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2023年12月27日09:31

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12月22日 日本橋亭芸協定席「二ツ目勉強会 真打に講評してもらう会」


 建て直しと云えば、今年は国立演芸場が長いことさよなら公演をうっていたが、日本橋亭も年内が最後なんだね。東京駅至近でアクセスが便利、上方落語家にも使い勝手が良かった会場だけに自分としては国立よりも残念。ということで最後に二つ目勉強会に足を運んでみた。これが今年の落語聞き納めとなるのかな。

●遊雀「金明竹」
 講評するからにはちゃんと聞かないと・・・ということで真打がトップバッター。手本になるように演じなければならないとぼやきながらの「金明竹」。骨はバラバラ・・・のくだりはカットしての短縮版だったが、本人も久しぶりと云っていたように、確かに遊雀であまり聞いた覚えがない。

●前座 幸路「転失気」
 初めて見る談幸の女性のお弟子さん。真打の後が前座で高座返しまでしてもらって・・・と恐縮していたが、芸風はなかなか自由奔放。物おじしてないなという感じ。師匠も本寸法でいて結構お茶目なところがあるし、良いのではないでしょうか。

●遊かり「締め込み」
 勉強会幹事の昇羊から出演要請があり、「講評の真打はどなたが?」と聞いたらまだ交渉中と云われたらしい。「(師匠の遊雀と)分かっていれば受けなかったのに・・・」。女性落語家も増えて個性百花繚乱の中、若干古臭さすら感じさせる芸風は桃花と近いものを感じるが、暑苦しい女と自称するほどなのは、割と大柄で前のめりだからでしょうね。声も所作も大きく、この日、彼女の後の三人全員声張り気味(信楽すら)だった。

●銀治「お玉牛」
 伸ぴんのころに一度見ているかな。今年昇進したばかりで、今日の顔付けの中では一番若い。落語の方は上方落語で芸協ではよく聞く噺。一応田舎が舞台だけど、江戸ことばなのね。すこし前に蝶の治、そして銀治と続けて伸治門下の若手を見たが、どちらも最初は「どうせワタシなんて・・・」と若干引いた感じで始めるのに、徐々にグイグイくるのが面白い。蝶の治によれば伸治は「うちの一門は宮治にぶらさがっていく」と宣言したらしいが(W、いや、若手頑張っている。

<中入り>

●晴太「位牌屋」
 主人のどケチぶりを見習った小僧が、位牌を受け取りに行った先で、まだ死んでいない主人の息子の位牌をオマケで付けてもらおうとするという、赤西屋どケチ列伝の話だが、初めて聞く噺だった。講評で遊雀も「こんな珍しい噺をよくやった」とほめていたので、芸協でもあまり演じられない噺なのだろう。見た目神経質そうな感じだが、落語になるとかなりパッショネイトに変わるのが良い。

●信楽「不動坊」
 嫉妬は女だけのものじゃない、男だって・・・と振ってから古典落語へ。そもそも信楽自身が世間へのルサンチマンを募らせていそうな気がするが、それだけに嫉妬まみれの三人組、中でも巻き込まれ型の漉返し屋の徳さんが可笑しい。古典も大いに楽しませてもらった。

 客席から見ていた遊雀が、客として来ていた評論家の長井好弘を舞台に呼んで講評。ふたりともおおむね好評価。「芸協の若手は勢いがある」と意見が一致してお開きに。日本橋亭は一旦閉じるが、新ビルにも演芸場は作る予定(しかももうすこし広くなるかも?)と聞いてひと安心。



 今年も自分なりに心に残った高座について少し。
 仕事の都合で夜の会に足を運べなくなったこともあり、短時間でさくっと見られる二ツ目の会ばかりの一年だった。また近年の二ツ目落語家たちの頑張りから目を離せなくなり、続けて次の会・・・という流れでもあった。二ツ目といえば、長らく何者かになりたくとも手をつかねてジリジリしながら過ごす時期だったのだろうが、現代は動画配信、ネットラジオ、SNSなどいろいろ手立てもあるために、アピールしている人とそうでない人の差が激しくなっているようにも思える。とはいえ先が長いのがこの業界、じっくり自分なりに芸を醸成していく人も多いはず・・・と思いたい。

〇きよ彦「追っかけ家族」(1月 池袋演芸場下席)
 今年何度か見たが、この噺が一番面白かった。10月の蝶の治との二人会で師匠の「掛け声指南」を演じたが、そのとき新宿東口の百果園が屋台村になったくだりが入っていて・・・。
〇三三「粗々茶」(4月 深川江戸資料館 「擬古典落語の夕べ 吉笑スペシャル」)
 吉笑作のとりとめのない噺によくここまで付き合った。この会は昇の「ぷるぷる」も良かった。昇進が決まったのになんだが、吉笑本人の落語は、最近面白く感じないなぁ。

〇美馬「魔法の腕時計」(5月 なかの芸能小劇場「噺ノ目線」)
 まだ当時は前座。この噺に限らずこのひとの新作落語は超シンプルな内容なのに、なんでこんなに面白いのか。特にこの噺、心の琴線に触れるというか、すごく上手な絵本の読み聞かせみたいな・・・。

〇ごはんつぶ「DJ寿限無」(6月 池袋演芸場上席)
 円丈の孫弟子の中で、この人の創作へのアプローチには新しさを感じる。ぐんまは師匠と近いスタンスかな。青森はよくわからない。

〇談吉「天災」(6月 連雀亭ワンコイン寄席)
 過去のメモを見ていたら、談吉のこの噺、以前に二回ほど聞いていた。ということは、本人にとっても得意ネタだったのでしょうね。左談次に習った噺だったんだね。

〇信楽「エレベーター」(10月 公推協杯全国若手落語家選手権予選)
 何度も寄席や連雀亭で見ていたのに、毎度ウケない新作をやる人という印象だった。独演会とかコンクールとか、狙った客層に向けてはこんなに出来るひとだったんだね。正直落語というよりコント台本に近いかなとは思うし、本人もそう評価されることに忸怩たる思いがあるようだが、それを云うなら喬太郎の新作落語だって小劇場の一人芝居みたいじゃないだろうか。年明けの公推協杯本選がどうなるのか楽しみだ。
 


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