1月1日　西新宿プーク劇場　新作落語お正月寄席

　珍しく雨予想が出ていたが、初日の出にはすっかり晴れて、例年通りの穏やかな元旦。お正月料理を食べて賀状を確認した後、昼前に外出。家人は眼鏡を作るとかで川崎へ。自分はそのまま新宿へ向かう。
　午後1時ごろ新宿駅に到着。駅周辺の商業施設は家電量販店とドラッグストアを除いてほぼ明日からの営業なので、時間つぶしに幼いころ親とお参りしていた西新宿十二社の熊野神社に足を延ばす。子供の頃はしもたや、古い雑居ビルが立ち並んでいた青梅街道周辺も、すっかり開発されてビジネスビルばかりが目立つ。それでも寺社は残るもので、熊野神社も昔通り中央公園の外れに変わらずあり、初詣の人々で境内には長い列が出来ていた。
　一家の健康を祈って西新宿のプークへ。整理券を受け取った後、映画「鬼太郎誕生、ゲゲゲの謎」を鑑賞。上映中に大きく座席が揺れる感覚あり。慌てて両側の手すりをつかんでしのぐ。音を消したスマホがﾌﾞﾌﾞﾌﾞと揺れているので、地震速報ではと危ぶんだが、場内がざわつくことも無く映画は続き、特に誘導もなかった。5時半から落語会が開場するので、急いで外へ出て再びプークへ。家人と合流して地震について聞くと、歩いていたので分からなかったとのこと。エレベータも動いていたし大したことはなかったのか、映画館が13階だったから殊更に強く揺れを感じたのだろうと気持ちを落ち着かせる。
　開演待ち時間、スマホのニュースで石川、能登地震の報を知るも、その時点では詳細は分からず、あの映画館の揺れはこれだったのかと暗い答え合わせ。

　　例年二日から始まる新作落語寄席だが、今年は元旦からでトリは白鳥。場内は元旦から新作落語を聞こうというコアなファンで満席となっていた。今年から始まりはプークらしくお目出度い三番叟を人形浄瑠璃とは一味違ったダイナミックな動きで操演。

●前座　十八「ディズニー行きたい」
　きく麿のお弟子さん。ディズニーランドが大好きなのに、前座の内は、いつ師匠に呼ばれるかわからないので行けないという煩悶から生まれた新作。子供にランドに行きたいと云われたお父さんが、諦めさせようとするが、実は父親自身が大のランドマニアなので、端々からトリビアな知識を披露してしまう。

●美馬「相模のばあちゃんと孫のさっちゃん」
　二ツ目披露が相模大野のグリーンホール（しかも大）！とはいえハコをいっぱいにするために自治体に後援を掛け合ったり、協賛取りに奔走することは今後の芸の肥やしになりそう。二ツ目になって初めてのプークなので、かなり緊張していた様子。最もこの人、いつも緊張しているように見せかけて結構かます。祖母と孫のほっこりしているようでかみあわない会話。これで相模原市市政70周年と「成人の集い」を絡めて仕事を取って来たというからただモノじゃない。

●やま彦「半日小屋」
　髪を伸ばしたら小笑に似ている。弟子入りしてすぐに長野の蕎麦屋に修行に行かされ、帰ってきたら妹弟子のきよ彦に立場を奪われていたと嘆くが、確かにきよ彦の方が仕事できそうだものね･･･。このネタ結構何度も聞いているのだが、他にも新作作ってるんだよね？

●青森「カレーの匂い」
　マクラ無しでいきなり始まった。夕飯がカレーだと予期する特殊能力を持った男（青森）の所謂メタ落語。シブラク界隈でとてつもなく高評価と聞いていたので、何か一皮むけたのかと思って臨んだら、あいかわらずの調子。目線が定まらず話がどう転んでいくのか一切読めず、ハマれば面白いが、ハマらないと少し不安で怖い。彼女が住んでいるマンションが戸塚区原宿という設定にはものすごいリアリティを感じるが、実際のところあの辺はひとり暮らしするには交通の便が悪いですよ。

●枝太郎「浅草の灯」
　暮れの浅草で主任を任されたり、芸も身体の方もえらく貫禄がついてきた。

＜中入り＞

●きく麿「童謡作り」
　ここ数年寄席でよく見るようになった。新作派でこれだけ受け入れられているのだから大したものだと思う。創作の傾向としては駒治と同じくあまり捻ってはいないと思うけれど、こういう噺が寄席では楽しいよね。無職なのに一攫千金を狙うダメな男が「ぞうさん」「やぎさんゆうびん」と、童謡の歌詞を「そのまんま過ぎる、オレにも書ける」とディスるわけだが、二曲ともまどみちおの詞で、誰にも書けるもんじゃないですよ！

●白鳥「パパラギ」
　円丈の「パパラギ」に自らの新作落語への想いを寄せて作られた噺でネタおろし、と云えば何か良い話のようだが･･･。内容については触れないが、コール＆レスポンスとは言え、客を巻き込んで責任をかぶせちゃダメでしょう。新作落語の作り手を「刀鍛冶」、古典落語を自らの解釈で深めていくことを「研ぎ師」に例えるのは、非常に納得がいきました。