア」の撮影秘話なども語られていた。
「In Through The Out Door」はLed Zeppelinの8枚目のアルバムで、ジョン・ボーナムが急死して結局LZとしては最後のアルバムになってしまった。
私も当時ニューアルバムが出るというのでレコード屋に買いにいったが、茶封筒のような袋に入っていてそれがまた斬新だった。安っぽい茶封筒に無印良品の印字がされているとおしゃれに感じるように。袋の中が6種類違ったジャケットであるというのは初めて知った。中身以上に金がかかった、と後にジミーペイジがぼやいている。

サブスクや配信でプレイリストを流し聴きする現代は、そうしたアルバムコンセプトやジャケットのエピソードなどを味わう要素がなにもない。
映画の中でのオアシスのノエル・ギャラガーが言っていた。ノエルが娘に「今からアルバムジャケットの打ち合わせに行ってくる」というと、娘が「アルバムジャケットって何?」と聞く。「 iTunesに表示されるあの小さな写真だよ」と答えると、娘に「あんなものに打ち合わせが必要なの?」と言われたと。

音楽は形のないものだがレコードジャケットは本来音楽の世界観を視覚的に伝え、聴き手の感覚を補完するもの。音楽が単にデータ消費されるだけの存在になったなら、それはとても味気ないものになる。かつてレコードジャケットが担ってきた役割(視覚と聴覚を融合させた芸術性や世界観の表現)は今はPVに取って代わったが、それがかつてと等しい役割を果たしているとは思えない。

レコードジャケットの芸術性は最近再評価され、中古LPを求める若い人も多いという。
古いLPも送料負担なしで買取してくれる業者があり、私は去年実家のLPレコードを処分するときに自分のLPもだいぶ処分した。
記念に写真だけ撮っておこうと頑張って床に並べて撮ったが、改めて並べてみるとなつかしい。確かにレコードジャケットってひとつひとつ(ひとりひとり)に思い出と物語があるんだなぁと改めて感じた。



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