ボクは日本サイドのゴール裏にいた。2層の最前列だ。前半の日本は自軍サイドから攻撃だった。だからボクには日本のDFラインが良く見えた。その逆に日本のチャンスは遠いところで展開される。
これで勝てばパリ五輪出場が決まるアジア最終予選の北朝鮮戦は初戦が引き分けに終わったためこの試合に勝った方が出場権を得るというまさしく決勝戦。
試合開始前のメンバー発表では４バックで熊谷はアンカー起用かのように発表されたが、試合が始まると熊谷をセンターとする３バック。サイドバックのはずだった北川と清水はウイングというポジションを取っている。その日本を相手に北朝鮮は序盤から積極的に攻めてきた。キャプテンマークを巻くFWのソン・ヒャンシムの激しいプレーに日本は翻弄された。しかし落ち着きを取り戻した日本はフリーキックからヘディングで流したシュートの跳ね返りを高橋が押し込んで先制。
しかし前半終了間際に日本は大ピンチを迎える。右サイドをえぐられてのクロスにヒールで流されたシュートはニアに詰めていたGKの山下の裏をかいてフォアに流れる。そのまま転がればゴールだというのはボクのいた観客席からは誰にでもわかった。しかし山下は全力で下がって右手を必死に伸ばして掻き出した。ＶＡＲがあれば間違いなく対象となったプレーだが、この試合にはその制度はない。ゴールラインを割ったかどうかは三苫の１ミリではないが北朝鮮にとっては納得がいかなかったかもしれない。
すぐさまロスタイムが発表されたあと主審に抗議してマイボールスローインをすぐに行わなかったのは理解できるし、そのために遅延行為によるイエローカードが出されたのは少しかわいそうに思った。
後半も北朝鮮はすぐさま主導権を握った。ソン・ヒャンシムがいきなり危険なシュートを放った。前後半ともに日本は試合の入りが悪い。しかし30分を過ぎるとボクの眼の前で右サイドに流れたボールを拾った清水が相手ＤＦを交わして挙げたクロスにフリーで藤野が頭で押し込んだ。
２−０。
これで選手も観客もホッとしたのかもしれない。すぐさまオフサイドにはなったもののフリーで枠内にシュートを打たれ、その後は右サイドに出されたパスにＧＫの山下とＤＦの高橋が詰めるもともに追いつけずキム・ヒヨンにふわりと浮かされたボールはフォアサイドのゴールにコロコロと転がりこんだ。２−１・・・
その後も北朝鮮は攻めまくる。日本は大きくクリアするのが精いっぱいでボールキープもできない。ロスタイム5分を含めて10分近くも苦しい時間が続く。しかしシュートを受けるとＧＫは寝転がり選手交代をして時間を稼ぎなんとかしのぎ切った。
日本はＦＩＦＡランク8位。北朝鮮は9位だ。そのうち1チームしか行けない五輪。微妙な判定もあった。用意された北朝鮮応援団の席は埋まり2階席にも人が溢れた。日本がパリに行けることはうれしい限りだが北朝鮮もいいチームだったと思う。
2024年2月28日 女子サッカーパリ五輪アジア最終予選 第2戦（於 国立競技場）
日本２−１北朝鮮
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