西洋文化の流入で起こった勘違いの価値観

西洋文化の流入で起こった勘違いの価値観
　これは、あまりに専門的で、非常に分かり難いと思う。例えば、ヨーロッパで起こった浮世絵の影響。ヨーロッパの若手画家が、日本の浮世絵に影響を受けたエピソードは有名だが、実は、ヨーロッパの画家達は、勘違いをしてしまったのだ。日本の浮世絵には、距離感も、立体感も描かれていない。影も描かれない。つまり、平面で絵が構成されている。ヨーロッパの画家には、浮世絵が、平面的な絵に見えたのだ。だが、実際は、浮世絵に限らず、日本の絵画は、見立てによって描かれており、別に平面的に描こうとは意図されていなかった。距離感も実は、描かれていたのだ。絵画におけるルール付がされており、例えば山が小さく描かれていれば遠くの山を表す。別に遠くに見えるように描く必要はない。それが、日本の絵画だ。だが、西洋絵画では、遠くに見えるように描き、立体的に見えるように描いていた。同じ、空間表現でも描写の仕方が違ったのだ。つまり、浮世絵は、平面的に描こうとは決して思っていない、意図していないということ。また、類型表現も頻繁に使われていた。これは、絵の学習の仕方の違いによるもので、日本絵画では、お手本があって、それを真似ることから絵の修行が始まる。風景や人物をデッサンするのは、その後。まずは、絵画の類型を学び、それをもとに、オリジナルの絵を描いていた。西洋では、まずは、モデルがいて、モチーフがあって、それをデッサンするところから始まる。もちろん、模写も行われていたし、類型的な学習もなかった訳ではないが、１９世紀頃の西洋絵画では、デッサンが最も重視されていた。極端な話、美術学校で学ぶのは、デッサンのみ、というような状態だった。作品としての絵画制作は、学校を卒業してから行うのが普通だった。浮世絵は、最初は、お手本を模写するところから始まるため、全ての浮世絵が、類型的な特徴を持つようになっていった。お気づきだろうか、そう、漫画と同じなのだ。漫画のキャラは、類型的だと言われる。日本の漫画やアニメは、独特のキャラの特徴があって、類型によるものだ。つまり、模写から始まるため、漫画の絵に共通の特徴が伝わっていく。これが、遺伝子のようになっているのだ。漫画絵の描き方は、江戸時代まで続いていた伝統的な日本絵画の描き方と共通しているのが特徴だ。これが、変わったのが、明治期の西洋文化の流入の影響だ。西洋が日本の絵画を勘違いしたように、日本も、西洋文化を勘違いしてしまう。例えば、絵画において、西洋では、歴史画、宗教画、そして、神話画が、大きなウエイトを占めていた。だが、明治期に、注目された絵画は、印象派の絵画だった。印象派は、当時西洋で人気になっていた絵画ではあったが、実は、主流派ではなかった。あくまでも前衛的な絵画の範疇だったのだ。黒田清輝達は、パリで西洋絵画の基礎を学んでいたので、西洋絵画の基礎が何なのかを良く知っていた。そのため、日本での印象派礼賛には、困ったようだった。印象派がダメということではなく、あくまでも、絵画の１つの表現として印象派が存在し、絵画の基礎ではないということ。黒田清輝達がやろうとしていたことは、西洋絵画の基礎を日本に定着させることだったのだ。ここを勘違いしている日本人は多いかと思う。つまり、日本の美術学校で教わるアカデミックな絵画教育は、一般の人達がイメージしている西洋絵画とは、かなりかけ離れている。これが、実は、日本絵画にも影響を与え、日本画が誕生する。西洋絵画の影響を受けた日本絵画だ。これも、一般には、何のことやらだろう。日本画は、伝統的な日本の絵画ではないのか？と、西洋文化の流入で、日本の伝統的文化は、大きく変化してしまった。小説や、演劇もそう、絵画も、音楽もそう。アカデミックな教育が、大きく変化した。だが、その価値観が、実は、正しいとは言えないのが実情で、絵画で言えば、西洋の神話画や、宗教画は、育たなかった。歴史画すら、描く日本人画家は少ない。神話画や、宗教画が、日本人に馴染みが薄いのは分かるが、西洋絵画において、最上位に評価されるジャンルが、日本で重視されていない。結局、文化は導入したが、日本人の肌に合わない文化は、淘汰されてしまうのだろう。そして、漫画やアニメが人気となる。それが、海外にも波及。これは、ただの偶然ではなく、日本絵画の歴史を考えれば、漫画やアニメの方が、正当な日本の伝統的な流れを汲んだ絵画スタイルと言えるだろう。原種の生命力の強さを、まざまざと見せ付けられている結果となった。原種の遺伝子は強い、、