豊川高校のモイセエフ・ニキータ選手。両親はロシア人ながら日本で生まれ育った高校生は今回のセンバツ大会の公式ガイドブックでも注目選手として1ページにわたって紹介されている8人のうちの一人だ。低反発バットが採用されて始まった今年の大会。飛ばないなぁというより点が入らないなぁという印象が強く周りの観客たちが述べるうんちくもそのように集約されるようだ。
誰が大会第1号を打つのか。本当のスラッガーしかないのだろう。金属バットの威力に浜風の後押しが加わってふらふらとレフトポール際に入るホームランなどはもうないのかもしれない。
そんな中でモイセエフ君は5−1とリードされた場面で走者を一人置いて打席に入る。これまでは3打数無安打2三振だった。しかし彼の打球はライナーでライトポール際に飛んでいく。阿南光のライトは見送ってスタンドに入った。それは間違いない。
だが・・・・
阿南光の右翼手がボールを見送った位置と見上げた方向からすればファウルではないかとボクは思った。1塁塁審の右手がぐるぐる回る中で阿南光の捕手が球審に確認している。しかし当然そんな抗議が高校野球で受け入れられるはずもなく、またボクも特別内野の7段目89番という角度的には確認しづらい席でもうちょっと120から130番台だったらもっとよくわかったかもしれない。だがそんなジャッジに文句をつけるという意味はまったくない。それよりもたとえファウルであったにせよあそこまでライナーで飛ばしたということの方がボクにとっては大きい。そして豊川は5−3と2点差に迫った。
しかしモイセエフ君にとってこの本塁打は実績を積み上げただろうが、結局は5打席で3三振を喫しての1本塁打である。さらに初回の無死1塁から自身の前に落ちるポテンヒットの処理を誤って2塁打にしてしまい、その後の内野ゴロ2本であっさり2点を先制される足掛かりと作ってしまったことも忘れてはならない。
結局この初回から豊川は主導権を握られ2回の阿南光は2死無走者から連続四死球と安打で満塁。その後豊川は投手を交代したが走者一掃の長打を打たれて5−0とされたのだ。
対する阿南光の吉岡君は6回まで1安打2四球の投球で押さえ込んだ。だが、だが疲れの見えた吉岡君は2死満塁からタイムリーを打たれて1失点。5−1・・・
しかし豊川の攻撃のまずさはここにも出た。結局この回に放った安打は3安打で1つの四球を得ている。3つ目のアウトは1点を返したあとの2塁走者の本塁突入アウトだった。
これまで1安打に押さえ込まれていた豊川がこの回だけで3安打を放ったのだ。これで逆転サヨナラというのであれば一か八かもあろうが、まだ5−0から1点を返しただけの段階ではさらにじっくり行くべきだった。しかしその次の回にモイセエフ君の2ランが出て2点差としたのだ。残りは1イニングだったが2点差まで迫った豊川。
だが、投手陣が9回表に崩壊し6失点。これで試合は決してしまった。
新しいバットのせいか得点はあまり入らず接戦が続いた今年のセンバツだが、この試合は勝った阿南光が11得点。負けた豊川も注目選手が本塁打を放った。
大差試合とはなったがある意味では面白い試合だった。
2024年3月19日 第96回選抜高校野球 1回戦(於 阪神甲子園)
阿南光
230 000 009 = 11
000 000 121 = 4
豊川
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